2006年5月12日 (金)

プロダクトストラテジー

4822244423マイケル・E・マクグラス(菅正雄, 伊藤武志 訳)「プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスがよく取れたプロダクトマネジメントの本。米国のビジネススクールの定番テキスト。

マイクロソフト、IBM、デル、インテル、シスコ、アップル、ゼロックスなどグローバルなハイテク企業は、どうやって競争力のある製品を生み、育てたのかという切り口で、ベストプラクティスとなる戦略パターンを提示している。

製品戦略に留まらず、タイミング、計画立案、コンティンジェンシープラン、マーケティングや資金面での検討事項、などといった製品戦略に付随する様々なプロセスについても言及されているので、非常に実践的な内容になっている。

テキストとして書かれているので、それなりに知識がある人が読むと、説明が冗長であり、まどろっこしい部分があるが、初心者が最初に読み、なおかつ、それなりに深い知識を得るには絶好の本である。

特に、戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスについて適切な知識が得られると思うので、プロダクトマネジャーになる人にお奨めしたい本である。

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2006年5月11日 (木)

信長のイノベーション

482224327309lzzzzzzz 童門冬二「信長―破壊と創造」、日経BP社(2003)

お奨め度:★★★1/2

小泉首相の在任期間5年番組で紹介していたので、読んでみたら、当たり。信長は稀代のビジョナリストだとして、

・物理的な壁

・制度的な壁

・意識的な壁

を破壊したということをエピソードを引きながら紹介し、議論している。議論そのものは、どうかなと思うものも少なくないが、この中で意識的な壁を壊す部分は結構参考になる。

その中心は「一生懸命の思想」なるものだが、確かに、この変革プロセスは卓越したものだなと思う。

歴史読み物としてはあまり面白くないので、ビジネス書として読むこと。

3つの自問

483795666101lzzzzzzz ダニエル・ピンク(大前研一訳)「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」、三笠書房(2006)

お奨め度:★★★★★

ダニエル・ピンクの最新作。3つの「自問」で大変な話題になった本の邦訳。大前研一が翻訳し、自ら、解説を書いている。

3つの自問とは、これからの成功者と脱落者を分ける自問と名づけられ、

1)この仕事は他の国ならもっと安くやれるだろうか

2)この仕事はコンピュータならもっと速くやれるだろうか

3)自分が提供しているものは、豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるだろうか?

の3つである。

実は、ダニエル・ピンクがこのような価値観を主張したのは、この本ではなく、フリーエージェント社会である。

447819044509lzzzzzzz ダニエル・ピンク(池村千秋、玄田有史訳)「フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか」、ダイヤモンド社(2002)

個人的にはこちらの本の方が含蓄があり、面白いと思うが、ハイコンセプトでは、その価値観を具体的な6つのセンスとして表現している分、イメージが分かりやすい。6つのセンスとは

・機能だけでなくデザイン

・論理ではなく共感

・議論よりは物語

・まじめだけでなく遊び心

・個別よりも全体の調和

・ものよりも生きがい

いよいよ、日本人の文化、生き方、価値観を見直す時代がきたのではないだろうか。

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ナレッジワーカーのマネジメント

4270001224 トーマス・ダベンポート(藤堂圭太訳)「ナレッジワーカー」、ランダムハウス講談社(2006)

お奨め度:★★★1/2

トーマス・ダベンポートが書いたナレッジワーカーのマネジメント本。

ナレッジワーカーが高いパフォーマンスを上げるにはどのような環境が必要かについてさまざまな視点から論じている。この分野のグルの一人であるダベンポートだけあって、内容は充実しているし、説得力も十分だ。

特に9章のナレッジワーカーのマネジメントは非常に有益である。

・知識労働をしながらナレッジワーカーを管理する

・知識労働のコミュニティを作る

・ナレッジワーカーをリテンションする

・知識スキルを教え、広める

・知識フレンドリーな文化を醸成する

・官僚主義の排除

ダペンポートは5~6年前に

482011697509lzzzzzzzワーキング・ナレッジ―「知」を活かす経営」、生産性出版(2000)

