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2008年3月

2008年3月 4日 (火)

【補助線】プロジェクト編集~プロジェクトマネジメントは編集である

編集というと、本や雑誌、新聞の編集のイメージがあるが、「編集工学」の提唱者で松岡正剛氏の編集のイメージは似て非なるものである。松岡正剛氏には膨大な著作があるが、その中で編集について言及した部分をいくつか抜き出してみよう。

もっとも有名な表現は編集とは「情報の新しい関係性の発見」というものだろう。「知の編集工学」での表現。また、「知の編集術」では「コミュニケーションの充実と拡張に関する方法」だと言っている。この本では

1)編集は「文化」と「文脈」をたいせつにする
2)編集はつねに「情報の様子」に目をつける
3)編集は日々の会話のように「相互共振」をする

と、かなり、具体的方法論に踏み込んでいる。

また、「日本数寄」には「眼の編集」という言葉が登場する。

縄文の縦櫛が弥生の横櫛に変わっていったのも、片輪車模様が流行したり小袖が流行したりするのも、よくよく見ればそこには文化的な編集のプロセスというものがあった。それはいわば「眼の編集」というものである。

この眼の編集という概念はえらく深いなあと思うが、いずれにしてもこれらの表現から雑誌や新聞の編集とは違った世界だということはおわかりいただけるだろう。

プロジェクトマネジメントの本質は編集にある。プロジェクトの周囲に渦巻く要素の間に、関係性を発見していく仕事である。

編集でいう情報はプロジェクトではなんだろうか?プロダクト(成果物)だととらえてしまうと、編集だというのは極めて狭義になってしまう。プロダクト以外に、人や組織、また、情報そのものも編集の対象である。これらを要素という。

たとえば、情報を与えることによって人を動かし、組織を動かす。そして、プロジェクトが動き、成果物も動く。これが「相互共振」である。

文化や文脈に相当するのもは、プロジェクトの背景であり、戦略であり、シナリオである。これらを重視しながら、計画を作っていく。計画とは要素間の関係を示すものであり、要素間の関係を明確にしながら、プロジェクトを進めていく。これは或る意味で情報の編集である。この際に重要なのは共振を引き起こすことである。共振を引き起こすことにより、各要素の本質が明確になり、その関係づけを適切に行うことが可能になる。

プロジェクトマネジャーには編集力を持ってもらいたい。

2008年3月 3日 (月)

【補助線】考え抜く

◆ちゃんと考えていますよ! ???

「ハウツープロジェクトマネジャー」から、「考えるプロジェクトマネジャー」になろうと訴えた。思ったとおりの反応があった。

言われるまでもなく、「考えている」

本当に考えているのだろうか?たとえば、こんなことをやっている。

顧客からスコープ追加の要求が増えた。ぎりぎりの予算とスケジュールでやっていると思っているので、本当はやりたくない。そこで、プロジェクトマネジャーは担当リーダーにこんな指示をする。

「○○の機能を追加しろと言ってきた。細かい仕様は適当に仮定して、時間と人をどれだけ追加すれば実現できるかを検討して、明日までに教えてほしい」

翌日、リーダーは2週間と3人という答えを持ってきた。

そこで、プロジェクトマネジャーは少し「考え」、顧客に次のように申し出た。

「わたしたちとしては品質を下げることは信用の問題になるのでできません。それを前提にスケジュールとコストとスコープでお客様がもっとも重視するのは何かを決めてほしいのですが」

プロジェクトスポンサーは

「この機能は落とせない。絶対に入れたい。」

と答えた。待ってましたとばかりに、プロジェクトマネジャーは

「では、スケジュールを2週間遅らせ、要員を追加したいので、予算を300万ほど、追加してもらえるなら対応できます」

と答える。

◆思考停止を推進するプロジェクトマネジャー

こういうやりとりを考えていないという。

どこが考えていないのか?まず、「時間と人をどれだけ追加すれば実現できるかを検討」といった時点でリーダーに対して思考停止を指示している。

このパターンは実に多い。プロジェクトマネジャー自身が責任を取りたくないし、考えたくないので、今までのやり方に固執する。そのために、部下に考えさせないようにする。

また、プロジェクトマネジャーは、考えて上司に持っていっても相手にされないこともよくわかっている。

ここで、リーダーから、

「私にお任せください。これこれ、こういう方法で今の今の工数で何とかしますから」

などと言われようものなら、責任問題に発展しかねない。

「う~ん、そうだよね。それはよいアイディアだね。でも、うまくいかない場合には大変なことになりそうだね。予算とスケジュールの問題はなんとかするから、安全な方法でいこうよ」

といった感じで、思考停止を推進する。

こんなことを3年もやっていたら、一人前の「考えない戦士」が誕生する。

◆ロジカルシンキングによるカモフラージュ

実は、このような一連のプロセスの中に、ロジカルシンキングを持ち込むと、あたかも考えているような錯覚に陥るのだ。前提さえ都合よくとれば、都合のよい結論を導き出せるからだ。つまり、考えないように考えているのだ。

考えないというのはどういうことか?「あるべき姿」を考えないのだ。前回の記事で述べた考えることを嫌がることの本質はここにある。あるべき姿を考えていると、「そんな理想を言っていないで、地道に改善を考えろ」とみんなから袋だたきにあう(ただし、これは大ウソで、あるべき姿のないところにカイゼンはない)。

◆考え抜く

さて、本題に入ろう。考えるというのだけでは不十分なようだ。言いなおす。

 考え抜く

考え抜くとは、主要なステークホルダ全員が納得する答え(ソリューション)を出すことである。上のような足して2で割るような答えを出すことではない。全員がそれでよいと思える答えをだすことだ。

考え抜くためにはどうすればよいか?

まず、あるべき姿を明確にすること。現状とあるべき姿の対比で何を考えればよいか(問題)がはっきりする。その問題に対して、制約をおかずに考え、解決方法を探すこと。これが解決方法のあるべき姿になる。現実にできることとあるべき姿のギャップを探し、そのギャップを埋める方法を考える。この思考をギャップがなくなるまでやっていくことこそ、考え抜くということだ。

考え抜いてほしい!

2008年3月 1日 (土)

PMサプリ113:エゴを抑え、判断能力を発揮する

チームリーダーには自分のエゴを抑える能力が求められる。しかしそれは、判断能力を発揮しないということではない(アン・ドネロン、バブソン大学准教授)

【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、問題解決能力向上、リスク管理力アップ、
・PM力向上
  リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆決断をメンバーにゆだねる
◆決断は権限委譲できない
◆リスクをとるのを嫌がるプロジェクトマネジャー
◆リスク計画を悪用するプロジェクトマネジャー

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。