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2008年1月 7日 (月)

【補助線】仮説を共有する

◆仮説の共有はできていますか?

プロジェクトを進めていくに当たっては仮説(仮定)の存在を無視できないことは常識になってきている。PMBOKでは仮説を前提条件と呼んでいる。

仮説にはいろいろなレベルのものがあるが、たとえば、どんなプロジェクトマネジャーがプロジェクトでも設定しているものに「みんながプロジェクトを成功させたいと思っている」という仮説がある。ところがこの仮説がきちんとプロジェクト活動(プロジェクトチーム、ステークホルダ)の中で共有されているケースはまれである。

そんな馬鹿なと思う人は、次の問について考えてみてほしい。

あなた(プロジェクトマネジャー)はプロジェクトの進め方のすべてに対して行われる組織内ステークホルダのアドバイスはすべてプロジェクトの成功のために行われていると思うか?

もし、思えば、「みんながプロジェクトを成功させたいと思っている」という仮説は共有されていると考えてよいが、思わなければ共有されていないことになる。

この問いに対する答えとして多いのは、「成功させたいと思っているという仮説は共有されているのだが、成功の定義が違うので、ちぐはぐになっている」というものだ。そこで、成功の定義を共有する、プロジェクトの目的を共有するということになる。

◆プロジェクト活動の行動は仮説に基づく

こうやって文章として書いたものを読んでもらうとわかると思うが、実はこれは、問題解決策になっていない。成功の定義が共有されているという話と、「プロジェクトを成功させたいと思っている」という仮説が共有されているという話は全然別の話だ。

成功の定義が何であれ、仮説が共有されていれば、それを前提にしてそのプロジェクトの成功のために自律的な行動をとるということになる。そこで、コラボレーションが生まれる。しかし、そんなことは極めて稀である。

共有されていなければ、ひとつひとつ確認する。確認できればまだいいのだが、上にあげたような仮説だと確認のしようがない。

少し、考えていただきたいと思い、少し複雑な例をあげたので、混乱したかもしれないが、言いたかったことは仮説の共有というのはかくも難しいものだということだ。にもかかわらず、プロジェクトの中で、プロジェクトマネジャーやメンバー、あるいはステークホルダはそれぞれの仮説に基づいて行動している。

たとえば、プロジェクトメンバーは「自分の状況を報告をすれば、自分の活動を他のメンバーが理解し、問題が解消される」という仮説を持って仕事をしているはずだ。もっと作業的なところでいえば、「計画時に構想した手法でやればうまくいく」という仮説を持っているはずだ。

◆仮説は共有できないと混乱の原因になる

ところがこのようなチームで持つべき仮説は、共有できないと意味がない。意味がないばかりか、混乱の元だ。

たとえば、上の報告に関する仮説をメンバーの誰かが持っていないとしよう。蟻の穴から崩壊していくように、この仮説は成り立たなくなる可能性が大だ。手法の仮説が共有できていないとすれば、勝手な手法の検討するメンバーが出てきて、全体が混乱に陥る可能性がある。

情報を共有するのはある意味で難しいことではない。会議体など、比較的形式的なコミュニケーションでほぼできる。しかし、仮説の共有は極めて難しい。

そして、不確実性の大きいプロジェクトでは仮説の共有がプロジェクトマネジメントの生命線になることが多い。そのためには、プロジェクト憲章のようなスタティックなドキュメントだけでは不十分である。「相互理解」という意味での本当のコミュニケーションを実行していくこと、そして、そのためのコミュニケーションマネジメントが不可欠である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。