という本を書いている。ダペンポートの主張は、ドラッカーのいう知識労働と微妙に違うので、もし、知識労働に対するイメージがない人はこちらの本を併せて読んでみてほしい。

2006年5月 4日 (木)

組織内一人親方

4818525111 関島康雄「組織内一人親方のすすめ―プロ人材に自分で育つ方法」、日本経団連出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

関島康雄さんは日立グループで40年仕事をされてこられた方である。その関島さんが、2年前に、日立での経験をベースにして、非常に独自性があり、また、日本の組織に適していると思われるプロフェショナル人材育成論を上梓された。

481852402609lzzzzzzz関島 康雄「Aクラス人材の育成戦略―教育力競争時代をどう乗り越えるか」、日本経団連出版(2004)

これを読んで非常に感銘を受けたので、ぜひ、個人の視点から見たキャリア形成論を読みたいと思っていたが、やっぱり出た。それがこの本。

「一人親方」というプロフェッショナルのメタファはたいへんイメージしやすく、大変、分かりやすい。親方は自力で仕事を進めていかなくてはならないし、一方で経営もしなくてはならない。場合によっては、弟子を食わせ、育てていかなくてはならない。おおよそ、マネジメントのありとあらゆる活動を一人でできないと成り立たない。プロフェッショナル(自律的個人)のイメージそのものである。

うちのクライアントで組織内個人事業主制度という制度を実施している企業がある。50名ほどの小さなソフトウエアビジネスをやる会社であるが、もう10年くらい前に、この制度を作った。制度の発足当時は20名ほどの会社でその後、30名くらい増えたことになるが、いまだに制度の活用者は一桁にとどまっているそうである。

この事実は、この5年くらいみんなが口をそろえて重要だと言っているプロフェッショナル人材育成、プロフェッショナル組織化が如何に難しいかという点を如実に物語っているように思う。なぜ、難しいか。この本を読んでもらえばよく分かる。

プロフェッショナルの議論はややもそればべき論で、読んでいると気持ちよいが、実際にできる組織に属したままでできるはずがないことを、組織文化の議論を抜きにして平気で論じている本が多い。

この本は、そんな本とは一風違っていて、組織内一人親方になるには、どのような行動をすべきかという視点から書いてある。僕はこのプロフェッショナル化のポイントはリーダーシップだと思っているが、リーダーシップ開発についても5章で実践的な行動論として論じられている。

プロ人材を目指す人はぜひ読んでみよう。特に、プロフェッショナル論議にうんざりしている人にはぜひ、お奨め。

また、プロフェッショナル人材を育成しなくてはならない立場にある人は前作の方がお奨めである。

ただし、僕はファーストキャリアが三菱重工業という会社であった。関島さんは日立でキャリアを歩んでいる。僕がこの本をすばらしいと思うのは、この点が決して無関係ではないことだけお断りしておく。

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2006年4月28日 (金)

あなたをダメにする無意識の習慣

447836089801lzzzzzzz マーク・エプラー(ルディー和子訳)「その無意識の習慣が部下とあなたをダメにする」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

すばらしい!

57の失敗に加えて、「失敗を勝利に変える」方法を提案している。

失敗3:リーダーシップの重要要素は権力ではなくて影響力であることに気がつかない(「リーダーシップ」より)

失敗5:聞くことはもっとも説得力のある行為だということに気がつかない(「コミュニケーション」より)

失敗13:モチベーションは心の内部的欲求であり、他人がどうにかできるものではないことを理解しない(「モチベーション」より)

失敗14:社員からの意見を聞かずに、社員の仕事に影響を与える変更を決める(「変化の時代のマネジメント」より)

失敗22:自分を大切にしない(「自己啓発」より)

失敗28:必要なときにリスクを冒さない(「問題解決」より)

失敗32:「ハッスル」が有効な戦略だと理解しない(「顧客サービス」より)

失敗34:管理と自尊心や生産性の関係を理解しない(「結果を出す」より)

