組織内一人親方
関島康雄「組織内一人親方のすすめ―プロ人材に自分で育つ方法」、日本経団連出版(2006)
お奨め度:★★★★1/2
関島康雄さんは日立グループで40年仕事をされてこられた方である。その関島さんが、2年前に、日立での経験をベースにして、非常に独自性があり、また、日本の組織に適していると思われるプロフェショナル人材育成論を上梓された。
関島 康雄「Aクラス人材の育成戦略―教育力競争時代をどう乗り越えるか」、日本経団連出版(2004)
これを読んで非常に感銘を受けたので、ぜひ、個人の視点から見たキャリア形成論を読みたいと思っていたが、やっぱり出た。それがこの本。
「一人親方」というプロフェッショナルのメタファはたいへんイメージしやすく、大変、分かりやすい。親方は自力で仕事を進めていかなくてはならないし、一方で経営もしなくてはならない。場合によっては、弟子を食わせ、育てていかなくてはならない。おおよそ、マネジメントのありとあらゆる活動を一人でできないと成り立たない。プロフェッショナル(自律的個人)のイメージそのものである。
うちのクライアントで組織内個人事業主制度という制度を実施している企業がある。50名ほどの小さなソフトウエアビジネスをやる会社であるが、もう10年くらい前に、この制度を作った。制度の発足当時は20名ほどの会社でその後、30名くらい増えたことになるが、いまだに制度の活用者は一桁にとどまっているそうである。
この事実は、この5年くらいみんなが口をそろえて重要だと言っているプロフェッショナル人材育成、プロフェッショナル組織化が如何に難しいかという点を如実に物語っているように思う。なぜ、難しいか。この本を読んでもらえばよく分かる。
プロフェッショナルの議論はややもそればべき論で、読んでいると気持ちよいが、実際にできる組織に属したままでできるはずがないことを、組織文化の議論を抜きにして平気で論じている本が多い。
この本は、そんな本とは一風違っていて、組織内一人親方になるには、どのような行動をすべきかという視点から書いてある。僕はこのプロフェッショナル化のポイントはリーダーシップだと思っているが、リーダーシップ開発についても5章で実践的な行動論として論じられている。
プロ人材を目指す人はぜひ読んでみよう。特に、プロフェッショナル論議にうんざりしている人にはぜひ、お奨め。
また、プロフェッショナル人材を育成しなくてはならない立場にある人は前作の方がお奨めである。
ただし、僕はファーストキャリアが三菱重工業という会社であった。関島さんは日立でキャリアを歩んでいる。僕がこの本をすばらしいと思うのは、この点が決して無関係ではないことだけお断りしておく。
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目次
第1章 一人親方はおもしろい
第2章 なぜ組織内一人親方をすすめるのか
第3章 会社が一人親方を必要とする理由
第4章 一人親方になるためのキャリア形成
第5章 一人親方になるためのリーダーシップ開発
第6章 一人親方になるための戦略
第7章 一人親方がいきいき働ける環境条件
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