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2010年4月 6日 (火)

【PMスタイル考】第14話:リーダーシップはどこに

◆マネジメントとリーダーシップ

リーダーシップ研究の権威であり、日本でもよく知られているジョン・コッター博士によると、マネジメントとリーダーシップには以下のような違いがあるそうです。

マネジメント:現在のシステムを機能させ続けるために、複雑さに対処することリーダーシップ:現在のシステムをよりよくするために、変革を推し進めること

プロジェクトでいえば、マネジメントはまさに、プロジェクトの複雑性に対処することです。そのために、WBSによるスコープ管理、ベースライン管理や、リスク管理、コミュニケーションの活性化など、さまざまな取り組みをしているわけです。

では、プロジェクトでいうリーダーシップとはなんなのでしょうか?これは簡単なようで、なかなか難しい問題です。


◆プロジェクトのリーダーシップ

プロジェクトのリーダーシップには大きくは2つの意味があるように思います。一つは、プロジェクトチームに対するリーダーシップです。つまり、プロジェクトに集まってきたメンバーをまとめ、チームパフォーマンスを最大化するリーダーシップです。これはすっきりした話ですし、多くの人がプロジェクトのリーダーシップというときにイメージするものだと思います。

もう一つのリーダーシップは、プロジェクトそのものをよい方向に導いていくリーダーシップです。プロジェクトが一生懸命に生み出した成果を経営的に意味のある成果にいくことです。違う言い方をすれば、プロジェクトが取り組んでいることの価値を経営に認めさせることです。このリーダーシップが欠如している組織が多いのではないかと思います。


◆リーダーシップの欠如のわけ

欠如しているのは2つの状況があると思われます。一つは現場側の問題で、「与えられた課題の解決は経営的な成果になる」という「思い込み」です。これを思い込みだというと違和感を覚える人もいると思いますが、戦略を実行するというのは仮説検証の繰り返しで、プロジェクトはその一端を担ぐ活動ですので、それをきちんとやれば経営的な成果になるというのは思い込みです。ただし、経営活動の中での責任を果たしたことになるといえば、そう言えなくもありません。

もう一つの方が重要で、(経営)管理側の問題です。プロジェクトの活動を意味のあるものにできていないという問題です。プロジェクトの成果を経営的に意味のあるものにするというと、収益を思い浮かべる人が多いと思います。もちろん、収益は経営的な成果です。ただし、収益というのは、「不満足要因」、つまり、予定通りに達成できて当たり前、できなければ不満の対象になる要因に過ぎないことを理解しておくべきです。


◆満足要因を創り出すリーダーシップ

本当の意味で経営的成果だと言えるのは、「満足要因」になるものです。経営トップが「できるといいな」と思っているようなことです。計画より高い品質を実現できた、予算計画を上回る収益が得られた、スケジュールを前倒しにできた、プロセスの改善に寄与した、人材を育てた、顧客との信頼関係が強固になったなど、考えればいくらでもあります。経営トップはビジョンや戦略として表現します。

このような満足要因を生み出すような課題の設定ができていないことに、管理側の問題があります。トップから下に降りてくるものには2種類の課題があります。一つは、売上げ、収益などの数字です。これは、指示に近いものです。もう一つは、ビジョンや戦略です。こちらは「○○をせよ」というものではありません。強いていえば、「自分で考えて、決めなさい」という指示ですが、むしろ、自発的に取り組んでいくものです。

ここにリーダーシップが必要になってきます。満足要因というのは、言い換えると「今はできていないこと」で、できるようにしたいと思っていることです。つまり、コッター博士のいう、現在のシステムをよくするために変革した「成果」に他なりません。

この成果を生み出すために、戦略を読み解いて、プロジェクトの活動で満足要因を見つけ出し、その達成のための課題設定をすること、これが管理者に求められるリーダーシップです。


◆管理者はリーダーシップの旅にでよう

もう一つの問題は、プロジェクトが頑張って満足要因になることを自発的に生み出そうとしたときの扱い方です。十中八九、余計なことをするなと言われます。もちろん、そんな露骨な言い方はしません。「リスク管理」と称して、満足要因は徹底的に排除し、不満足要因の達成にのみ、注力させるような扱い方をしている組織がほとんどです。これも管理者のリーダーシップの欠如です。仮に不満足要因の達成だけで精一杯なプロジェクトであったとしても、それを経営トップに売り込んでいく姿勢が現場のトップリーダーとしての姿勢だといえます。

このような管理者のリーダーシップがない状況では、プロジェクトに十分な成果を期待することはできません。プロジェクトには

・経営的リーダーシップ:管理者(プロジェクトスポンサー)
・プロジェクトのマネジメント:プロジェクトマネジャー
・プロジェクトチームのリーダーシップ:プロジェクトマネジャー、チームリーダー

といったマネジメントとリーダーシップの分業が求められます。プロジェクトの管理者はリーダーシップの旅に出ましょう。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。