2006年10月19日 (木)

主導権を握る営業

475691006801 西野浩輝「営業のキーワードは「主導権」―営業はパワーゲージで考えるとよくわかる」、クロスメディアパブリッシング(2006)

お奨め度:★★★★

リクルート出身の著者が、リクルート流の営業を、「主導権」という観点からまとめた本。もちろん、リクルートのやり方そのままということではなく、著者の工夫が数多く含まれている。

第3章では、主導権を取れる営業マンのマインドについて述べている。そのマインドとは

(1)会社・商品に他する自信

(2)営業という仕事へのポジティブイメージ

(3)高いセルフイメージ

(4)プロ意識

の4つだ。さらに、4章では、主導権営業を実現するスキルとして

(1)外見力で印象をよくする

(2)主導権を握るコミュニケーション力

(3)イメージを作れるシナリオ力

(4)自己規律力

という4つである。

さらにまとめの5章では、営業をプロセスをアプローチ、ヒヤリング、プレゼンテーション、クロージングの4つのプロセスに分けて、それぞれ、主導権を握るポイントを述べている。

営業について書いた本だが、内容はステークホルダマネジメントを念頭において読むと非常に興味深い。まさに、ステークホルダに対して主導権を持つにはどうすればよいかと読み替えることのできる内容になっている。プロジェクトマネジメントを担当している人にはぜひ読んでみてほしい。

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2006年10月18日 (水)

シナリオプラニングめったくたガイド

なぜか柔軟に対応できる戦略を策定する経営企画スタッフ、ヒット商品を連発するマーケッタ、失敗しないプロジェクトマネジャーなど、不確実性のある分野で、非常にうまく、やっている人たちがいる。この人たちに共通するのが、シナリオプラニングを駆使したプラニングである。

最近、(プロジェクト)コンサルティングの中でシナリオプラニングを紹介する場面が増えてきたので、とりあえず、本を整理してみた。

そういう人材を目指す人のために、シナリオプラニングの本を紹介しよう。

447849025209キース・ヴァン・デル・ハイデン(西村行功、グロービス訳)「シナリオ・プランニング「戦略的思考と意思決定」、ダイヤモンド社(1998)

お奨め度:★★★1/2

まず、最初は日本で最初に紹介されたシナリオプラニングの本。

この本はシェルにおけるシナリオプラニングの活用を詳細に説明した本である。背景編ー基礎編ー実践編ー制度編の4部構成になっており、実践的なのだが、抽象度が高い。目前のニーズがないと読了するのはつらいと思う。ただ、かなり、自分の仕事のやり方を考えないと読めないと思うので、最初に読む本としては、この本がよいかもしれない。

4492530886 ピーター・シュワルツ(垰本一雄、 池田啓宏訳)「シナリオ・プランニングの技法」、登用経済新報社(2000)

お奨め度:★★★★

シナリオプラニングというのが思考法のように捉えている人も多いが、単なる思考法ではないと思う。おそらく、哲学に近い部分が相当ある。未来とはなにか、不確実性とは何かということを中心に相当考えることがある。その意味で、この本はシナリオプラニングの本質を知るのに良い本。タイトルは技法となっているが、決して技法ではなく、方法論をきちんと述べた本である。

447849040609 西村行功「シナリオ・シンキング―不確実な未来への「構え」を創る思考法」、ダイヤモンド社(2003)

お奨め度:★★★★1/2

シナリオプラニングに関する一番のお奨め本はこの本。上に述べたように本質的に複雑で、抽象的な計画方法であるシナリオプラニングについて、実に分かりやすく、事例をふんだんに使って説明されている。

また、ある程度、プロセスに落とし込んでいるので、実践的な本になっている。とりあえず、シナリオを作ってみようという人にはこの本をお奨めしたい。

4492531440 池田和明、今枝昌宏「実践 シナリオ・プランニング―不確実性を利用する戦略」、登用経済新報社(2002)

お奨め度:★★★★

もう一冊、違った意味で実践的な本を紹介しておく。

実際に戦略策定の中で、実際にどのようにシナリオをプラニングを使いたいかを知りたい人にお奨めの一冊。コンサルティングの中で使っていると思われる、基本概念、構築ステップから、戦略への落し込み、実施体制・スケジュールまでをかなり詳細に解説した一冊。また、日本企業を念頭においた事例も掲載されている。この本も役立つだろう。コンサルタントの人にはこれがお奨め。

479810376409 ポール・シューメーカー(鬼澤忍訳)「ウォートン流シナリオプランニング」、翔泳社(2003)

