アメーバ経営の精神
稲盛和夫「アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役」、日本経済新聞社(2006)
お奨め度:★★★★1/2
アメーバ経営というのは京セラが考案した、トヨタのカンバンにならぶ日本企業が生んだ独創的なマネジメント手法だと思うのだが、トヨタ方式ほど著名ではない。特に、稲盛会長の知名度を考えると不思議だ。
おそらくその理由は管理会計の手法であって、普段、あまり興味をもたれない部分だからだと思われる。しかし、同じような考え方のボルボ方式と較べてみても、アメーバの方が進んでいる。これから注目される手法かもしれない。
特に、アメーバ経営というのは京都のものの考え方のDNAが入っていると思うので、その意味でも今後の発展を期待している。
この本は、稲盛氏自身が筆を取り、ひとりひとりが主役であるというアメーバ経営の基本になっている考え方を分かりやすく解説している。小集団部門採算、高自由度組織、時間割採算表などが、どのような意味を持って考案されているかをきちんと説明してあり、アメーバ経営の素晴らしさがひしひしと伝わってくる一冊である。
アメーバ経営は、プログラムマネジメントと同じ基本概念を持っている。そのような目で読んで見ると、この本で稲盛氏が述べていることはプログラムマネジメントのポイントでもある。この点でも興味深い一冊である。
なお、アメーバ経営についてテクニカルなことを知りたい向きには、以下の本がお奨めだ。
三矢裕「アメーバ経営論―ミニ・プロフィットセンターのメカニズムと導入」、東洋経済新報社(2003)
大学の研究者がキャリア初期に書いた本であるので、多少読みづらいが内容はしっかりとしている。
第1章 ひとりひとりの社員が主役(アメーバ経営の誕生
市場に直結した部門別採算制度の確立 ほか)
第2章 経営には哲学が欠かせない(事業として成り立つ単位にまで細分化
アメーバ間の値決め ほか)
第3章 アメーバの組織づくり(小集団に分け、機能を明確に
市場に対応した柔軟な組織 ほか)
第4章 現場が主役の採算管理(全従業員の採算意識を高めるために
「時間当り採算表」から創意工夫が生まれる ほか)
第5章 燃える集団をつくる(自らの意志で採算をつくる
アメーバ経営を支える経営哲学 ほか)
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