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2009年8月21日 (金)

【補助線】改善 vs 戦略

◆改善 vs 戦略

今回の衆議院選挙の自民党と民主党の議論はなかなか面白い。政策そのものについては、このブログの範疇ではないので触れない(高速道路無料化の是非の議論は、システム思考的な視点から興味深いので、時間があれば書きたい)。何が面白いかというと、財源を巡る、改善vs戦略のアプローチの議論。この議論はこの10年くらい、日本企業の経営の場でことあるごとに議論になってきたテーマだが、それぞれを掲げた政党が激突するというのは、そうそう見られるものではない。

政策の議論はしたくないので、たとえ話で書く。

例えば、あなたが、10日間かかると思う仕事を、社長から5日でやれと言われたらどうするだろうか?仕事の工程を検証し、作業を効率化したり、無駄な作業があれば省く。つまり、改善だ。改善策を考えた上で実行し、それでできなければ、とりあえずはごめんなさい、次はきちんとできるようにもっといろいろと改善しますという。

こんな感じで改善の議論を絡めて、成功、失敗をはっきりさせないケースが多い。

◆改善の前提とする経営の条件

話が脱線するが、改善というのは、経営活動に関していくつかの大きな前提を以て行われている。

前提1:品質が向上すればライフサイクルコストが削減される
前提2:品質が向上すれば、顧客満足が向上し、経営的にメリットがある
前提3:無駄がなくなれば、生産性が向上する

成長期にはこの前提はすべて成り立ってきた。仕事の目的が明確でなくても、改善はできた。この中で、成熟期に確実になり立つのは前提1のみである。成熟期には品質というのは不満足要因であって、満足要因、あるいは、サプライズ要因にはならない。簡単にいえば、よくて当たり前であって、それ以上のものではない。

また、無駄がなくなれば生産性が向上するというのは、成熟期に問題になるのは付加価値の生産性であることを考えると成り立たないことは明らかである。

◆目的と戦略

話を元に戻そう。10日の仕事を9日でやってくれというのであれば、改善でできるかもしれない。しかし、半分となると、改善ではまずできない。下手をすれば検討をしている間に、5日経ってしまう。

では、どうするか?指示をした社長に何のために5日間でするのかを聞き出し、その目的を中心にして仕事の仕方を全面的に見直し、その目的だけを考えるとやらなくてよいことを探し、やらない。つまり、戦略的に仕事を進めていくことが求められる。戦略的であるとは、「何をやらないのか、何を捨てるのか」を常に考えることだ。そして、それによって限られたリソースで目標を達成することだ。

この際重要なことは目的の明確化をしっかりとやることはもちろんだが、見直しの範囲を作業ではなく、ビジネスプロセス全体に広げることだ。

一般論だが日本の現場のプロセスはかなり枯れている。少なくとも、海外の人件費の安い国とプロセス改善で対抗できるようなレベルではない。本当に乾いたぞうきんを絞るような現場も多い。

◆現場のプロセスではなく、ビジネスプロセスに注目

これに対して、ビジネスプロセスは実に無駄が多い。これには事情があって、戦略が形骸的であるので、目的が絞れず、プロセスもそのときは無駄であっても、うかつに手をつけることはできない。よく言えば汎用性があるし、これは日本企業の強みの一つだという認識がある。だとすれば、これは無駄ではなく、「あそび」である。

いずれにしても、ビジネスプロセスの中には、目的が決まってしまえば、無駄なものは多いのは事実だ。これもうまく削っていく。

さて、選挙の話に戻るが、自民党の発想は改善である。問題は民主党のやり方だが、アプローチの違う改善なのか、それとも戦略的なアプローチなのか、現時点ではよく分からない。大枠で言っていることは戦略的だが、個別の話を聞いていると、戦略的だとは思えない。改善のやり方を変えようといっているだけにも聞こえる。野党なので、情報に関してディスアドバンテージがあるからそのようになっているのかもしれない。もし、政権を取れれば、興味津々である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。