お奨め度:★★★

最後にもう一冊。日本のMBAコースで戦略策定を定型的な手法を使って実施することを教えているコースは少ないと思うが、欧米のMBAコースでは普通に入っている(ちなみに、戦略策定の方法論としてのシナリオプラニングと、戦略実行の方法論としてのプロジェクトマネジメント)。

じゃあ、どんな内容を教えているのかと気になる人にはこの本をお奨めした。ただし、内容的には、上の2冊と較べて、実用性に乏しいが、体系的。知識としてシナリオプラニングを押さえておきたい人には適切な内容の一冊といえるかもしれない。

ということで、どんな目的にシナリオプラニングにアプローチするかによってどの本をお奨めしたいかが決まる。2冊も3冊も読んで何か収穫があるようにも思わないので、とりあえず、自分の目的に適した本を読んでみよう。

2006年10月17日 (火)

議論を見える化する

453231288401 堀 公俊、加藤 彰「ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★

ファシリテーションの本を何冊も読んで、話は分かるのだが、どうも腑に落ちないと思われた方はすくなくないのではなかろうか。この本はこの答えを与えてくれる。

この本では、議論の見える化をテーマにしている。この本で言っている見える化とは、

 議論を如何に図に要約するか

という技術である。この技術を、ファシリテータのあまたの中の動きから、具体的に、ホワイトボードや模造紙に書くときの文字の大きさや書き方、色の使い方、挿絵の使い方など至るまで具体的に説明している。特に第4章は、ファシリテータのあまたの中を解剖するということで、何を考えて何を書くかを時系列で説明しているので、非常に面白いし、有益である。

4章にかぎらず、本の中ではテーマに相応しくふんだんにビジュアルが使われており、たいへんよくイメージがつかめるので、読んだことをそのまま応用できるだろう。また、実際に作例がたくさん掲載されているので、それをじっくりと見ていくのもスキルアップに大いに役立つだろう。

ただし、誰でもがすぐにできるものではない。イメージを掴んだら、ひたすら実践してみることに尽きるだろう。その際、自分のアウトプットを持って、この本を読み直してみるのもよい。この本に書かれている(おそらくベテランファシリテータの)図と自分の図を比較してみることは非常に有効だと思われる。

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2006年10月16日 (月)

プロジェクトマネジメントはサイエンスかアートか

487311299001 スコット・バークン(村上 雅章訳)「アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法」、オライリー・ジャパン(2006)

お奨め度:★★★★★

著者がマイクロソフトで養ったプロジェクトマネジメントの技を披露した本。ソフトウエアプロジェクトの本だと、必ずといってもよいくらい、開発マネジメントのテクニカルな話題に重心が置かれるが、この本は違う。目標のマネジメント、人のマネジメント、組織のマネジメント、コミュニケーションのマネジメント、アイディアのマネジメントなど、本来のプロジェクトマネジメントのイシューを中心にして組み立てられている。具体的な内容は、目次を参考にしてほしいが、開発マネジメントについても、手法ではなく、仕事の進め方としてのポイントが書いてある。

ソフトウエア開発プロジェクトは、ハードウェアのプロジェクトとは違うと主張する人がよくいる。プロジェクトファシリテーションなどが妙にはやっているのもその流れだと思割れる。

しかし、この本を読んでいると、決してそんなことはないと思い知らされるだろう。ソフトウエアという商品の特性は確かにある。

しかし、そこで必要なマネジメントはハードウェアや、ソフトウエア以上にソフト的なサービス開発プロジェクトとなんら変わらない。マイクロソフトという会社のやり方は昔から何かと批判の対象になることが多かった。古くはDOSをめぐるビジネスのスタンス、Windowsに代表されるGUI環境ビジネス、最近ではインターネットへのアプローチなどだ。しかし、結局、最後に勝つのは、MSだった。

その秘訣はマネジメントがビジネスを意識したものであることと無縁ではないだろう。この本は、プロジェクトマネジメントに関心を持つ人に読んでほしいのはもちろんだが、もう少し、広く、マネジメントに関心をもつ人にもぜひ読んでほしい一冊である。ソフトウエアエンジニアリングの知識がない人が読んでも分からないところは少ないだろう。

マーケティングは50%がアートで、50%がサイエンスだといわれる。プロジェクトマネジメントもそういった側面がある。特に、MSが展開しているようなビジネスを強く意識したプロジェクトマネジメントはアートの要素が多い(エンジニアの人は自分たちの領域の方がアートの要素が多いと思っているかもしれないが、それは勘違い)。