失敗39:すべてのマネジャーは成長を目指すリーダーであるべきなのに、それを理解していない(「ゼネラルマネジメント」より)

失敗44:やり甲斐のある目標を立てない(「計画を立てる」より)

失敗51:仕事へのプライドを育成しない(「企業文化」より)

失敗53:真の勝利をもたらす強みは製品を創造することではなく価値を創造するところからくることを理解していない(「基本的なこと」)

最後に、「重要なこと」として重大な失敗を上げている。それについては、本を読んでみてほしい。

思い込みから抜け出そう

490324112201lzzzzzzz マリヨン・ロバートソン「なぜ「思い込み」から抜け出せないのか」、ファーストプレス(2006)

お奨め度:★★★★

日本人のビジネスの特性に言及し、「なぜ、アメリカ式の価値観の組織行動ができないか」についてエッセイ風に書いた本。

・スピードとリズム

・個とチーム(組織)

・コミュニケーションとリーダーシップ

の3つの視点から、それぞれ20程度の分析をしている。たとえば、スピードとリズムであれば

・どこかに所属していないと不安な日本人

・なぜ「セクシー」なチーム作りができないのか?

・大阪人のせっかち気質は国際ビジネスのテンポにあっている

といった感じ。個とチームでは

・内外の区別はあっても公私の区別があいまいな日本人

・テリトリアルで共同作業が苦手な日本企業

・日本の企業には本当に和があるのか

というような興味深いテーマが並んでいる。非常に深い話が気軽に読める。よい本である。

ちなみに、この本を読んでいると、なぜ、日本にはプロジェクトマネジメントが普及しにくいかがよく分かる。そんな読み方もあるだろう。

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現場を動かすマネジャーのノウハウ

475721227501lzzzzzzz デューク・コーポレート・エデュケーション(嶋田水子訳)「現場を動かすマネージャーのための『人を活用する技術』」、アスペクト(2006)

お奨め度:★★★★

MBA教育で有名なデューク・コーポレート・エデュケーションが作った戦略マネジメントの実践書シリーズ。この本は、「人間関係」に注目して、プロジェクトを如何に動かすかというテーマで書かれている。プロジェクトマネジメントは人のマネジメントであるとはよく言われるが、この本を読んでいるとまさにそれを実感できる。

ネットワーク地図としてステークホルダ分析をし、ステーク彫るだの関係マネジメントをしていることによってプロジェクトを進めていくための指南書となっている。章ごとにチェックリストもあり、自分がどれだけ実践できているかを確認しならが読み進めていける。

475721228301lzzzzzzz 併せて読んでほしいのが同じシリーズのこの本。

デューク・コーポレート・エデュケーション(嶋田水子訳)「現場を動かすマネージャーのための『強いチームをつくる技術』」、アスペクト(2006)

「チームの目的意識が低く、結果を達成できない」「チームの仕事量が多くて、部下がこなせない」「各メンバーがバラバラで、チームである意味がない」といったチームパフォーマンスの問題に対して、チーム内の整備、環境の整備などの視点から解決策を与えている。

チームマネジャーの必読書。

もう一冊ある。

475721226701lzzzzzzz デューク・コーポレート・エデュケーション(嶋田水子訳)「現場を動かすマネージャーのための『戦略を実行する技術』」、アスペクト(2006)

たぶん、この本が本丸だと思うが、この本は計画を実行する技術と置き換えてもよいだろう。「トップが考えた戦略に部下が反発して、動いてくれない」「仕事が多すぎて、何から手をつけていいのかわからない」「現場の声がトップに届かず、戦略にも反映されない」といった問題に対する解決策が提言されている。

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物語をビジネスで使う

483792179501lzzzzzzz 平野日出木「「物語力」で人を動かせ!―ビジネスを必ず成功に導く画期的な手法」、三笠書房(2006)

