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2012年9月18日 (火)

【イノベーションを生み出すマネジメント】第5話 マネジャーはエバンジェリストであれ!

Innovative◆イノベーションは失敗して当たり前

前回、プログラムマネジメントの話をしたが、プログラムマネジメントが有効な理由は不確実性にある。

イノベーションのマネジメントを考えるときに、まず、考えるべきことは、失敗はリスクではないということだ。リスクというのは成功を前提にしたときに、どの程度の確実で失敗する確率があるかを示すものだ。ところが、イノベーションは失敗するのが当たり前である。

失敗するのが当たり前という言い方は、誤解を招く可能性があるが、言いたいことは、失敗することを前提として考える必要があるということだ。企業の活動の中で、そのような活動はない。研究開発費が税的にも別枠になっていることからも分かる。


◆オペレーションとイノベーション

この点について、元ホンダで、今は中央大学で研究を行われている小林三郎先生が面白い表現をされているので紹介しておく。小林先生は、オペレーションとイノベーションを分けるべきだと言われている。オペレーションは、一般的な意味である定常業務ではなく、車でいえば、フルモデルチェンジやマイナーチェンジ、それに伴う技術開発、生産ラインの改善などのプロジェクトを意味している。研究開発オペレーションというイメージであるが、オペレーションは、ホンダでは、

・業務の中の比率:95%
・期間:1~4年
・成功率:95~98%
・手法:論理・分析

という特徴があるという。成功率が95%というのはちょっと考えると高い目標であるようにも思えるが、中経に併せて、事業展開をしていくには、確かにオペレーションによる製品開発というのはこのくらいの確立でうまく行かないと困るし、そのためには、論理的に仕事を進められるように開発業務の形式化し、改善していくことが不可欠だろう。確かに自動車や電機製品は、薬などと違ってそういうレベルにあるのだろう。

これに対して、イノベーションは

・業務の中の比率:2~5%
・期間:10~16年
・成功率:10%以下
・手法:熱意・想い

だという。つまり、失敗はもっとも可能性の高い帰結であってリスクではない。どうなる変わらないという不確実性のレベルなのだ。


◆オペレーションとイノベーションを分ける

イノベーションがうまく行かない理由の一つは、オペレーションとイノベーションを同列に扱っていることにある。単純に考えてみてほしい。成功する可能性が10%ですと言われると、製品開発だとしても許容しがたいだろう。たとえば、成功率予測10%のプロジェクトで、ROIを議論することはナンセンスであり、認められないで終わりだ。

また、これを前提とすると、プロジェクトの存続の判断についても、違いが出てくる。オペレーションのプロジェクトであれば、うまく行かなくても、「諦めるな、粘れ」ということになる。いわゆるプロジェクトXの世界である。

ところが、イノベーションではそうはならない。前回述べたように、イノベーションの最終目的を如何に、短期間で、低いコストで実現するかがマネジメントのポイントである。そのためには、筋の悪いプロジェクトに、不必要にリソースを投入しない、見切りが重要になる。見切りができないとイノベーションは成功しないといってもよい。

むしろ、いかに早く見切るかが、成功の秘訣になる。このためには、「顧客に聞く」ことの重要性が言われるようになっている。この問題については、別の機会に述べる。

もう一つ重要なことは、イノベーションは絶対的な価値を求める、すなわち、しばらく他社が追い付けないような新しいものを生み出すことが目的であるが、一つの問題にこだわりすぎると、結果として他社とのギャップが小さくなってしまう可能性がある。つねに、他社との圧倒的なギャップを作るためにも、見切り、新しいアプローチを求めていくことが重要なのだ。


◆マネジャーはエバンジェリストであれ

さて、冒頭に触れたリスクと不確実性の話に戻る。失敗がリスクの場合には、リスクマネジメントなどの手法もあり、ある程度、ロジカルに仕事を進めていくことができる。ところが、不確実性になると、そうはいかない。重要なことは想いを持つことである。小林先生の指摘の通りだ。

想いによって進めていくためには、マネジャーは自分が想いを持つだけでは不十分である。自分がメンバーの想いの代弁者となり、プロジェクトを売り込み、経営層に興味を持たせ続けることが何よりも大切である。その意味で、マネジャーは自分たちが生み出そうとするイノベーションのエバンジェリストでなくてはならない。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。