その意味で、この本に書いてあることはまさに、プロジェクトマネジメントのアートの部分だ。

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2006年10月13日 (金)

トヨタの口ぐせ

480612533401 OJTソリューションズ「人を育てるトヨタの口ぐせ」、中経出版(2006)

お奨め度:★★★

以前、「最強トヨタの7つの習慣」という本を紹介したことがある。習慣化に当たっては、はやり、言葉が大切である。常に、言う。常に言われる。そんな口ぐせのような言葉を30個あつめて、それぞれに簡単な解説をしている。

解説そのものは簡単なものなので、深く知るには適さないが、何よりも、言葉が書かれているので、その言葉を言い続ければ習慣化が可能になる。これは貴重である。例えば、5回のWhyなどで有名な行動習慣は「真因を探せ」を口ぐせのように言って習慣化されている。

いくつか気にいったものを挙げておく。

「リーダーはやらせる勇気、メンバーややる勇気」

「あなたは誰から給料を貰うの」

「改善は巧遅より即拙」

「自分が楽になることを考えろ」

30個、どれをとっても使いたい言葉が並んでいる。

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2006年10月12日 (木)

PMBOKのITプロジェクトへの適用の具体的方法

488373232001 山本需「PMBOK第3版を活用するITプロジェクトマネジメントへの適用と実践」、ソフトリサーチセンター(2006)4883732320

お奨め度:★★★★

PMBOK第3版をITプロジェクトに適用する方法を体系的に述べた本だが、いろいろ、ある本の中でもっとも具体的に書かれている本だ。

PMBOKのプロジェクトマネジメントプロセスに従って淡々と書かれている中に、著者の知見やノウハウがTips的な形で埋め込まれており、特に初心者が使いやすい内容になっている。

なによりよいのは、テンプレートが豊富であり、それが非常に役立つだろう。

PMBOKをITに適用するというのは何冊か類書がある。非常に興味深いのは、その方法が異なることだ。その中で、もっともオーソドックスなのは、この本と同じ出版社から出版されている佐藤義男さんの書かれた本である。この本はもともとは、日本プロジェクトマネジメント協会(当時は日本プロジェクトマネジメントフォーラム)のSIG活動で原型ができただけあって、非常にオーソドックスにまとまっている。どのようなIT組織にも使えるだろう。その一方で、教科書的という批判もある。

佐藤さんの本に較べると、教科書的なイメージはなく、文字通り、実践的な本である。その分、PMBOKの適用に関して、著者のオリジナルの視点が含まれているので、読む際には佐藤さんの本と比較しながら読んでいかれることをお奨めしたい。

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2006年10月11日 (水)

会社を誰のものにするかの

400431025301 ロナルド・ドーア「誰のための会社にするか」、岩波新書(2006)

お奨め度:★★★★

ライブドアのニッポン放送の買収騒ぎ以来、コーポレートガバナンスの本が目立つが、いずれも、「会社は誰のためのものか」という問題に答えを出そうとしている。

しかし、この本は、それは国の文化や歴史、価値観によって変わるものであり、むしろ、そのような視点でそれを決めていくかが大切であることを広い視点から述べている。

著者のロナルド・ドーア氏はバーバードやMITで教鞭をとった研究者であるが、日本に非常に詳しく、戦後の日本のコーポレートガバナンスの事件を引き合いに出しながら、米国との比較で、日本的なコーポレートガバナンスのシステムの特徴を示している。

最後に著者なりに、そのような視点から考えたときに日本のコーポレートガバナンスシステムのあり方を提案している。

会社が誰のものかという問題以上に、コーポレートガバナンスというのは何かということを明確にしてくれるので、マネジメントに関わるものはぜひ読んでおきたい一冊だ。

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2006年10月10日 (火)

人やチームの問題解決能力を向上させ、問題を解決する方法

476282521201 ブレア・ミラー、ロジャー・ファイアスティン、ジョナサン・ヴィハー(弓野 憲一、西浦 和樹、南 学、宗吉 秀樹訳)「創造的問題解決―なぜ問題が解決できないのか」、北大路書房(2006)

お奨め度:★★★★1/2

問題解決法は定着してきた感があるが、通常の問題解決プロセスでは解決できないような制約条件の厳しく、前例がないような問題に遭遇することは少なくない。

世の中のどこにもないようなサービスや商品や技術を開発するといったものも、もちろん、その類の問題だが、もっと身近なものが多い。

例えば、普通にやれば1ヶ月かかる仕事を2週間でやらなくてはならないとしよう。

このようなタイプの問題では、おそらく、問題解決手法を適用しても、答えは出てこない。通常の問題解決法は、定型的問題解決法だからだ。従って、まったく未知な問題に遭遇したときには意外と無力である。

