なぜ、そのプロジェクトをやめれないのか
福田秀人「見切る! 強いリーダーの決断力」、祥伝社(2006)
お奨め度:★★★★
プロジェクトを中断するのは難しいとよく言われる。この本は、中断できないパターンを分類し、どうしてそのようなパターンに陥るかを分析している。パターンのネーミングが非常にユニークで、
〈カレンダーの論理〉
〈面子第一人間〉
〈弱者連合〉
〈コンコルドの論理〉
〈執念至上主義〉
〈完売主義〉
〈最後の10%〉
〈パーキンソンの法則〉
〈成功体験〉
〈仲良しサークル化〉
〈プラス発想〉
〈資金の過小投入〉
〈成長至上主義〉
〈営業第一主義〉
〈計画至上主義〉
などである。すべてのパターンについて事例分析の形式になっているので、自分の状況に置き換えて考えてみることもできる。
例えば、最初の〈カレンダーの論理〉はPR効果の少ないカレンダーの配布をやめられないというパターン。「取引先から経営状況が悪いのではないかと思われ、信用を失う」、「カレンダーを委託してきた業者が気を悪くする」といった「やめられない理由」を並べる。そして、
効果のほどがはっきりしない以上、続けるしかない
という結論に落ち着く。あなたも身に覚えがあるだろう。プロジェクトをやめるといった大きな話ではなく、スコープ削減の議論でこのような論理がまかり通り、不要な機能を膨大に持つ商品が生まれる。こんなパターンだ。
楽しく読める。ぜひ、読んでみてほしい。
1 ノーと言わない、事なかれ主義リーダーたち(見切りの大敵―「コンコルドの論理」
「カレンダーの論理」に絡めとられたリーダー
「面子第一人間」が上に立てない理由
「パーキンソンの法則」を地で行くリーダー ほか)
2 ノーを許さない、必勝主義リーダーたち(「成功体験」の信奉者たち
見切りの対極―「執念至上主義」
「成長至上主義」の恐い死角
「営業第一主義」と見切り促進システム ほか)
エピローグ
付則「見切る!」―会社を潰さないために
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