お奨め度:★★★★

物語の重要性というのは、認識されているし、事例という点ではその有効性を示す事例は枚挙に暇がないといってもよいだろう。

ただ、体系的な実践となると、たとえば、松岡正剛氏が京都の文化を物語で後世に伝えていくといった試みをされていたり、神戸大学の金井先生がマネジメントにおける語り部の役割と重要性を整理されているような事例はあるものの、なかなか、一般的なビジネスパーソンが使えるようなレベルのものはなかった。

その意味でこの本は画期的。物語の作り方を体系的に示している。その手順に従えば誰にでも物語が書けるとは言わないが、物語というキーワードだけで独自の発想でやることに較べると格段に品質の異なる物語が作れることは確かだ。

重要性などについて書いている部分はそんなに目新しさはないが、トータルでは画期的な一冊だと思うし、読んでいくうちに、自分もビジネスの中で使えるのではないかという気になる本である。

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2006年4月25日 (火)

風が吹けば桶屋が儲かる...か?

402250084001lzzzzzzz ロバート・グーラ(山形浩生訳)「論理で人をだます法」、朝日新聞社(2006)

お奨め度:★★★1/2

過激なタイトルがつけられているが、交渉術の本だと考えてよい。

日本では、「風が吹けば桶屋が儲かる」という論理があるが、この手の論理を集めた本。読んでいて大変面白い。山形浩生氏による翻訳というのもいい。非常に日本語がウィットに富んでいる。

この本の主張は「論理的な正しさ」と「内容の正しさ」は違うということ。政治家、セールスマン、コンサルタント、宗教家などの腕はこの差で決まるという。確かにそうである。他の商売はよくわからないが、コンサルタントは、論理的な正しさが必須で、ある意味でこの本に書いてあるように論理を悪用しないと成功しない。

目からうろこの一冊。

コミュニケーションマネジメントの本

475690957401lzzzzzzz 鶴野充茂「あたりまえだけどなかなかできない説明のルール」、明日香出版社(2006)

お奨め度:★★★★

かなりディープなコミュニケーションの本。準備で8割が決まるといっているように、コミュニケーションの技術そのものよりは、コミュニケーションマネジメントのノウハウに重点が置かれている。

・説明する前にシナリオを準備しよう

・説明する前に相手の答えを予想しよう

・ひとつのことをさまざまな視点で見よう

・聞かれる以上の情報を用意しておこう

・説明の「種類」をはっきりさせよう

・本当に目の前にいる人は説明すべき人なのかを考えよう

・会う前に電話かメールで概要を伝えよう

といったルールが101並んでいる。プロジェクトマネジャー必見の一冊。

このシリーズ、ブログでも「あたりまえだけどなかなかわからない組織のルール」を取り上げているが、人気シリーズになってきて、内容も充実してきた感がある。この本のようにあまり世の中にない視点でまとめた本をもっと出してほしい。

現場リーダーの技術

479733350201lzzzzzzz 岡島幸男「プロジェクトを成功させる 現場リーダーの「技術」」、ソフトバンククリエイティブ(2006)

お奨め度:★★★★

最近、アジャイル開発を中心に注目されているプロジェクトファシリテーション、見える化の技術の集大成。

アクションかんばん、キャラクターマップ、3Pフレームワーク、議事録ドリブン会議、朝会、KRT、タイムライン

ソフトウエア開発の現場で使われているツールであるが、体系的に整理し、行動モデルの中で位置づけているので、やり方だけではなく、意義がよく分かる。

プロジェクトファシリテーションという考え方は地に足がついていないと成立しない方法であるが、いいとこどりをして、少しずつ、定着させていくガイドブックとしては最適の一冊である。

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2006年4月24日 (月)

知識とスキルを結果につなげる

456964896701lzzzzzzz 御立尚資「使う力~知識とスキルを結果につなげる」、PHPビジネス新書(2006)

お奨め度:★★★★

時勢にフィットした本。エンプロイヤビリティ、目標管理など、さまざまな形で学習を促されているが、その成果はとなると?である。コンサルティングをして感じるのは、確かに知識は増えているし、スキルも向上している。議論はできるし、分析などのワークもできる。しかし、結論したことが実行できない。つまり、使えない。

