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2012年6月 1日 (金)

【10周年】特別インタビュー「プロジェクトの経験から学ぶ」(第3回)~リフレクションの効果

10周年特別インタビューの第3回です。

Circle第1回は、イントロダクションとして、リフレクションとは何かをお話し戴きました。第2回は、もう少し、踏み込んでリフレクションがこの対談の一番の関心事でもあるプロジェクトマネジメントをどう変えるのかについてお聞きしました。今回は、この問題について、具体的な事例を紹介しながら、リフレクションの効果を具体的にお聞きしたと思います。

なお、インタビュー中に出てくる8月のワークショップというのは、こちらになります。

【PM養成マガジン10周年記念セミナー】
第4回 プロジェクトの経験から学ぶ力をつける
~グループプロセスに焦点をあてたリフレクション
http://www.pmstyle.biz/smn/pm_magazine10_4.htm


好川写真(好川)

リフレクションがプロジェクトマネジメントに与える影響について、もう少し、具体的は話を聞かせてください。

一つ、問題事例を紹介します。あるプロジェクトプロジェクトリーダーのAさんは、社内の生産性標準に従ってプロジェクトを計画しましたが、メンバーはそれだけの生産性を出せずに、プロジェクトのスケジュールは遅れてきました。Aさんは社内標準の生産性すらクリアできないようなメンバーのスキルに問題があると考え、プロジェクトスポンサーにメンバーの変更を要求しました。が、あいにくAさんの欲しい人は別のプロジェクトでいっぱいで、要員を追加してもらうことで落ち着きました。ところが、状況はよくなりませんでした。

このような状況で、リフレクションを行うと、どのように状況が変わることが期待できますか?

(嶋田)Simada

リフレクションは、グループプロセスに焦点をあててふりかえることです。すなわち、コミュニケーションの様子、意思決定のされかた、目標の共有度、このグループに特有の規範、そして、メンバー個々の感情などに焦点をあてて、今の状況を捉えなおすことです。

いま、Aさんがリーダーをしているプロジェクトには、「スキルに問題のいるメンバー」が集まっていて、期待した生産性を実現できないでいるという“問題”が生じています。
Aさんは、この問題に焦点をあてて、メンバーを交代させたり、追加させるという解決をはかりました。残念ながら、この行動はプロジェクトの問題を解決することにつながらなかったようです。

Aさんがリフレクションをおこなうとしたら、焦点を問題ではなく、メンバー間の関係性や、自分自身を含めた一人ひとりの気持ちにあててみます。「私はメンバーとどのように向き合ってきただろう?」、「私はメンバーにこのプロジェクトの目的を、どれだけの思いをこめて伝えてきただろう?」、「私はメンバー一人ひとりに期待していることを、どれだけ真剣に伝えることができただろうか?」

Aさんがリフレクションのなかで、違和感や不足感を感じたならば、違和感を感じた対象について、あらためて働きかけることを薦めたいと思います。たとえば、もう一度プロジェクトの目的を、熱意をこめて語ってみるかもしれません。あるいは、みんなが互いに情報共有をすすめていくための雰囲気づくりを整えていくかもしれません。

1のスキルしかないメンバーを集めて、生産性をあげていくためには、1+1+1を3以上に高めていく環境づくりが必要です。そのためには、メンバー一人ひとりがこのプロジェクトの目的や制約条件を正しく認識し、全体を俯瞰する視野をもって、与えられた仕事を丁寧にこなしていく“チーム”になっていることが求められます。

問題に焦点をあてるだけでなく、グループプロセスに焦点をあててふりかえることで、メンバーの総合力を高めていくことが期待できるのです。8月のワークショップでは、グループプロセスに焦点を当てることの効果を実感して戴けると思います。


(好川)好川写真

プロジェクトリーダーに限らず、上に立つものは、何か問題が起こったときに、その原因を下に求めるのが常ですが、リフレクションはその視座を変えてくれるわけですね。


(嶋田)Simada

はい、自分自身に焦点をあててみることが大切です。
相手の行動を変えさせることは難しいですが、自分自身の言動はすぐに変えることができます。行動を変えた結果、自分と相手の関係性にどんな影響があったのかをみます。いい結果が得られたならば、それを継続させ、足りなければさらに行動を変化させてみる...。こんなトライアルを繰り返していくことで、プロジェクト内の関係性をオープンで信頼性の高いものに変えていくことができそうです。

「私は正しく、彼らは間違っている」という根拠のない思いこみは、問題の本質を見えなくし、本来もっと生産的に行動できるはずのメンバーの思考や行動にフタをしてしまいます。

