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2007年7月13日 (金)

PMサプリ83:成果より、成果意識を求める

「単に成果を求めるのではなく、成果意識を高める仕組みを作る」(ピープルファク
ター・コンサルティング代表 高橋俊介)

【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、問題解決能力向上
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

◆人が育つ会社

ヒューマンリソースマネジメントの大家・高橋俊介氏が「人が育つ会社をつくる」で述べているフレーズ。この本は、キャリア創造を基本テーマとしているので、コーチング的な手法がベースになっており、高橋氏の提案する仕組みも

(1)チャレンジングな仕事が日常的に与えられる環境を作る
(2)コーチング的マネジメントスタイルがとられている
(3)健全な成果プレッシャーが与えられる

といったものになっている。また、このような仕組みをチームに埋め込んでいくべくだと述べられている。

◆PMは浸透してきたが、成果意識が下がってきた!?

今回、高橋氏のこの言葉を取り上げたのはきっかけがある。先日、某SI企業のK事業部長から、

プロジェクトマネジメントに全社で取り組みだしてから5年が経ち、自分の事業部でも制度としては定着してきたように思う。失敗や無駄が少なくなったという意味では生産性も上がっていると思うし、メトリクスを見てもこれは証明されている。ただ、エンジニアの成果意識が下がってきたように思う、あくまでも感覚的なものだが、、、

という相談を受けたのだ。K部長さんはどういう意味で「成果意識」という言葉を使っているのだろうと思い、聞いてみた。すると、どうも、成果に対する内発的動機のような意味だとわかった。

◆成果を管理する仕組み

この会社には以下のような仕組みがあるという。

・プロジェクト目標は失敗しないようなものになっている。昔のように、プロマネやメンバーから文句が出るような納期というのがいまはまずない。

・計画書はPMOが中心になって徹底的にレビューする。レビューに合格しないとプロジェクトには執行予算がつかない。決済もできない。計画レビューが3回以上になったものは、「監察」プロジェクトに指定される。

・通常月に1回レビューがある。2ヶ月続いてスケジュール遅れがあると、「監察」プロジェクトになる。

・「監察」プロジェクトは2週間に一度のレビューがある

・バリアンスの許容値を超えると、「入院」プロジェクトになる。「入院」プロジェクトになると、プロジェクトマネジャーは上位管理者の配下に入り、指示を受けながら進めていく。

・進捗はPMツールで毎日入力され、集計され、次の日には結果を見ることができる

あるコンサル会社のコンサルを受けながらこの仕組みを作っていったらしいが、統制としてはかなりよくできたシステムである。

話を聞いているうちに、高橋氏の言葉を思い出した。この会社の仕組みをみていると、高橋さんの3つの仕組みのいずれも逆をやっている。

◆成果意識を高める仕組みがない

つまり、成果を管理する仕組みはばっちりあるのだが、成果意識を高める仕組みというのが全くといってよいくらいない。成果を高める仕組みと、成果意識を高める仕組みというのは、外発的動機付けと、内発的動機づけである。一般に、両者は適度なバランスが保たれているときに動機がもっとも大きくなるといわれている。

中でも難しいのが、高橋氏の提案の3番目のプレッシャーである。適度なプレッシャーは内発的な動機を呼び起こすが、度を超えると外発的な動機にしかならない。それで、高橋氏の話をしたところ、今の問題が腑に落ちたそうだ。

◆成果意識を高める仕組みのポイントは管理と自律のバランス

どうすればよいと思うかと聞かれた。仕事というより友人と食事をしながらという立場だったので、「プロジェクトを形容している言葉を変えてはどうですか」などといい加減なことを行って分かれたが、実はこの問題は難しい。この仕組みを可能にしているのはPMツールである。PMツールが入っていなければ、プロジェクトマネジャーのレベルで、プロジェクトの重要性やメンバーの顔を見ながら柔軟に運用すればよいと思うが、そういうわけにも行かない。PMツールが入っている中で下手にやるとガバナンスそのものを壊してしまう危険性もある。

PMOスタッフの問題がなければ、計画レビューでリスク識別を徹底し、多少、無理をした計画を推奨する。レビューの性格をコーチング的なものに変えるといったことで問題は緩和されると思うが、この手の管理をきちんとしているスタッフのやり方を変えるのは意外と難問である。K部長の話を聞くと、既に、組織全体よりも自分自身の所属する利益が優先されて全体の利益につながらないとか,組織の力と自分の力を混同し,外部に対して威圧的な行動をとるとか,規則の客観的な適用が重視され,人間的な配慮が足りないといった逆機能が起っているように思える。

そのように考えると、一度、制度を潰すしかないのかもしれない。制度の問題だけではなく、プロジェクトマネジメントを行う際には、この内発的動機と外発的動機、言い換えると、成果意識と成果のバランスを取っていくように配慮することの必要性を教えられる話しだ。

    (2007年7月12日 PM養成マガジンプロフェッショナルより抜粋)

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。