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2007年7月

2007年7月 8日 (日)

大河ドラマプロジェクト

7月7日に名古屋工業大学の公開講座「プロジェクトマネジメント:構想から実現へのロードマップ」でNHKのプロデューサの方の講義「プロジェクト大河ドラマ」でプロジェクトマネジメントの原点を再認識するような話を聞くことができた。ちなみに、来年の大河ドラマは「篤姫」だそうだ。

ドラマ制作のプロジェクトでは、

 セット>照明>かつら、メイク、衣装>出演者スケジュール

という優先順位があるそうだ。今まで、なんとなくだが、ドラマは人(出演者)の都合を中心に作られるのだろうというイメージを持っていた。ところが全然違った。

この順位に従うということは、話の流れの通りにシーン撮影を行うわけではない。セットを組んでしまうと、話の流れや回に関係なく、そのシーンで撮れるものをすべてとるという。

役者のメンタリティというのはよくわからないが、こんなやり方でよく演技ができるなと疑問に思い、講座の後の懇親会で聞いたところ、「記録」という役がいるらしい。そして、各シーンで演技の状況だとか、ニュアンスだとかをきちんと記録して、関連シーンを撮る際に役者に伝えるのだという。

さらに、監督(ディレクター)は一人ではなく、1回1監督というわけでもないらしい。複数の監督が存在しており、シーンごとに監督が変わってもかまわないようなシステムになているらしい。恐ろしく合理化されている。過去の血がにじむようなスケジュール短縮&コストダウンの賜物だそうだ。

このように管理はプロジェクトというより、どちらかというとラインのイメージに近い。ところが作業そのものはこの上なく創造的なのだ。マネジメントを人の都合に合わせれば合わせるほど、合理性は小さくなる。なぜ、人の都合に合わせなくてはならないかというと、作業者がプロフェッショナルではないからだ。

なんとなく、テーラーの科学的管理の話を連想させる部分があるのだが、テーラーの話は管理される人間はノンプロフェッショナルである。プロフェッショナルとノンプロフェッショナルの違いは、内発的動機付けができるかどうかだと思う。ドラマようなマネジメントの中で仕事をするには、相当な内発的動機が必要だろう。

役者だけではなく、ディレクターも同じではないかと思える。

このシステムには、このプロフェッショナリズム以外に、もうひとつポイントがある。記録係の存在だ。ここが機能しないとこのシステムは成り立たない。これはプロジェクトでいえばPMOである。この両方が揃って初めて合理的なプロジェクトの運営ができる。

実は、このシステムにはもうひとつのポイントがある。マネジメントのツールである。この世界では、このマネジメントを1枚の紙でやるツールがある。「香盤」と呼ばれるシステムである。これについてはまた、別の機会にご紹介する。

2007年7月 6日 (金)

PMサプリ82:人心掌握こそ、リーダーの最大の仕事

現場で実際の仕事をしてくれる働く人たちの心の掌握、人心の統一が、企業組織のリーダーの最大の仕事だ(一橋大学教授・伊丹敬之)

【効用】
・PM体質改善
  PM体質の全般に対して効果があります
・PM力向上
  PM力向上の全般に対して効果があります
・トラブル緩和
  モチベーション向上

【成分】

◆人心掌握こそ、リーダーの最大の仕事
◆ある組織の調査結果~プロジェクトマネジャーの望む権限
◆メンバーがプロジェクトマネジャーに付きたがらない!?
◆人が動かせないと、結果も出ない
◆メンバーがプロジェクトマネジャーに望むもの

このサプリを服用したい方はこちら

2007年7月 2日 (月)

【補助線】プロジェクトマネジメントの定着化

◆問題を複雑に考えていないか?

仕事柄、多くのPMOとお付き合いをしている。その中で常々感じているのが、プロジェクトマネジメントの導入という問題を複雑に考えすぎているのではないかということだ。

導入した手法や標準が使われないという問題と、マネジメントとして何をすればよいかという問題を混乱していため、どんどん深みにはまっているようなケースをよく見かける。

典型的パターンに

 手法を導入した
   → なかなか実践されない
     → 原因を分析すると確かに一理ある
       → では、その原因を解消する手を打とう

というパターンがある。例えば、

 見積もり標準を作った
   → あまり使われていないようだ
     → 精度がイマイチだというのがプロマネの評判
       → もっと精度の高い方法を取り入れよう、ツールも準備しよう

というような感じ。

Miss
◆確認すべきこと

このパターンは山ほどあるのだが、だいたい、この手の話を聞くと、プロマネに以下の2点を確認することにしている。

・標準を知っているか
・標準の使い方(内容)を知っているか、あるいはマニュアルの存在を知っているか

最初の方はだいたい、60~70%は知っているというケースが多い。ところが、後者の方はせいぜい30%である。最近、ちょっとかかわりのあったある企業などは10%に満たなかった。だから、いくら標準の質を上げたところで、使われないという状況が変わるはずがないのだ。

これはある種の思考の罠みたいなところがある。問題分析の仮定で、デリバブルズ(PMOとしての成果物、標準など)の品質にしか、関心が行っていない。標準の質がよければみんなが使ってくれるという仮定を持って展開している。だから、そのような問題解決思考に入ってしまうのだ。

◆仮定の間違い

これは明らかに仮定が間違っている。いくらよいものを作っても、その存在が知られない限り、その標準は使われることがないという自明の理を前提にしなくてはならない。

そうすると、「使われない」という問題の分析として上のような分析を真っ先に行うだろう。仮に、使い方を知っているにも関わらず使われなかったら、これはデリバブルズの問題である。あるいは、一度、使って二度と使わないというのも同じ。

速やかに改善しなくてはならない。しかし、知らなければ、まず、知らしめるために何をすればよいかを考えなくてはならない。次に、今のものを使わせるために何をしなくてはならないかを考えなくてはならない。当たり前の話である。問題は単純なのだ。

この単純な問題を、「知らない」という単純な事実を無視して、こねくり回して複雑にしている。こんなことが起っているのではないかと思う。ストレートにいえば、単純な問題を複雑にしている。

◆プロジェクトマネジメントの導入は難しくない

こんな言い方をすれば、投げやりに聞こえるかもしれないが、プロジェクトマネジメントの導入が難しいのは、マネジメント手法そのものが難しいからではないし、また、何をすればよいかが難しいからでもない。ほとんどのケースはそれ以前の問題で引っかかっている。「知られていない」という問題だ。この問題をプロジェクトマネジメント手法の問題に転嫁している点に最大の問題がある。

これをやっている限り、どんな手法を入れようと定着しない。これは、チェンジマネジメントの問題の中核である定着化の問題だ。

よいプロセスを作ればみんなが使う。みんなが使えば、よい製品ができる。よい製品ができれば顧客が買ってくれる。今、買ってくれない顧客も製品を改善すれば買ってくれるだろう。

こんなマーケッティングレスな発想から早く抜け出したいものだ。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。