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2006年8月 4日 (金)

【補助線】コミュニケーションはマネジメントの礎

コミュニケーションに関心を持ち、コミュニケーションをトレーニングしようと考える人は多い。自分の失敗を振り返ってみると、そこにコミュニケーションの失敗があるというのがその理由だと思う。

Trable_1 左の図を見てほしい。ある組織で行ったトラブルの分析結果である(クリックすれば大きくなります)。過去のプロジェクトに対して、プロジェクトで発生したトラブルを大きいほうから3つ抽出し、その主要原因を2つまで上げていき、結果をPMBOKの知識領域とプロセスのマトリクスを作り、分析したものだ(原因はほとんど2つ上がった)。

見て戴ければ分かるとおり、コミュニケーションが圧倒的に多い。

理由は、表面上は他のトラブルなのだが、分析するとコミュニケーションの問題もあるというケースが圧倒的に多かったためだ。

「犯罪の影に女あり」と同じくらい、「問題の影にコミュニケーションあり」は確率が高い。

ここでいうコミュニケーションって何かという問題。例えば、「口べたで相手にうまく自分の考えを伝えることができない。それゆえに問題になった」。こんなケースは、そうそうあるものではない。

コミュニケーションというのは車の運転と同じ。下手な人が、下手な人とであったときに初めて問題が生じる。それが顧客とベンダーという立場であったにしろ、丸く収まるのがコミュニケーションである。

昔に較べてコミュニケーションが問題になるというのは確かにスキルが低い人間が増えているということは間違いない。したがって、交通事故の可能性も高くなる。

じゃあ、みんなで車の運転を上手になりましょうという方向にいくかというと、そうは行かない。車の運転なんか個人の資質の問題があって、どんなに練習しても下手な人は下手だ。

では、どうするか?交通ルールを作るのだ。車線、信号、標識などなど。作っても、無視する輩がいるという問題はあるものの、ない状態に較べると、ずいぶん、まし。

でも、交通ルールだけでは解消できないような微妙な状況もある。例えば、山道を下っている。対向車が上ってきた。さて、問題。どちらが道を譲るか。道路交通法では規則はないが、上り優先という規範を作り、警察とか安全協会がそれをドライバーコミュニティで常識化している。

ここでさらに問題。そのときに谷側が崩れ落ちそうとか、あるいは、山側から落石がありそうだったらどうするか?これにしても、実際に警察が配っている教則には

「片側が転落のおそれがある崖になっている道路で、安全な行き違いができないときは、崖の側の車は一時停止して道をゆずりましょう。」

「山道では、路肩がくずれやすくなっていることがあります。このような場合の行き違いでは、路肩に寄り過ぎないよう注意しましょう」

と書いてあるらしい。これも規範なのだが、「上り優先」という規範とはずいぶん質が違うことが分かる。ドライバーの判断力が試される。つまり、ここでスキルが必要になるのだが、逆にいえば、ここまでは規範を決めることによってカバーできるという言い方もできる。

今のプロジェクトコミュニケーションを見ていると、スキルにばかり目が言っているが、規範はせいぜい、会議体だけである。これは交通ルールでいえば、道路交通法だけを決めているレベルだ。山道では上り優先というレベルの規範は決めていないし、さらに、その上のレベルの規範はまったく決めていないケースがほとんどだ。

なぜそんな状態となっているかいうと、規範も含めてコミュニケーションスキルだと考えていて、マネジメントとスキルの区別がついていないからだ。これは、みんなF1ドライバーになって行動を走ろうといっているに等しい。ありえない。

ルール・規範として決めるべきことは決める。そして、その規範を守る風土を作る。その上で、まだ、コミュニケーションの問題が発生するようなら、スキルベースを上げる。

そんなシステマティックな取り組みが必要なのではないかと思う。これがコミュニケーションマネジメントだし、そこまでできて、初めてコミュニケーションがマネジメントの基盤になる。

コミュニケーションが問題だ、重要だといっている人にこの議論を吹っかけると、10人中9人まではそこまでしなくてもという。複雑性、新規性の高いプロジェクトで成功するのは、1人である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。