どこに違いがあるのか?大きくは問題解決の目的の違いかもしれない。前者には答えがあるので、問題解決プロセスを間違えなければ問題は解決できる。後者のような問題では、人やチームに焦点を当てる必要がある。当初の人やチームの問題解決能力では対処ができないわけであるので、それを改善しながら問題解決をしていくことを考える必要があるのだ。

このようなタイプの問題解決方法はCPSと呼ばれる。Creative Problem Solving、創造的問題解決である。

あまり日本ではCPSの本は出版されていないが、やっと良い本が出てきた。この本を読めば、とりあえず、考え方などが分かるだろう。ツールも豊富に紹介されており、後は、紹介されているツールを使って実際にやってみよう。

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2006年10月 6日 (金)

ロングテールの法則

415208761701 クリス アンダーソン(篠森ゆりこ訳)「ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」、早川書房(2006)

お奨め度:★★★★1/2

80:20の法則というのがある。

最近、格差でよく話題になるが、イタリアの経済学者・社会学者、ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Federico Damaso Pareto)が、欧州各国や米国の統計データに基づいて統計的に所得配分の研究を行い、一部の人たちに大部分の所得が配分されていることを発見した。

この発見が後に、いろいろな人たちの手によって、さまざまな自然現象に当てはまることが指摘し、「不良全体の80%は、20%の原因に由来する」「売上の80%は、全商品の20%が作る」「売上の80%は、全顧客の20%によるものである」といったルールが生み出されていった。これらは、80:20の法則と呼ばれる。

ついでに、米国の品質管理のコンサルタントジョセフ・M・ジュラン(Dr. Joseph Moses Juran )は、こうした普遍的現象を品質管理に適用することを提唱し、品質管理の分野では「パレート原則」として有名である。

さて、こののテーマ、ロングテールは、ネットワーク経済の市場においては、80:20が必ずしも成り立たないことを指摘した話題の本である。著者のアンダーソンはWIREDの編集長で、もともと、WIREDに書いた記事が話題を呼び、書籍として出版されたという経緯がある。

この本は次のような事例の紹介で始まる。ジュークボックスに入っている曲1万曲の中で、3ヶ月に最低一回はかけられる曲が何%あるかという話。80:20の法則だと、20%ということになるのだが、なんと、この答えは98%だそうだ。

ここからiPodのダウンロードサービスが同じような傾向を持つことは容易に想像できる。この本では、このような現象を統計学のロングテール分布になぞらえてロングテールと呼び、今、さまざまな分野で、このような現象が起こっていることを実証している。

実際に、自分自身の消費行動を見てもこの傾向は強くなっている。日用雑貨のようなものでも、手に入るもので済ませようという考え方から、楽天を検索すればどこかで手に入る(多少、送料はかかるが)という感覚が強くなってきている。

この本は、このようなロングテール商品を起点にして、今後、ビジネスが如何に変容していくかを論じている。Web2.0などの背景にはこのような思想があり、これからのビジネス環境を理解する上では、必読の1冊だといえる。

最後の章で、ロングテールのビジネスの成功法則が書かれている。

法則1:在庫は外注かデジタル

法則2:顧客に仕事をしてもらう

法則3:流通経路を広げる

法則4:消費形態を増やす

法則5:価格を変動させる

法則6:情報を公開する

法則7:どんな商品も切り捨てない

法則8:市場を観察する

法則9:無料提供を行う

如何だろうか?成功しているネットビジネスプレイヤーでは、もはや、あまり前になっていることが並んでいる。

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2006年10月 5日 (木)

完璧な顧客と出会う

447850268401 ジャン・ストリンガー、ステーシー・ホール(牧野真監訳)「顧客は追いかけるな!―48時間で顧客が集まるシンクロニシティの法則」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

原題は Attracting Perfect Customers。自分にとってベストマッチの「完璧な顧客」を探し、その顧客に最大にコミットメントをすることにより、自分のビジネスを成功させる方法論を具体的に説いた本。

著者は「意味のある偶然の一致」をシンクロニティと呼び、シンクロニティは創り出すことができるとしている。その方法として6つの行動原則を上げている。

原則1:自分の使命に忠実になる

原則2:引き寄せたい顧客の姿を明確にする

原則3:自分のビジネスを高く評価する

原則4:競争ではなく、協力を選択する

原則5:顧客に忠実で役立つ存在になる

原則6:感謝の気持ちを分かち合う

この本では、この6つの原則を実行するための具体的な方法を教えてくれている。知りたい人は、読んでみよう。

日本の企業も遅ればせながら、右肩上がりの経営から脱却し、収益性を重んじる経営スタイルが増えてきた。そのような中で、成功している企業は要するにこういうことを既にやっているのだ。

あなたも、ぜひ!

