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2019年11月25日 (月)

本質カフェ~第4回 「はんこ文化」の本質はなにか(テーマ3)

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Essen_3

◆課題3
 
科学技術・IT担当大臣に竹本直一氏が就任しました。竹本大臣は
 
「一方に印鑑という日本古来の文化があり、他方にデジタルガバメント、究極の目標であるデジタルの社会がある。知恵を絞って考えたい」
 
と抱負を述べ、有識者の中にはデジタル化が遅れるのではないかと心配している人もいます。この問題を考えるには、はんこ文化の本質は何かがカギになります。
 
そこで課題3は
「はんこ文化」の本質はなにか
とします。
 

◆はんこ文化を取り巻く状況
 
まず、印鑑の種類を整理して置きます。個人であれば、実印、銀行印、認印の3つで、以下のような用途に使われています。
 
・実印:土地購入、車の購入、ローン契約など
・銀行印:銀行口座開設、預金の引き出しなど
・認印:履歴書、婚姻届、請求書、郵便物の受け取りなど
 
法人の場合、次の5つを使い分けているケースが多いようです。
 
・会社実印(代表社印):法務局での設立登記時に登録、重要な契約書などに使う
・会社銀行印:銀行口座の開設などのために銀行に届け出る印鑑
・会社印:会社の認印
・役職員:役職の認印
・個人印:社員各々の認印
 
次に、法律的な動きですが、法律上は民法をはじめ、多くの法律で捺印の必要性を規定しています。例えば遺言状は自筆の書名と押印が必要であることが民法で規定されていますし、刑事訴訟法には召喚状や拘留状には裁判官の「記名押印」を規定しています。
 
脱はんこの事例ですが、民間企業では多くの企業が脱はんこをしていますが、最近でははんこ文化がもっとも根を張っているとされる不動産業界でも脱はんこの動きがあるようです。
 
さらに、行政でもあるようです。行政でもっとも早かったとされるのは千葉市で、約3千種類の手続きで必要だった押印の必要性を2014年に見直しを行い、約2千種類を署名か記名押印の選択制に改めることを決めました。また、茨城県でも2018年4月に決裁電子化を始め、13.3%だった電子決裁率が同年7月にほぼ100%を達成するという事例があります。
 
また、法律的な動きとしては、2019年5月に「デジタル手続法」が成立したのが注目されます。ちなみに、この法律は当初、法人設立時の印鑑義務や本人確認時の押印の廃止が盛り込まれようとしていましたが、業界側が「実質的な印鑑不要論だ」と反発したため、結局、この条項は削除されて同法が成立するという経緯がありました。
 
しかし、この傾向は止まらず、2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略」では2010年に法人設立時の印鑑義務の任意化を実現すると記載されており、実現される見込みです。
 
このような需要減、後継者不足、法律的動向で、印鑑専門店はどんどん減少しています。全日本印章業協会によると、1989年(生成元年)に4370人だった会員数は、2019年6月末には941人と初めて千人を切っています。
 
世間の意見ですが、しらべぇ編集部が2019年に調査をしています。それによると
 
はんこ文化を守るべき:36.6%
 
という結果が示されています。興味深いのは、年齢別の賛否の割合で、守るべきがもっとも多いのは、男女とも10代です。今の10代は政治的に保守的な傾向が高いと言われていますので一概には言えませんが、やはり仕事で印鑑を使っているかどうかの影響は大きいように思われます。
 
「印鑑文化は守るべきだと思う? 世間のリアルな答えは…」
https://news.infoseek.co.jp/article/sirabee_20162203112/
 
最後にグローバルな動向ですが、世界中をみても、印鑑登録制度を制定している国は、日本以外では韓国と台湾だけだろうす。これはいずれも、統治・併合時代に日本が導入したということらしいです。そもそも、はんこが発明されたのは中国ですが、その中国では法的には印鑑ではなく、サインが使われています。
 

◆はんこ文化の必要性/不要な理由
 
さて、印鑑による必要性/問題点(不要な理由)の議論ですが、ネットで調べても結構な記事があり、それらから抜粋すると以下のようになります。
 
まず、必要性ですが、
 
<必要性>
・法律的に必要である
・本人がいなくても承認ができる(身分証明になる)
・印鑑業界が食っていくために必要である
 
の3つの集約されるように思います。これに対して、問題点、不要な理由は
 
<不要な理由>
・面倒だ
・意味が分からない
・非効率的である
・スピードが遅くなる
・紙がなくならない
・誰でも押せるのでセキュリティが弱い
・セキュリティの確保が大変である
・デジタル化の邪魔になる
・陰影が薄いのでやり直しが発生する
・捺印する書類がたらいまわしになる
 
といったところでしょうか。
 
この議論のもう一つの側面は、印鑑を無くした時に、どう代替するのかという問題ですが、これは
 
・サイン
・デジタル認証
 
の2つが現実的です。
 

◆はんこ文化の本質
 
以上からはんこ文化の本質が何かを考えてみます。
 
まず、必要性から考えてみます。法律的な必要性と業界のためをどう考えるかは意見の分かれるところだと思いますが、著者はこの2つは本質的な必要性の筋ではないと思いますので、承認の証明に的を絞って考えていきます。
 
すると
 
印鑑が必要なのか
 (なぜ)→承認の証明が必要である
 
となりますが、この後の「なぜ」は前提が2つに分かれます。承認を本人が行うか、本人以外でも行えると考えるかです。
 
例えば、会社実印の捺印をする契約書を考えてみると、本人が承認をしなくてはならない場合には本人が捺印をすることになります。これはほぼ不可能ですし、もし、そういう場面があるとしても本人が捺印することはないでしょう。
 
もう一つの前提である承認するのは組織であるで考えると、役職認印による稟議を経て、すべて決済されたら、誰かが捺印をするのが普通です。日本の組織の場合、役職者による決済は組織的に行われています。
 
このように考えてみると、
 
 →承認の証明が必要である
  (組織)→組織の承認が必要だから
  (本人)→本人の承認が必要だから
 
ということになります。
 
次に、不要論について考えてみたいと思います。不要だという理由は
 
・紙を無くしたい、デジタル化、セキュリティ → コストの問題
 
という点が一つです。ただ、それ以外の問題については、ビジネスプロセスの問題と、はんこ文化の問題がごちゃまぜになっています。特に、非効率とか、捺印する書類のたらい回しとか、スピードの問題については、問題の本質は印鑑ではなく、ビジネスプロセスそのものにあるように思えます。
 
このように考えると、コストの問題だというものについてもビジネスプロセスの問題に統合できそうです。つまり、ビジネスプロセスをコストを下げるように考えたときに、印鑑をどうするかという議論になってきます。コストを下げるビジネスプロセス変革の一環として、ビジネスプロセスをシンプルにすると印鑑を廃止することになるでしょう。
 
さらに、ビジネスプロセスをシンプルにすると、決済者を減らすことになり、印鑑よりサインの方がよいことになります。
 
では、なぜはんこ文化に拘るのでしょうか。もちろん、法律や業界の問題があるのでしょうか、法律は現実に合わせて変更すればいいわけですし、業界もハンコがなくなっても消えてなくなるとは思いません。もう少し、抽象化すれば承認するという行為は残るわけですので、そこに働きかけるビジネス変革で生き延びていくのでしょう。
 
問題はビジネスプロセスを変えたくないことにあるように思われます。さらにさかのぼっていくとこの問題は、役職者といえど、意思決定の責任を取りたくないという文化にあるように思います。
 
これがはんこ文化の本質だと考えますが、如何でしょうか?'
 
 
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。