この本はこの問題を取り扱った本である。著者の御立尚資氏はボストンコンサルティンググループ日本の代表である。実はコンサルティング力というのは、彼のいう「使う力」である。コンサルティングが自分の経験のないことにもある程度対応できるのは、論理思考力だとか、問題発見力だとかいろいろな要素があるが、もっとも重要なのは知識の体系付けを行う能力である。体系化できることは使うことができることに他ならない。

この本にオビにあるように、もう勉強は十分、そろそろ結果を出したいという人は、一読の価値のある一冊である。

と同時に、これから勉強をしようという人も、読めば、勉強の効率がよくなること間違いなしの一冊である。

2006年4月15日 (土)

行動に注目したリーダーシップ

447872026601lzzzzzzz_2 グロービス・マネジメント・インスティテュート「MBAリーダーシップ」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

ついに出たという感じの一冊。

グロービスのMBAシリーズは経営戦略とか、アカウンティングだけではなく、クリティカルシンキングだとか、オペレーション戦略だとか、結構、マニアックなテーマもあるのに、なぜ、今まで、リーダーシップがなかったのか不思議。

内容はよい。リーダーシップ行動(コンピテンシー)に焦点を当てているので、具体的で分かりやすく、実践的である。

まず、序章では、ショートケースを使ってリーダーシップ行動のイメージ作りをしている。ここで使われているケースは

・家電メーカマーケティング室製品開発プロジェクトチームの導入

・ミドルマネジャーの悩み

・F工場技術伝承プロジェクト

の3つで、いずれも「よくある話」である。ケースはこの章に限らず、すべての章で要点でケースによる説明が行われている。

第1章はリーダーシップの行動モデルを網羅的に説明している。一つ例を挙げると、エンパワーメント型のリーダーシップについて

1)目標の共有

2)自由度の実現

3)支援体制の実現

ということで、それぞれの方法をかなり具体的に示している。

さらに2章、3章では、リーダーシップ行動をとるために必要な技術を解説している。2章は、変革リーダーシップ、3章は条件適合リーダーシップという分類でまとめている。

内容自体は結構難しいし、行動説明をしている部分にしても、非常に難しいなあと思われるものがあり、それを実行するためのツールにしてもそんなに簡単に活用できるものではないものが結構多い。

しかし、今までにあるリーダーシップ本と較べると格段に実践的であり、また、コンピテンシーだけでリーダーシップの説明をした本に較べると、理論的な側面も書いてあり、MBAを目指すようなレベルの人にとっては非常に役立つと思う。そんな意味で、決定版かなと思わせる1冊である。

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2006年4月10日 (月)

PMを推進するための必読書

488538708609lzzzzzzz ジョリオン・ハローズ「プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット」、テクノ(2005)

お奨め度:★★★1/2

日本語で読める貴重なプロジェクトマネジメントオフィスの本であるが、事例やツールが豊富に掲載されており、また、CD-ROMでもデータが提供されているので、実用的な書籍である。

スタンスとしては、プロジェクトマネジメントがあまり行われていない企業、あるいは、組織的にプロジェクトマネジメントを行っていない企業において、プロジェクトマネジメントオフィスを設立することによって、プロジェクトマネジメントを普及させていこうというスタンスで書かれている。

このために、まず、PMOの設置の手順を説明し、さらに、プロジェクトマネジメントオフィスのサービスをしていく上で必要な各種のツールを提供している。また、メトリクスや、制度についても、かなり踏み込んで提供されている。

したがって、これからプロジェクトマネジメントオフィスの立ち上げをする人はもちろんだが、プロジェクトマネジメントオフィスのメンバーにとっても一読の価値のある内容になっている。

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2006年4月 1日 (土)

3+2=5世代のテクノロジーマネジメント

450238200001lzzzzzzz 古田健二「第5世代のテクノロジーマネジメント―企業価値を高める市場ニーズと技術シーズの融合」、中央経済社(2006)

