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2008年2月 8日 (金)

【補助線】「安全」はプロジェクトマネジメントの中でどう扱われているか?

◆ITプロジェクトには安全の問題はないのか?

この2~3年、ずっと気になっているのが、この問題だ。なぜ、気になりだしたかというと、ITプロジェクトを中心に発生しているメンタルヘルスの問題。

ITプロジェクトにかかわっている人に安全というと、建設のプロジェクトとかで工事の安全の問題だという風に矮小化して考える人が多いのだが、この認識は正しくない。そもそも安全の問題とは、労働安全衛生の問題であり、「健康問題」、「労働災害」、「快適職場づくり」など、すべての問題を含む。

Photo_2つまり、この2~3年、問題視する企業が増えているメンタルヘルスの問題は、「安全衛生」のもっとも重要な課題の一つだというのが一般的な認識である。

この「安全」の問題はプロジェクトマネジメントではどう扱えばよいか?

僕はプラント工事などの現場の現場の経験もあるが、仮に、ITプロジェクトのような人の働かせ方を工事現場でしていたら、とんでもない話だとしてすぐに改善勧告が入るだろう。

◆プロジェクトの安全管理パターン

通常、工事系のプロジェクトの現場では、「安全管理体制図」がつくられる。これは2つのパターンがあり、社内の投資工事などでは通常、ラインでプロジェクトを推進していくので、組織体制が反映された安全管理体制になる。この場合は、プロジェクトマネジャーが安全管理責任者になるよりは、そのプロジェクトスポンサーになるラインマネジャーが安全管理責任者になるケースが多い。

これに対して、発電所を作るといったオンサイトのプロジェクトでは、顧客側の安全管理体制があり、そこに組み込まれるような形でプロジェクトの安全管理体制を構築する。プロジェクト作業に伴う安全管理についてはプロジェクトの中で見ているわけだ。安全上の問題が発生すれば、プロジェクトの中で自律的に処理される。

◆PMOにメンタルヘルス活動はできない

ITプロジェクトでは、一見、前者の安全管理が行われているようにも見えるが、実際にはオンサイトのプロジェクトが多く、機能していないケースが増えている。そこで、プロジェクトの問題だからということでPMOにおハチが回ってきている組織が多い。

これはむちゃくちゃな話である。経営組織はコンプライアンスと安全衛生については必ずガバナンスが必要である。つまり、この2つの観点から従業員が正しくない行動をしたときに、それを権限を以て強制的にやめさせることができる必要がある。これができないと経営しているとはいえない。

実際にコンプライアンスでは、これまでガバナンスをあいまいにしてきたため、いろいろな問題が噴出している。米国であれば、株主訴訟で企業がつぶれてもおかしくないような事例がいくつもある。

従業員の安全衛生の問題もコンプライアンスと同じくらい重要な問題である。たとえば、従業員が無理をして労働をしようとした場合には、それを強制的に止める機構がなくてはならない。

これは従業員のためだけではなく、常に最高の品質の商品を提供するためでもある。つまりは、従業員と組織のWin-Winの関係を維持するためでもある。

◆安全衛生管理は誰がすべきか

このように考えると、安全衛生は、組織から正当な権限を委譲された人が管理すべき問題であり、これはプロジェクトの業績に対する責任を持つ人でもある。PMOがそのような立場にあることはレアケースだろう。

SIプロジェクトでいえば、顧客に実施体制を示すが、普通に考えると、これが「安全管理体制」である。

百歩譲って、上位管理者が明確に権限を委譲するわけでもなく、プロジェクトの成果責任をプロジェクトマネジャーに丸投げすることは仕方ないとしても、安全管理に対する責任を丸投げするような上級管理者は即刻、辞表をだすべきだろう。

特にSI業界では、この問題は深刻である。

プロジェクトの常識になりつつある、「リソースを渡さない」、「結果を求める」まではいいとしても、そこに、「メンバーの安全衛生管理の責任を持て」という三重苦になると、多くのプロジェクトマネジャーは音を上げてしまうのではないだろうか?

また、これが「改善しない」温床になっていることも事実だ。

長くなってきたので、プロジェクトが自律的に安全衛生を管理するときには、どのように考えて行うべきかは別の機会に譲る。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。