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2006年10月 4日 (水)

堀紘一流リーダーシップ開発論

456964579801 堀紘一「実践的リーダーシップの鍛え方」、PMP研究所(2006)

お奨め度:★★★

堀紘一さんは尊敬するビジネスパーソンの一人だ。実務家としての顔を持っているためだと思うが、評論家のような大胆な発言をするにも関わらず、有言実行しているように見える。特に彼のリーダーシップ論は注目している。3年近く前に出版された

447836052909リーダーシップの本質―真のリーダーシップとは何か」、ダイヤモンド社(2003)

が、本としてはどうかなと思いながらも、内容には非常に共感できたので、今回の書籍も早速購入して読んでみた。今回の著作は前著よりはよくまとまっている。堀氏率いるドリームインキュベータの考え方を使いながら、ご自身の考えるリーダー論を語られている。

ちなみに、ドリームインキュベータでは、5つの採用条件があるそうで、これがおおむね、堀氏の考えるリーダーの資質だと考えてよいのだと思う。

・地頭がよい

・学習能力がある

・素直かつ謙虚である

・好奇心が旺盛である

・攻撃力がある

共感できる。今回の本でもやはり、リーダーシップの育成についても書かれている。今回の本の中ではここが非常に実践的であり、ぜひ、多くの人に読んでほしい。

一例を挙げると

・人生の長期計画を立てる

・5つの自分

・異質の人と付き合う

などが並んでいる。どれを読んでもなるほどと納得できる内容である。

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2006年10月 3日 (火)

ファシリテーションによる組織変革

449253218801 堀公俊「組織変革ファシリテーター―「ファシリテーション能力」実践講座」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★

ファシリテーションの日本の第一人者堀公俊さんの書かれた、ファシリテーションによる組織変革方法論。

これまで、あまり、フォーカスされていなかった分野にファシリテーションの技術を適用している。大変実践的で、まさに、待望の一冊。

3章構成になっており、まず、第1章では、ファシリテーションの考え方を組織変革にどのように生かしていくかを解説している。

第2章では、組織を変えるために有効はファシリテーションの技術として、コミュニティビルディング、ビジョンメイキング、プロセスチェンジの3つについて、ファシリテーション技術を使ったアプローチを解説している。

第3章では、具体的な組織変革の進め方を説明している。

この本に書かれているような話は、断片的にはどこかで聞いたことがある内容が多いが、体系的に使って初めてインパクトがあることが分かる。その意味で、一度読んでおいて損のない本だ。

なお、堀さんは同じシリーズから

4492531580問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座」(2003)

という本を出されている。ファシリテーションの書籍の中では文句なしのNo1だと思う。関連性が深い内容なので、本書と併せて読まれることをお奨めしたい。

【堀公俊さんの書籍のほかの記事】

支援型リーダーシップを身につける

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2006年10月 2日 (月)

MOTの定番テキスト

453213321101 延岡健太郎「MOT“技術経営”入門」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

日本経済新聞社が展開している Management text シリーズにMOTが登場した。著者は、神戸大学の延岡先生。この2点だけでも買いの一冊だ。

MOTの体系というのは難しい。多くの本はあるが、非常に癖がある本が多く、必要以上に技術戦略にフォーカスしたり、経済効果にフォーカスしたりといったものが多い。事情を鑑みると、やはり、従来のマネジメント論と差別化したいという想いが強いのだと思われる。

しかし、MOTといえども、目的は利益を上げることであり、事業成長をさせることであるので、従来のマネジメント論と変わらない。従って、従来のマネジメント論に、技術的ポイントを満遍なくばら撒いたような本が必要で、戦略経営でそのような本を書けるのは、延岡先生や神戸大学の技術経営の先生だけではないかと思っていた。

その期待に裏切らない一冊である。本書は、MOTへの視座を明確にした上で、戦略、事業構造、組織構造、プラットホーム、組織マネジメント、プロジェクトマネジメント、顧客価値創造、企業間連携など、非常にオーソドックスな流れで、MOT論を展開している。