まず、リーダーが自分自身の行動を見直してみることが大切です。「私はどのように伝えたか?」「相手はどのように受け取ったか?」。グループプロセスに焦点をあてたリフレクションによって、問題を生じさせた環境そのものを見直すことができるのです。


(好川)好川写真

なるほど、まさに内省ですね。プロジェクトで問題が起こったときに、他人の責任にするのは簡単ですが、他人の責任にしても問題は片付かず、迷走することが多いので、リフレクションで自分自身に焦点を当てるというのは問題解決として効果がありそうですね。8月のワークショップでそのコツを覚えて、実践して戴くといいですね。

さて、もう少し、リフレクションの効果を掘り下げるためにもう一つ問題事例をご紹介したいと思います。プロジェクトマネジメントの問題の一つに、進捗の計測が計画通りに行われないという問題があります。Bさんがプロジェクトリーダーを務めるプロジェクトでは、毎日、その日の作業進捗をMS Projectに入力するようなルールを作っていました。何人かのメンバーは1ヶ月に数日程度、その日の作業が忙しかったときに、入力しないことがありますが、数日中には辻褄を合せているようです。1人分だけでもデータが入っていないと、全体の進捗が把握できませんので、進捗の把握が遅れ気味になります。その中で、メンバーのBさんは終電まで残業して作業に追われているという理由で、ちゃんと入力しようとしません。Bさんは何度かCさんに注意したり、朝一で前日分を入力することを提案したりしましたが、改善される様子はありません。そこで、Bさんは、ルールを破っていることを重視しました。ほかにもルールがあり、なし崩し的にルールを破られると、プロジェクトが回らなくなると思ったからです。そして、具体的な方策として、進捗入力があらゆる作業に優先するというルールを作り、朝一でチェックをして前日の進捗入力が終わっていないと当日の作業に入らせないというルールを作りました。しかし、現実には、前日、ほぼ徹夜で資料を作って、朝一で顧客と打ち合わせに行くようなスケジュールも多く、この新ルールはメンバーの不評を買いました。嶋田さんがBさんの上司ならどのようにアドバイスしますか?


(嶋田)Simada

Bさんはいま、何を問題視しているのでしょう?もちろん、ルールは守られなければなりません。しかし、Bさんはルールを守らせることで、プロジェクト内の規律をつくろうとする傾向が強いように感じられます。

グループ内で互いにオープンな関わり方ができないとき、ルールに頼る規範が生じやすいと言われています。いまCさんがルールを守ろうとしないようですが、BさんはCさんとどのように向き合っているのでしょう?

リフレクションは、関係性や気持ちに焦点をあててふりかえります。私がBさんの上司なら、「ルールが守られているとき、どんな気持ちがするのか?」、「ルールが破られるとどんな気持ちがするのか?」と、Bさんに問うてみたいと思います。もし、ルールが破られたとき、Bさんが怒りや不安を感じるのなら、Bさんとメンバーとの信頼関係に問題があるのかもしれません。あるいは、「メンバーはリーダーに従順でなければならない」という強い思い込みに縛られているのかもしれません。

ルールがメンバーの行動を必要以上に制限しているなら、ルール以外でメンバーが納得できる方法を模索してみることはできないでしょうか?新たなルールを決めるにしても、メンバーがよく納得できるルールならば、そのルールを主体的に守っていこうとする規範ができやすいと思います。

ルールに頼りすぎず、リフレクションを繰り返すなかで、メンバーとのより良い関係性づくりを進めていくことが、より生産性の高いプロジェクトづくりを促していくのではないかと思います。この点についても、8月のワークショップで気づいてもらえるのではないかと思っています。


(好川)好川写真

なるほど。プロジェクトマネジメントを有効に機能させようとすれば、ルールでしばるのではなく、リフレクションで良い関係づくりを行うことが効果的だということですね。確かに、ルールでしばってもメンバーは納得せず、ルールを守るためのルールが必要になることが多いので、リフレクションで土壌を変えていくというのは急がば回れ的な効果がでてきそうですね。

8月のワークショップが楽しみになってきました。8月のワークショップは、8月4日に二子玉川のカタリストBAで行います。リフレクティブなプロジェクトマネジャーを目指す方は、ぜひ、ご参加ください!

[バックナンバー]

第1回 リフレクションとは

第2回 リフレクションはプロジェクトマネジメントをどう変えるか

第3回 リフレクションの効果

第4回 まとめ

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。