【補助線】顧客との互恵関係
◆顧客はだれか
顧客との良好な関係を保つことは難しい。といよりも、対立的な関係になることが少なくなり。なぜだろう?
プロジェクトからみたときの顧客と言ってもいろいろなケースがある。典型的なものだけでも以下のようものがある。
まず、SIプロジェクトのように顧客に直接商品を売って対価を得るという関係がある。この場合は、プロジェクトの顧客=エンドユーザとなり、これがある意味でもっともわかりやすい。
多くの消費材商品のように市場があり、エンドユーザはいるが、その顧客へ届く経路に流通がある。この場合、プロジェクトにとっての(ステークホルダ)としての顧客は、顧客の声の代表ということになる。
生産材商品であれば、メーカが直接営業するケースも少なくない。この場合には、デリバリチャネルとしての流通はあるが、プロジェクトとしての実質的な顧客は自社内の営業部門のように、エンドユーザに影響力を持つ部門であることが多い。良いか悪いかはその営業部門の活動内容の問題なのでさてき、これも一種の社内顧客である。
社内の情報システム開発のようなプロジェクトだと、社内の利用部門が顧客になる。文字通り、社内顧客である。
◆エンドユーザとそれ以外という区分
これらを同じように扱うのは難しいかもしれないが、大きく分けてしまえば2つに分けることはできるだろう。エンドユーザとエンドユーザ以外である。
エンドユーザとそれが以外は何が違うかというと、「目先」の利益である。インターネットが普及してきて顧客と提供者の関係についての変化が盛んに言われるようになってきたが、モノにしろ、サービスにしろ、エンドユーザの手に届かないものは買えないという事実は変わらないし、すべてのものが宅急便で運べるわけではない。はやり、流通は強いし、今までの通り、流通までと、その先という区分は根強く残っている。
プロジェクトにとってみると、エンドユーザの満足を実現するのは、QCDとのコンフリクトがありので、苦労を伴うが、困難ではない。プロダクトスコープの問題である。
ところが、エンドユーザ以外を考えると、顧客として満足させることは非常に難しい部分がある。なぜか。
◆カレンシーを見つけるとうまくいく
ここで面白い概念をご紹介しよう。コーエン&ブラッドフォードが「影響力の法則」というフレームワークの中で言っている概念で、カレンシーという概念である。カレンシーとは言葉としては通貨のことだが、通貨というはもの代わりに登場したものだ。つまり、相手からの何かを得たい場合には、対価が必要になる。エンドユーザの場合は、商取引であるので、文字通り、通貨がカレンシーになる。通貨を得るためにニーズに沿う商品を開発するわけだ。
流通であれば、まだ、通貨で行けるかもしれない。要するに仕切りを下げておけば何とかなるかもしれないが、多少、複雑である。ボリュームが出てくるからだ。つまり、100円の利益が上がって、100個売れそうなものと、10個の利益があって1000個売れそうなものはどちらがよいかという話になる。これはやや難しい。
顧客が社内の営業部門となると、カレンシーとして使える資源となると、ぱっと思いつかないだろう。ある営業マンはたくさん売れて自分の給料が上がることに価値を求めるかもしれないし、ある営業マンは顧客が喜ぶことに価値を見出すかもしれない。ある営業マンは営業部長が気にいるものであることに価値を見出すかもしれない。こんなことを考え出すときりがない。わけがわからない。
顧客との関係がうまくいくということは、このカレンシーをうまく見つけることができて、それをうまく提供できるということだ。
◆カレンシーは主観である
ここで重要なポイントは何がカレンシーになるかは価値観の問題であり、主観的な問題であることだ。流通の話で、100円の利益が上がって、100個売れそうなものと、10個の利益があって1000個売れそうなもののどちらを選ぶかはおそらく、組織としての主観(意志)の問題だ。つまり、戦略なり、ビジョンの問題である。営業部門の話になると、プロジェクトとの関係は営業部という組織よりは担当者との関係になり、ゆえに、営業担当者の主観の問題である。
さて、SI。上で分かりやすいといったことに違和感を感じた方もいらっしゃると思うが、結局のところ、同じ問題だ。違和感を感じた人は、組織かプロジェクトチームか個人かという見極めが難しいと思っている人だと思う。
実はこの問題は腹をくくって決めてしまうのがよい。たとえば、プロジェクトだと腹をくくれば、そのプロジェクトの意見を組織内に通していくことそのものがカレンシーになり、ステークホルダマネジメントになるからだ。
相手の組織の状況をみて、中途半端な態度をとるので、スコープ変更が起こるのだ。相手を徹底的に支援して、その見返りに、手戻りの防波堤になってもらう。たとえば、こんな関係を作っていくのだ。これが互恵関係である。
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