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2007年6月 2日 (土)

【補助線】プロマネ屋

昨日のメルマガの編集後記に技術屋と技術者(エンジニア)の違いを書いた。

技術屋と技術者(エンジニア)の違いは、技術に対するスタンスの違いではなく、経
営に対するスタンスの違いです。

 技術屋は技術に貢献します
 技術者は事業に貢献します
 これはいずれも、最終的には経営に貢献します

技術畑ではない人は、業務という言葉で置き換えてください。開発、企画、マーケテ
ィング、総務、人事など、なんでも結構です。

というフレーズだ。数通、個人的なご意見を戴いたので、ブログで再度、コメントしておく。

メルマガでははっきり書かなかったのだが、この後記で書きたかったのは、技術者のことではなく、プロジェクトマネジャーに対すること。

最近、気になっているのがプロマネ屋というのができつつあるのではないかということだ。上の言い方をすれば、

 プロジェクトマネジャーは事業に貢献します
 プロマネ屋はプロジェクトマネジメントに貢献します

という感じである。ただし、プロマネ屋は経営には貢献しない。ここが問題。

もちろん、全面的に否定しているわけではない。いまだに、プロジェクトマネジメントというのものに興味を示さない人も多く、その人たちと較べるとプロジェクトマネジメントという点からは進化している人たちだ。ただ、一皮、むけて欲しいなと思っており、そういうニュアンスのコメントです。

このブログでは、何度か、「隠すというスタイル」について書いてきた。その中でも書いたが、プロジェクトの情報をプロジェクトスポンサーやその代理人であるPMOにすべて開示すると、プロジェクトの進行に影響が出てくる。干渉されることもある。従って、隠すことは必要だという考えは一定の合理性があるようにも思える。

こういうプロジェクトマネジャーが「プロマネ屋」である。

昨日の編集後記に対して、技術屋では経営に貢献できないのではないかという意見を戴いた方がいる。これは微妙なところがあるが、僕自身は貢献できると思う。企業が持つ技術ポテンシャルを大きくすることは、かりにそれが戦略との整合性がないとしても貢献だと思う。それは技術というものの性格によるものであり、技術というのはお金(事業)や人材と同じくらい普遍的な資産であると思うし、現に、経営戦略と無関係に、企業の資産価値を高めているからだ。

要するに経営というのは、出資者から集めた資金、あるいは、その組織が持っている資源を活用して如何に収益を上げるかという活動であるが、その資源のひとつが技術であり、それゆえに技術屋は資源を増やすという意味で経営に貢献している。

ただし、これは原則的な議論であって、現実の経営ではここに評価期間の議論が絡んでくる。従って、最近の経営のように、顧客価値より、株主価値を重視して考え、四半期ごとに収益を重視するような戦略の中では、技術のようにキャッシュサイクルが長いものは低い評価をされる傾向がある。ただ、これも企業価値という議論においては、さほど、本質的な話しではない。企業価値の評価の中では、株主(ステークホルダ)の評価もされるからである。

さて前置きが長くなったが、問題のプロマネ屋。プロマネ屋は技術屋のように経営に貢献できない。プロマネ屋は、自らのプロジェクトの目標を達成するために全力を尽くす。それはいいのだが、アカウンタビリティを考えないのがプロマネ屋の特徴だ。

こうなってくると、プロマネ屋は百害あって一利なしだ。プロマネ屋というのはスタンスの問題である。だから、技術屋がプロジェクトマネジメントに「はまる」とプロマネ屋になる傾向があるようだ。

プロマネ屋のプロジェクトマネジメントスキルは高いことが多い。そのスキルをプロジェクトマネジャーとして活かすことで、どれだけ経営にとって貴重な存在になるか。プロマネ屋になっている人は、ぜひ、早くこのことに気がついてほしい。

もっと現実的に言えば、プロジェクトで業績を残した人が、ラインマネジャーとして出世できるかどうかはこの点にかかっているといっても過言ではない。まあ、これは別の議論だが。。。

最後に、ひとつ。僕は技術コンサルティングをやっていた時期に、マネジメントチームを作って、何度か、数億~数十億規模のSIプロジェクトの「雇われ」プロマネをやった経験がある。これは純然たるプロマネ屋仕事だ。要するに、自分の任されたプロジェクトが成功すればよいのだ。当然だが、組織の中に入り込み、人脈を使い、結構、えげつないリソースの取り込みとかをするし、ベンダーもその組織の付き合いとは関係なしに決める。当然だが、覚悟が要る。この覚悟ができるのであれば、プロマネ屋で生きていくというのもひとつの選択だとは思う。

当時、ある人に、プロジェクトマネジメントという刀一本で組織に切り込んでいくといわれたことがあるが、母体組織も含めて力で動かすしかないわけで、まあ、しんどい。ちなみに、5年くらいこういう仕事をしていた。プロジェクト予算の10%程度で契約するので、それなりに儲かるが、それ以上続けようとはおもいませんでした。経験談。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。