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2007年6月11日 (月)

【補助線】人だけが成長し、組織が成長しないと、人はジレンマに陥る

ビジネスでは、「最後はひと」とか、「結局はひと」とかとよくいう。

いくら仕組みやルール、環境を作ってみてもそれを活用するのは人なので、人がそれらをうまくできるようにならないと何の意味もないという意味の言葉である。特に、人材育成の重要性を指摘する言葉として言われることが多い。

ところが、プロジェクトマネジメントの世界を見ていると、しばしば、十分な仕組み、ルール、環境を整えない中で、「最後はひと」だと言っているケースがある。

とりあえず、戦う武器(仕組み、環境など)がない。ひとこそ、それを補う存在である。そんなニュアンスで使われている。まるっきり、特攻隊である。

ビジネスにおいてひとが重要であることは間違いないが、ひとに対する過剰な依存は禁物である。マネジメントの放棄に繋がる。組織としての活動はよい仕組みや環境があって、はじめて、人が能力を発揮し、また成長する。そして、その成長がより仕組みや環境をよいものにする。この循環をつくることこそ、マネジメントの責任である。

ここで大切なポイントは

 ・人だけが成長し、組織が成長しないと、人はジレンマに陥る

ことである。このような状況はいたるところにある。つい最近も、知り合いがやっている中堅のSI企業で、この5年くらい一生懸命にプロジェクトマネジメントに取り組んできた部長が、会社をやめるという出来事が起り、社長から相談されたことがあった。

その社長の話はざっと以下のようなものだ。やめた部長(A部長)は、自社の成長のためにはプロジェクトマネジメントの定着が必要だと考え、取り組んできた。自身はいろいろと勉強し、PM手法を導入し、メンバーにもいろいろと教えて、ツールも自分なりに作ってきた。

その会社では、役員と部長がほとんどのプロジェクトのマネジャーを担当している。最近では、A部長に感化されて、一部の部長もプロジェクトマネジメントを行うようになってきたし、役員の一部も興味を持ち出した。ところが、一部の役員はまったく必要性を感じておらず、無関心。

A部長のプロジェクトのメンバーになったら、スケジュール以外にもいくつかの計画書を作り、それを使いながら、やっていく。メンバーも徐々にではあるが、計画してプロジェクトを進めることの重要性がわかってきだした。ところが、何人かの役員がプロマネを務めるプロジェクトに入ると、そんなものに時間を割いている時間があれば、開発作業をしろといわれる。かといって、そのようなプロマネのプロジェクトが必ず失敗するわけでもない。成功しているものも多い。

これでメンバーがジレンマに陥り、やめたり、部長に相談するという状態が続いたが、ついに、部長自身もイヤになったようで、やめていった。どうすればいいだろうか?

という相談だった。典型的な「人だけが成長し、組織が変わらないとジレンマに陥る」というケースだ。

なぜ、変わらないかという部分で、この社長自身のリーダーシップの問題は大きいと思われる。しかし、それ以上に大きいのは、役員や部長といったあたりが、組織が変わらなくても、個人が変われると思っている点だろう。これを変えなくてはならない。社長には変えていくためのリーダーシップが必要だ。

そんなことを思わせる話だった。では、社長はどういうリーダーシップを持てばよいのか?これについては別の記事に書くことにする。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。