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2008年3月 3日 (月)

【補助線】考え抜く

◆ちゃんと考えていますよ! ???

「ハウツープロジェクトマネジャー」から、「考えるプロジェクトマネジャー」になろうと訴えた。思ったとおりの反応があった。

言われるまでもなく、「考えている」

本当に考えているのだろうか?たとえば、こんなことをやっている。

顧客からスコープ追加の要求が増えた。ぎりぎりの予算とスケジュールでやっていると思っているので、本当はやりたくない。そこで、プロジェクトマネジャーは担当リーダーにこんな指示をする。

「○○の機能を追加しろと言ってきた。細かい仕様は適当に仮定して、時間と人をどれだけ追加すれば実現できるかを検討して、明日までに教えてほしい」

翌日、リーダーは2週間と3人という答えを持ってきた。

そこで、プロジェクトマネジャーは少し「考え」、顧客に次のように申し出た。

「わたしたちとしては品質を下げることは信用の問題になるのでできません。それを前提にスケジュールとコストとスコープでお客様がもっとも重視するのは何かを決めてほしいのですが」

プロジェクトスポンサーは

「この機能は落とせない。絶対に入れたい。」

と答えた。待ってましたとばかりに、プロジェクトマネジャーは

「では、スケジュールを2週間遅らせ、要員を追加したいので、予算を300万ほど、追加してもらえるなら対応できます」

と答える。

◆思考停止を推進するプロジェクトマネジャー

こういうやりとりを考えていないという。

どこが考えていないのか?まず、「時間と人をどれだけ追加すれば実現できるかを検討」といった時点でリーダーに対して思考停止を指示している。

このパターンは実に多い。プロジェクトマネジャー自身が責任を取りたくないし、考えたくないので、今までのやり方に固執する。そのために、部下に考えさせないようにする。

また、プロジェクトマネジャーは、考えて上司に持っていっても相手にされないこともよくわかっている。

ここで、リーダーから、

「私にお任せください。これこれ、こういう方法で今の今の工数で何とかしますから」

などと言われようものなら、責任問題に発展しかねない。

「う~ん、そうだよね。それはよいアイディアだね。でも、うまくいかない場合には大変なことになりそうだね。予算とスケジュールの問題はなんとかするから、安全な方法でいこうよ」

といった感じで、思考停止を推進する。

こんなことを3年もやっていたら、一人前の「考えない戦士」が誕生する。

◆ロジカルシンキングによるカモフラージュ

実は、このような一連のプロセスの中に、ロジカルシンキングを持ち込むと、あたかも考えているような錯覚に陥るのだ。前提さえ都合よくとれば、都合のよい結論を導き出せるからだ。つまり、考えないように考えているのだ。

考えないというのはどういうことか?「あるべき姿」を考えないのだ。前回の記事で述べた考えることを嫌がることの本質はここにある。あるべき姿を考えていると、「そんな理想を言っていないで、地道に改善を考えろ」とみんなから袋だたきにあう(ただし、これは大ウソで、あるべき姿のないところにカイゼンはない)。

◆考え抜く

さて、本題に入ろう。考えるというのだけでは不十分なようだ。言いなおす。

 考え抜く

考え抜くとは、主要なステークホルダ全員が納得する答え(ソリューション)を出すことである。上のような足して2で割るような答えを出すことではない。全員がそれでよいと思える答えをだすことだ。

考え抜くためにはどうすればよいか?

まず、あるべき姿を明確にすること。現状とあるべき姿の対比で何を考えればよいか(問題)がはっきりする。その問題に対して、制約をおかずに考え、解決方法を探すこと。これが解決方法のあるべき姿になる。現実にできることとあるべき姿のギャップを探し、そのギャップを埋める方法を考える。この思考をギャップがなくなるまでやっていくことこそ、考え抜くということだ。

考え抜いてほしい!

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。