453213247909 いずれ、「ゼミナール経営学」のようなマネジメントの基本テキスト的存在になっていくことが期待される。

ぜひ、一冊購入し、じっくりと読んでほしい。

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2006年10月 1日 (日)

心地よい格差社会

482224542x01 小林由美「超・格差社会アメリカの真実」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★

この1年くらい、政争の具に使われている「格差問題」。この議論を聞いていて、なんとなく釈然としない部分がある。それは、格差があることが良いことか悪いことか、それとも、そういう次元の議論ではないのかである。

僕自身の考えをはっきりいえば、格差があるところで、すべての人が幸福感を感じることができるのが政治ではないかと思う。そのように考えたときに、格差を是正すると言う言葉で表現しようとしているものが、富の再配分を意味しているのか、格差を前提として平等な社会を作ろうとしているのかすら明確にならないままで、格差という言葉が独り歩きしているような印象が強い。

この本では、超金持ちと、仕事のプロと、貧乏人と、社会的落ちこぼれしかいないといわれる米国社会の実態をデータに基づいて描き出してるととにも、社会に格差が定着していく一連の流れの中で政治のスタンスを分かりやすく分析している。

さらに、それでもなぜ、アメリカという国は心地よいのかという分析と行っている。この章がたいへん、興味を引いた。

この分析のポイントはスピード感である。自民党総裁選でしばしば話題になった再チャレンジを見ているといかにも日本的でうんざりしてくる。それはスピード感がないことだ。例えば、30歳でトップ手段を走っていた人が何らかの挫折をした人が40歳までの10年間頑張り、再び、トップ集団に並ぶところまできた。日本人的にはよく頑張ったということになるだろう。実際に今まであまり見られなかったことだし、再チャレンジということになるのだろう。このようなプロセスを支援するというのは、いわゆる勝ち組が単に優越感を持って負け組みを支援しているだけだ。

再チャレンジが可能な社会というのはこういうことではないと思う。失敗した人が、自身の才覚で成功した人を抜きさる。これが再チャレンジが可能な社会だと思う。例えば、ベンチャー企業を起こして失敗した。経営者の資質に疑いがなければ、負の資産を持たないままで、再び、再起の機会を与えられることが再チャレンジだろう。

これは日本人の国民性からは許しがたい部分がある。まずは負の資産をきれいにするところから始めるべきだと思うとなる。この部分がある限り、米国のようになることは難しいなということを痛感した一冊だった。

ただし、この本には第8章に面白い問題提起がある。米国のモデルがグローバリゼーションに耐えられるかという問題だ。ぜひ、本書を読んで確認してみてほしい。

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超現場主義で商売繁盛

4774507601 上野和夫「人事のプロが書いた商売繁盛学 ”超現場主義”のすすめ」、現代書林(2006)

お奨め度:★★★★

著者の上野氏は西武百貨店人事部で30年のキャリアを積まれた方で、その上野氏が小売業の「儲かるサービス現場」にこだわって書き上げた一冊である。事例などは小売業を事例に書いてあるが、顧客接点のあるビジネスを展開している企業においては、非常に学ぶところの多い本である。

この本では顧客接点で高い付加価値を生み出す人材をたくさん育成し、顧客から「ありがとう」といわれるプロのサービスを提供する企業をサービスカンパニーと定義し、サービスカンパニーを目指すために必要な人材育成、人事制度について提案されている。

第1章ではサービスカンパニーを作るための超現場主義10か条が提案されている。これが非常に興味深い

1)体制作りの目的は顧客価値創造の一点に向けられている

2)そのためにもっとも効果的で効率的な仕事の仕組みをくつくること

3)顧客価値創造に直接関係しない仕事は徹底的にそぎ落とすこと

4)個々人の能力を最大限発揮させるための仕組みをつくりあげること

5)個人には自己責任の原則が確立していること

(あと、5つあります)

第2章では、プロフェッショナルについて論じられている。西武、プロフェッショナルというと常に出てくるのが、伝説のシューフィッター久保田美智子さんであるが、彼女のプロフェッショナル論が社内研修の内容をベースにして紹介されている。今まで雑誌などで何度が読んだが、よく分からなかった部分が良くわかった。

小売業のプロフェッショナル論というのはITなどの専門性の高いプロフェッショナル論とは異なる部分が多いと思っていたが、この本を読んでそうではないことが明確になり、この本の主張そのものが、どんな分野でも通用するものだという認識に至った。

