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2012年9月18日 (火)

【補助線】概念的に考える

Concept2◆問題解決における例

見積もりが甘かった。このアクティビティを担当する人がいない。

プロジェクトではこんな問題がよく起こる。この問題をどのように解決していくか。上位組織に要求してもすぐに対応して貰うのは難しい。スケジュール遅れは必須だ。

こんな時によくやるのが、問題を見る抽象化レベルをワンランク上げることだ。この問題は比較的簡単で、抽象化レベルを上げると、リソースが足らないということになる。すると、問題解決の方法はリソースを増やすことである。リソースには、人、モノ(ツール)、金、時間があり、いずれかを増やすという解決策が考えられる。このレベルで、たとえば、人を増やすことができなければ、金を増やそうと考えられる。その答えを具体(計画)に適用し、可能性を考える。外注することができないか、派遣のエンジニアを確保できないかなどの可能性を検討する。そして、可能であれば、その方向で問題解決をする。

できなければ、もう一度、リソースのレベルの問題解決に戻り、たとえば、時間を増やすことにして、具体に戻す。時間を増やす方法として、現在のフェーズのマイルストーンを延ばして次のフェーズで吸収することはできないか、顧客を説得することはできないかなどの可能性を検討する。

通常、人が足らなければ外注する、時間を金で買うといった問題解決方法は、こういうメカニズムで行われている。つまり、具体的な問題が出てきたときに、直接的に解決が難しい場合には、問題の抽象度を上げて問題解決の方向性を検討し、それを具体的な策に落として、検討していく。

このような問題解決をうまくする際に求められるのが、概念化能力(コンセプチュアルスキル)である。


◆意思決定における例

もう一つ例にを挙げてみよう。ITでよくある問題で、顧客が仕様追加を要求してきた。そんなに難しい課題ではないが、予算がぎりぎりで、対応すると目標原価を切ってしまう。このような状況の中で、仕様追加への対応を決定しなくてはならない。

ここでも同じようにこの決定を抽象化してみる。たとえば、これは、顧客の要求にこたえるかどうかの問題であると考える。もう一段、抽象度を上げると、顧客価値を増やすかどうかという問題である。ここまでくれば、結論ははっきりしてくる。顧客価値が増えるのであれば、顧客満足を獲得するために対応する。顧客価値が増えないのであれば、対応しない。

この意思決定を具体的な話に落とす。つまり、仕様追加による顧客価値がどのように変化するかを調査し、顧客価値が増えれば引き受けるという意志決定をする。

このように意思決定をうまくする際にも、概念化能力が求められる。


◆計画する

もう一つ例を挙げる。プロジェクトでは必須のスケジュールである。今では、WBSを作って詳細化していき、計画を作るのが一般的である。これを、仮に、作業ベースですべきことを洗い出し、スケジュールを作ったとすればどうなるだろうか?おそらく、スケジュールはできないだろう。

WBSは概念的なものであり、WBSをブレークダウンしてスケジュールを作る能力は概念的思考能力である。WBSを作ってというのは普通にやっているようだが、実は概念的思考能力の違いで、実行しやすいスケジュールになったり、実行しにくいスケジュールになったりする。概念的思考能力があれば、実行スケジュールの調整の容易なWBSプロジェクトスケジュールができるし、なければ、実行スケジュールの融通の効かない、がちがちのプロジェクトスケジュールになることが多い。

つまり、計画において、概念と具体を行ったり来たりしながら、計画を調整しながらプロジェクトを進めていく。


◆プロジェクトの規模と求められるスキル

以上のように、プロジェクトでは、特にプロジェクトマネジャーは、具体と概念を行ったり来たりしながら、計画を作ったり、意思決定をしたり、問題解決をしたりする。

これが最も求められるのが、大規模プロジェクトである。以前、こんな記事を書いた。

【戦略ノート262】統合マネジメントに不可欠なコンセプチュアルスキル
https://mat.lekumo.biz/ppf/2011/08/note262.html

ロバート・カッツがマネジャーのスキルに対して、マネジメントのレベルが上がってくるにつれて、中心的なスキルが変わってくるという説を示している。

監督者 テクニカルスキル
管理者 ヒューマンスキル
経営者 コンセプチュアルスキル

という変化である。これと同じように、プロジェクトにおいても、プロジェクトの規模が大きくなると、プロジェクトリーダーには

小規模 テクニカルスキル
中規模 ヒューマンスキル
大規模 コンセプチュアルスキル

という風に必要なスキルが変わってくる。将来的に大規模なプロジェクトを管理できるようなプロジェクトリーダーになりたいと思っている人は、コンセプチュアルスキルを強化しておくことをお奨めしたい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。