お奨め度:★★★★

日本では、MOT(マネジメントオブテクノロジー)は理科系(研究開発部門や、エンジニアリングマネジメント)の人材のスキルだと考えられている節があるが、経営との融合が低い。米国では、MBAコースの中でかなりの時間をとっているため、よい書籍が多い。ところが日本では、少なくとも、組織マネジャーが読むことができて、なおかつ、自身のマネジメント活動の参考になる本はほとんどなかった。3年くらい前から、MOTの本は恐ろしく増えているが、そのような本を書いている著者自身が視点の違いに気がついていないのではないかと思う。つまり、技術という視点からものごとを見ているため、事業視点があまりくっきりと浮かんでこないのだ。

「ほとんど」と書いたのは、そうは言いながらも過去にもよい本があったからで、その中の1冊が、この本の著者でもある古田さんが5年前に書かれた

450235960209lzzzzzzz 古田健二「テクノロジーマネジメントの考え方・すすめ方」、中央経済社(2001)

である。今回の本は、この本の発展版である。

さて、なぜ、第5世代かという話をしておく必要がある。1991年に米国で、「Third Generation R&D」という本が出版されて話題になった。第3世代の研究開発である。第3世代というのは、テーマの発想の方法にある。それまでは「技術シーズ」によるテーマ発想をしていたのに対して、第3世代では、「市場ニーズ」を基にしたテーマをしようというものである。この違いは米国では研究開発に大きなインパクトを与えた。この本は日本でも翻訳出版されている。

4478370745フィリップ・ラッセル、タマーラ・エリクソン、カマル・サード(田中靖夫訳)「第三世代のR&D―研究開発と企業・事業戦略の統合」、ダイヤモンド社(1992)

ただし、日本ではあまり大きな話題にはならなかった。

古田氏によると、第5世代というのは、2+3の5であり、第2世代と第3世代の考え方を統合したものであるとのこと。

実は上に述べたこと、つまり、理科系の人だけではなく、文系の人も役立つ理論というのは第3世代の理論であり、古田さんの前著も基本的には第3世代のテクノロジーマネジメントをベースにして書かれている。

が、この何年か、第2世代と第3世代のバランスの重要性が盛んに言われるようになってきており、そのあたりの流れを受けて、新たな本を書かれたのではないかと想像する。

内容であるが、両世代の理論が網羅的に書かれている。事例にもふんだんに触れており、大変に分かりやすい本である。ただ、価格が高いので、購入にはそれなりに覚悟がいる。だた、読んでみて損はない。特に、製造業の企業の組織マネジャーには、ぜひ、覚悟を決めて読んで頂きたい。

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2006年3月31日 (金)

実践的なリーダーシップ論

483555656909lzzzzzzz 新里聡「実践リーダーシップ「リーダーは君だ!」―リーダーシップ実践のための12ステップ」、文芸社(2003)

お奨め度:★★★★

実践という名前の通り、非常に実践しやすい形でリーダーシップを12のステップで身につけようという提案をしている。偶然見つけたが、かなり、優れもの。

1時間目:リーダーは夢を持て!

2時間目:リーダーシップを発揮するとは?

3時間目:破壊から創造への自己リーダーシップ

4時間目:人の力を引き出し、組織力を高めるリーダーの派だライムとは

5時間目:プラス思考のリーダーシップ

6時間目:自己解放のリーダーシップ

7時間目:生まれてきたことは、スゴイこと!

8時間目:パートナー型リーダーシップへの転換

9時間目:ミッションが人と組織を活かす!

10時間目:実践ミッション経営の極意!

11時間目:リーダーはコミュニケーションのプロフェッショナル

12時間目:実践コミュニケーション

と12ステップが続く。

リーダーシップは「お化け概念」だとよく言われるが、そのお化けを、いろいろな角度から非常にやさしく解説している。お奨めです!