実は、この本を読む2週間くらいまえに、ある大手IT企業の事業部長さんと話をする機会があり、顧客からの要件がうまく聞きだせない、どうすればよいだろうかという相談を受けた。その際に、小難しい話(要件定義の方法論)はそれはそれで必要だが、もっと根本的に、人間同士が話をするのだから、その場でどういう態度を取るかは極めて重要で、この部分にサービス業や小売業からもっとベタなベストプラクティスを引っ張ってきたほうがいいのではないかという持論を展開したところ、露骨にいやな顔をされた。この部長さんにぜひ、お奨めしたい一冊である。

後半は人事制度について議論されている。前半の主張に整合する形の人事制度の提案であり、なるほどと納得できる内容である。

好川の読書法とブログ

このブログの読者の方から時々、「どのようにして本を選んでいるのか」と聞かれる。よく本を読んでいますねとも言われる。

だいたい、週に1~2回、本屋に行く。出張が多いのだが、出張先でもできるだけ同じ本屋にいく。なぜかというと、新しい本だけをチェックするのに同じ本屋が便利だからだ。

そして、だいたい、平均して、1回に4~5冊は買っていると思う。なので、月にすると、20~30冊の本を購入していることになると思う。

基本的に全て目を通す。一冊の本はできるだけ60分で目を通すようにしている。この中から、面白そうなものにはメモを取ったり、ラインマークしたりしながら読み直す。こちらは本の内容や分量に依存するが、他の人に較べると早い方だと思う。これは月に4~5冊といったところだ。

ブログに書く本の選定は、最初の目を通した時点で行う。もう詳しくは読まないものは、だいたい、その時点で記事を書く。もう一度、読み直すことにしたものは、精読の後にブログ記事を書くようにしている。

発売日近くで書いたものはだいたい、精読していない本が多い。時期を置いて出てくるものは精読しているものが多い。

僕は良い本を2種類に分けている。人に読んでほしい本と、自分が役に立つ本だ。このように書くともうお分かりだろう。速読で終わるものは人に勧めるだけの本。精読しなおす本は、自分が何かを得ようとする本だ。

ちなみに点数(★)は、比較的客観的な基準でつけている。文字通り、お奨めレベルだ。

2006年9月30日 (土)

アメーバ経営の精神

453231295701 稲盛和夫「アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

アメーバ経営というのは京セラが考案した、トヨタのカンバンにならぶ日本企業が生んだ独創的なマネジメント手法だと思うのだが、トヨタ方式ほど著名ではない。特に、稲盛会長の知名度を考えると不思議だ。

おそらくその理由は管理会計の手法であって、普段、あまり興味をもたれない部分だからだと思われる。しかし、同じような考え方のボルボ方式と較べてみても、アメーバの方が進んでいる。これから注目される手法かもしれない。

特に、アメーバ経営というのは京都のものの考え方のDNAが入っていると思うので、その意味でも今後の発展を期待している。

この本は、稲盛氏自身が筆を取り、ひとりひとりが主役であるというアメーバ経営の基本になっている考え方を分かりやすく解説している。小集団部門採算、高自由度組織、時間割採算表などが、どのような意味を持って考案されているかをきちんと説明してあり、アメーバ経営の素晴らしさがひしひしと伝わってくる一冊である。

アメーバ経営は、プログラムマネジメントと同じ基本概念を持っている。そのような目で読んで見ると、この本で稲盛氏が述べていることはプログラムマネジメントのポイントでもある。この点でも興味深い一冊である。

なお、アメーバ経営についてテクニカルなことを知りたい向きには、以下の本がお奨めだ。

449253162909 三矢裕「アメーバ経営論―ミニ・プロフィットセンターのメカニズムと導入」、東洋経済新報社(2003)

大学の研究者がキャリア初期に書いた本であるので、多少読みづらいが内容はしっかりとしている。

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なぜ、そのプロジェクトをやめれないのか

439668115101 福田秀人「見切る! 強いリーダーの決断力」、祥伝社(2006)

お奨め度:★★★★

プロジェクトを中断するのは難しいとよく言われる。この本は、中断できないパターンを分類し、どうしてそのようなパターンに陥るかを分析している。パターンのネーミングが非常にユニークで、

〈カレンダーの論理〉
〈面子第一人間〉
〈弱者連合〉
〈コンコルドの論理〉
〈執念至上主義〉
〈完売主義〉
〈最後の10%〉
〈パーキンソンの法則〉
〈成功体験〉
〈仲良しサークル化〉
〈プラス発想〉
〈資金の過小投入〉
〈成長至上主義〉
〈営業第一主義〉
〈計画至上主義〉

