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2007年7月27日 (金)

PMサプリ85:不文律と戦う

規則で縛るより「現場の判断」を大切にする(インジョイグループ創始者 ジョン・マクスウェル)

【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、リスク管理能力アップ、アカウンタビリティの向上
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

【成分】

◆コンドミニアムとノードストローム

マクスウェルはリーダーシップ開発の大家で、欧米で年間に2万5千人以上の教育をしているといわれている人だ。「世界一のメンター」といった称号まで持っている。彼の著書を読んでいると本当に人間の本質をよくわかった言葉がたくさん出てくるが、ちょっと異色なのがこの言葉。

彼の著書でこのテーマのエピソードとして出てくるのが、コンドミニアムの話。

ずっと愛用しているコンドミニアムでチェックアウトの段になって鍵を忘れた。とりに戻っていると飛行機の時間に間に合わない。従業員にその旨を話すと、鍵の紛失は25ドルの追加料金になるという。紛失ではなく、コンドミニアムに忘れたのだといっても取り合わない。結局、25ドルの追加料金を払って、それまでに10万ドル以上を使ったコンドミニアムに二度と来ることはなかったという話。

これと対照的な話としてノーを言わない百貨店ノードストロームのサービスの話が書いてある。子供のズボン1本を買って、明日の早朝、旅行に出発するというと、その晩のうちに届けてくれたというのだ。入社時に「現場の判断に任せる」という経営方針を渡されるというノードストロームのこの手の話は枚挙に暇がない。違う話を聞いても驚かない。これが「知覚品質」というものだろう。余談だが、僕は伊勢丹でほとんど同じような経験をしたことがある。伊勢丹も現場の判断に任せているデパートだと思う。

◆不文律という厄介な存在

あなたのプロジェクト環境はコンドミニアムとノードストロームのどちらだろうか?プロジェクトワークの基本は、「現場の判断を大切にする」ことである。プロジェクトというスタイル自体がそのような目的のためにあるといってよいだろう。しかし、一方で、プロジェクトが守らなくてはならない(と思っている)ルールが多くある。

この矛盾の原因は「不文律」にあることが多い。日本では特に「不文律」が多いとよく言われる。不文律とは書いてなくてもルールとして明記されなくても、ルールとして機能するものだ。例えば、調達先の選定をプロジェクト(と資材部門)に一任している組織は多い。しかし、そのような組織においても、不文律として、ラインマネジャーに相談する人は少なくない。不文律を守らないとどうなるのか?失敗したときに徹底的にたたかれる。「任せているとはいえ、なぜ、ひと言、相談しないんだ?最終的に責任を取るのはオレなんだ」とくる。この繰り返しによって、どんどん、不文律は強化されていく。

本来、権限委譲とは、上司の責任で行い、委譲した権限範囲について責任を取るのは上司である。これが権限委譲の意味であるが、妙な公平さを持ち込んで上のような論理を振り回す人が多いのも事実だ。

要するに、マネジャーの器の問題なのだが、この不文律というのが権限委譲の中では極めてやっかいな問題になっていることが多い。

組織に不文律があるためか、どうも、プロジェクトの行動や意思決定というのはルール待ちや指示待ちになることが多い。

◆プロジェクトマネジャーとして不文律と戦うことが期待される

上に述べたように組織はある程度不文律があることを前提にして権限委譲をしている部分がある。権限委譲した範囲であっても、失敗すれば責め立てる。このような不文律の強化を何とかしてやらないと、現場の判断を大切にするといってみても、マルナゲして、気に食わなければ、ひっくり返す。これでは埒が明かない。

どうすればよいのか?ここはプロジェクトマネジャーに期待されるところだ。ある意味で、もっとも期待されるのはこの部分かもしれない。ここでプロジェクトマネジャーがとりうる対応は2つある。一つは、上司のこのような態度を部下にところてん式に押し付けていくという対応。つまり、自分もプロジェクトメンバーに対して、君に任せたといいながら、失敗したら、自分の意見を聞かなかったからだと怒る。もう一つは、組織の不文律からの防波堤になることだ。

◆不文律とどう戦うか?

後者はそんなに簡単な話ではない。上からはそのような態度で来るし、場合によっては、プロジェクトの中に手を突っ込んで、プロジェクトマネジャーの頭越しに不文律を押し込んでくるのような上司もいるだろう。しかし、プロジェクトをうまくやるには、後者のような態度が望まれる。もちろん、上司が反省し、態度を改めてくれればその限りではないのだが、、、

実は、この構図にプロジェクトマネジメントとして唯一対抗する方法がチームビルディングである。組織の文化を変えるような振る舞いを一人でやるのはつらい。しかし、プロジェクトチームが一丸となってそのような振る舞いができれば、徐々に組織が変わってくる可能性がある。プロジェクトマネジャーはこの可能性を求めていくべきではないだろうか?

    (2007年7月26日 PM養成マガジンプロフェッショナルより抜粋)

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。