2006年3月29日 (水)

リーダーシップの開発方法

490324110609lzzzzzzz D・クイン・ミルズ(アークコミュニケーションズ監修、スコフィールド・素子訳)「ハーバード流リーダーシップ「入門」 」、ファーストプレス(2006)

お奨め度:★★★★

リーダーシップのライフサイクルという、ある意味で当たり前で、ある意味でコロンブスの卵のようなリーダーシップ論である。

追記にある目次に注目してほしい。第1部のリーダーになるでは、リーダーシップの重要性を説き、リーダーになる方法について議論している。第2部では、リーダーとして成功するということにフォーカスして、職場のリーダーシップやパートナーシップについて議論している。第3部では、キャリアとリーダーの関係、そして、第4部では人生におけるリーダーシップについて議論している。

全体として、キャリア発達(ライフサイクル)の中で、リーダーシップをどのように捉え、どのように扱っていけばよいかの指南書になっている。

以前、キャリア開発とリーダーシップ開発の具体的方法論を解説した本として、HRインスティテュート「リーダーシップのノウハウ・ドゥハウ」を紹介したことがあるが、この本よりもさらに突っ込んで、リーダーシップのライフサイクルに踏み込んでいる。

HRインスティテュートの本のようにツールを提案しているわけではないが、議論に非常に具体性があり、リーダーシップ開発の具体的なイメージを得ることができる。上の記事にも書いたが、リーダーシップは、コミュニケーションスキルやネゴシエーションスキルなどと異なり、ヒューマンスキルとして開発できるものではない。

そのような考え方がフィットする人はこの本は大変貴重な本であろう。

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2006年3月22日 (水)

PM Magazine No.5

479810999109lzzzzzzz 翔泳社「PM Magazine Vol.005」(2006)

ご存知、翔泳社から発行されている日本唯一のPM専門誌 PM Magazineの第5号です。

今回の特集はリーダー行動術。プロジェクトマネジャーにとってはとても気になるテーマですが、ヒューマンソフトマネジメントスキルという観点からかなり広く、捉えられています。

好川はこの雑誌で連載をしてきましたが、第5号の今回で連載を終了することになりました。今回は最後ということで、メルマガ読者を中心にお願いしてきた、PMコンピテンシーのアセスメント結果を見ながら、PMコンピテンシーについて語っています。

あと、PMAJの副会長の佐藤義男さんとのPM育成、組織のPM力強化をテーマにした対談があります。ただ、好川はファシリテータタイプのリーダーなので、対談というよりは、一見したところ、好川がホストのインタビュー記事みたいな感じになっています。まあ、佐藤さんとは比較的考え方が似ていると思うので、ファシリテーションをしているわけではありませんが、、、

ぜひ、お読みください!

2006年3月20日 (月)

パワー交渉術

492511258901lzzzzzzz ジム・トーマス(安達かをり訳)「パワー交渉術―絶対に成功する21のルール」、トランスワールドジャパン(2006)

お奨め度:★★★★

ジム・トーマスは弁護士や実業家であるとともに、世界的に著名なネゴシエータである。そのトーマスの交渉術をまとめた一冊。彼のノウハウのすべてが、

21のルールと、50の金言として整理されている。ルールは「7つの決定的なルール」、「4つの重要だが、当たり前のルール」、「10のちょっとしたコツのルール」の3つのカテゴリに分けられている。7つの決定的なルールとは

 ルール1:タダで物をあげない

 ルール2:高い要求から始める

 ルール3:劇的な最初の譲歩の後には、極端に少ない譲歩をする

 ルール4:早めにそして、マメに粘る

 ルール5:個別に問題を解決してはいけない。最終的には、抱き合わせ案としてのみすべての問題を解決しよう

 ルール6:「もうひと押し」して交渉をまとめる

 ルール7:創造的な譲歩(価値が高く、低コストな)を追求する

の7つである。これに対して、ルール1では、トーマスの金言として

 ・代わりに何かを得ることなく譲歩をするな

 ・相手に「ノー」と拒否するのは避けるべし。「いいですよ、もし」の方がよい

などである。役に立つ一冊。

蛇足だが、この本の冒頭に、彼のお国柄による交渉術の巧拙に関する評論がある。彼によると日本人は世界でも屈指の交渉術を持つ国だそうである。これについては、こちら。

PMstyle 2025年11月~2026年2月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

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