などである。すべてのパターンについて事例分析の形式になっているので、自分の状況に置き換えて考えてみることもできる。

例えば、最初の〈カレンダーの論理〉はPR効果の少ないカレンダーの配布をやめられないというパターン。「取引先から経営状況が悪いのではないかと思われ、信用を失う」、「カレンダーを委託してきた業者が気を悪くする」といった「やめられない理由」を並べる。そして、

効果のほどがはっきりしない以上、続けるしかない

という結論に落ち着く。あなたも身に覚えがあるだろう。プロジェクトをやめるといった大きな話ではなく、スコープ削減の議論でこのような論理がまかり通り、不要な機能を膨大に持つ商品が生まれる。こんなパターンだ。

楽しく読める。ぜひ、読んでみてほしい。

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強い会社はボトムで設ける

453231293001 綱島邦夫「社員力革命―人を創る、人を生かす、人に任す」、日経新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

この5年くらいの間に日本企業のイメージはずいぶん変わったのではないかと思う。日本企業の強みは社員の質にあった。その分、マネジメントがおろそかになっていた企業が多い。

この5年間の本格的なバブルの負の資産の解消の際にこれがはっきりあわられたように思う。この本で書かれていること、ベストプラクティスは少なくともバブルの前までは多くの企業にあったように思う。しかし、この5年のリストラクチャリングを乗り越えた企業は少なく、この本で取り上げられている、トヨタ、武田薬品、松下電器などはいずれもマネジメント力をテコに、人材の強みを残しながら、リストラクチャリングに成功した企業である。人を作るトヨタ、人に任す武田、人を生かす松下である。

著者の綱島邦夫氏はマーサーの方だからかもしれないが、分析のフレームワークがラーニングオーガニゼーションになっている。日本には、自らを説明するフレームワークがない。特にこの3社のようにグローバル化に対応できる組織を展開するためのフレームワークがないのは非常に残念だ。ただ、この本の事例から分かるように、実践している企業は多い。

なんにしても、社員、プロジェクトといったボトムが強くないと儲からないというこの本の主張には強く共感する。

良い本である。

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ドラッカーは永遠に不滅です!

ドラッカー先生が他界されてそろそろ1年になろうとしている。すでに生前から神様みたいな存在だったからか、その影響力は変わることはない。やはり、圧倒的にいろいろな会話の中によく出てくる。もちろん、僕もメルマガ等でも引き合いに出すことが多い。

さて、そういうタイミングを見計らったわけでもないと思うが、最近、ドラッカーファンには見逃せない本が2冊出版された。

447830702401 一冊目はこれ

P.F. ドラッカー編著「P.F. ドラッカー経営論」、ダイヤモンド社(2006)

ドラッカーといえば50冊以上の著作(オリジナル)がある。各国で出されている編著などを入れると、500冊を超えるといわれている。日本でも50冊以上ある。

その原点になっているのが、ハーバードビジネスレビューへの投稿だ。1950年に初めて寄稿した「経営者の使命」から最後の寄稿となった2004年の「プロフェッショナル・マネジャーの行動原理」まで34本の論文の投稿がある。この数も半端ではない。

これをすべて採録した待望の本がこの本。ちょっと高いがファンなら絶対に持っておきたい一冊。ちなみに、ハーバードビジネスレビューというと堅い論文誌のようなイメージがあるかもしれないが、ドラッカーの著作に関して言えば、後で本になるものよりは理解しやすい。ハーバードビジネスレビューが「たね」でそこから相当な哲学的考察を加えて本を作っているのではないかと思わすような感じだ。

その意味で、まず、この本で論文を読み、その後、書籍を読むのがよいと思う。

さて、もう一冊は、ドラッカーとは切っても切れない関係にある、上田惇生さんの一冊。その名もドラッカー入門。ご存知の通り、日本語で出版されているドラッカーの本はほとんど、上田惇生さんの翻訳によるもの。日本でもっともドラッカーを知り尽くした人だといえる。

その上田惇生さんは、どきどき、訳者前書きや、あとがきでご自身のドラッカー観を披露されているが、これまであまり、まとまった形では書かれていない。やっと出てきたかという一冊。

447830703201上田惇生「ドラッカー入門―万人のための帝王学を求めて」、ダイヤモンド社(2006)

この本もドラッカーファンにとっては、非常にうれしい一冊だ。もちろん、ドラッカーの理論に含まれる含蓄を易しく上田さん自身の言葉で解説されており、その意味で、ドラッカーの教えを実戦で活用したいと思っている人には見逃せない一冊だ。

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