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2007年4月 9日 (月)

【補助線】場の空気か、愚直か

蟻の穴から崩れるという言葉がある。

コンサルタントのキャメル・ヤマモトさんの「鷲の人、龍の人、桜の人米中日のビジネス行動原理」という本を読んでいたら、非常に面白い指摘に出会った。

鷲、龍、桜
 https://mat.lekumo.biz/books/2007/04/post_46a2.html

この本そのものの紹介はビジネス書の杜の記事を参考にして欲しいのだが、日本人、米国人、中国人の行動分法を分析し、その文法から、実際の価値観や行動を比較している本。

米国人は「スタンダードを自由に決めて守らせる」という行動文法を有しており、いろいろな行動をしている。日本人はソフトウェアも含めてモノを売り込むが、米国人は基準を売り込む。ヤマモトさんは、401k、SOX法などの法律系、ムーディーズの格付け、マクドナルド、スターバックスなどのマニュアルシステムや、ライフスタイル、はては、MBAまですべてこの類だという。まあ、そういわれると、PMBOKとか、PMPなどまさにこれだろう。

面白いのはここから。日本人が基準を作ると、「官僚的」になって、ものごとにやたらと時間がかかるようになるが、米国人は「誰にでも分かる標準的な基準がたくさんあるおかげで、ものごとが生産的に進む」と指摘している。その典型が、転職。標準化されているので、他の企業にいってもその日から仕事ができるようになる。これは、まさにプロジェクトマネジメントでよく言われていること。

ちなみに、日本人の官僚的という話は、日本に限った話ではなく、組織論では、マックス・ウェーバーが発見した官僚制のメリットに対して、マートンが「逆機能(行き過ぎて、デメリットになること)」という表現でデメリットとして指摘していることだ。ただし、神戸大学の加護野忠男先生によると、日本型組織は特に逆機能が激しいそうだ。

ヤマモトさんは、米国人にこのようなことができる理由を「ナンセンスなルールでも、決めれば守るし、破れば処罰する」からだといっている。さらに、これに対して、日本人は、決めてもそこまでやらないし、そもそも、紙に書いてある基準より、書いてない暗黙の基準を重視しているから、できないと指摘している。

ステレオタイプな分析すぎるとは思うが、的外れではない。

このような指摘をすると、すぐに、多様性の話が出てくる。そして、次に日本人の「誇り」である「トヨタ」の話になる。日本人は、トヨタのように、向上心が強く、ものごとを改善していくDNAを持っている。

しかし、よく考えて欲しいのは、トヨタの文化というか、やっていることは、「ルールを決める、決めたらやる、そして、やってみて合理的でなければ変える」というサイクルになっていることだ。ヤマモトさんが指摘している米国流の次を行っているのだ。

日本の多くの組織は、前半をはしょっている。「そんなことは決めなくてもできる」とか「言われなくても分かる」とか、「自分には自分のやり方がある」とかいう。それは素晴らしいことだと思う。

しかし、素晴らしいアイディアがあってもトヨタのように根付かない理由もここにある。ヤマモトさんは「場の空気を読んで行動するのが得意」といっている。こう言えば聞こえはいいが、悪くいえば、「場当たり的」なのだ。

まず、愚直にルールを守るところから始めないと、プロジェクトマネジメントもこれ以上の成果はでないだろう。とくに、IT系の企業ではこれを痛感する。

現に、米国系企業でプロジェクトマネジメントで大きな成果をあげている組織は徹底的にレビューをしている。例えば、計画レビューを通らなければ、プロジェクトには着手させないというくらい厳しい組織も少なくない。日本人的に言えば、お客さんから急かさせているのに、場の空気が読めない、現場を知らないPMOだということになる。

日本はどちらを選ぶのだろうか?少なくとも、場の空気を重視する人は、トヨタを日本経営の代表だとは思うべきではないだろう。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。