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2014年10月 2日 (木)

【ブックレビュー】センスは知識からはじまる

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水野 学「センスは知識からはじまる」、朝日新聞出版(2014)

単行本><Kindle版

クリエイティブディレクターとして幅広い活躍をする水野学さんのセンス論。センスというのは特別な能力ではなく、さまざまな知識を最適化することにより、ものごとを最適化する能力だという。そして、それは開発可能なスキルだとした上で、センスを磨く方法を提唱している。

センスよくなりたいと思う人は必読の一冊。

著者はセンスのよさを

「センスのよさ」とは数字にできない事象の良し悪しを判断し、最適化する能力」

だと定義し、こんな例を挙げている。センスはたとえば水だと考えて、ある人は夏の暑い日にはきりりと冷やしてレモンを一滴垂らして出す。冬には体の芯から温まりそうなお茶にして出す。別の人は365日、生ぬるい上に新鮮ではない水を出す。前者がセンスがいい人で、後者がセンスの悪い人だといっている。

求められるのは当然前者で、技術がピークに達した今、センスが企業の存続にかかわるような時代になっているというのが著者がセンスが重要だという所以である。

センスを身につける上で大切なのは、良し悪しを判断するための

普通という感覚

が重要であるという。本のタイトルにもなっているセンスは知識から始まる、言い換えると

センスは知識の集積である

という著者の主張はここに基づいている。普通を知る唯一の方法は知識を得ることだからだ。その上で

知識=紙
センス=絵

というメタファを示している。紙が大きければ大きいほど、絵は自由でおおらかなものになるということだ。

このように考えたときに、センスをよくするために大切なのは、他とは全然違うものを見ることではなくて、

誰でもみたことのあるものをいう知識を蓄える

ことだと言っている。たとえば、売れる商品を作るには、過去に存在していたあらゆるものを知識として知っていることが重要である。

確かにそうだなと思うし、普通を知れば最適化のクオリティが向上するという考え方は興味深い。ただ、この議論はやみくもに知識の量を増やせば、自動的にセンスが上がるというものではない。知識の量とセンスの間には何某かの思考があることは間違いない。

これを知識を増やしていくアプローチとして示しているところがこの本の秀逸さである。そのアプローチとは

(1)王道からアプローチする
(2)今、流行しているものを知る
(3)「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみる

の3段階である。

これを見ると、事例的な知識を延々と集めてもセンスはよくならないことを示しているように思える。今どきの事情を踏まえて、(3)に到達することがミソである。(3)では抽象的な知識(これが本来の知識)を得ることを意味している。そして、そのレベルで思考をし、具体化の試行錯誤をするから最適化できるのだ。

つまり、センスというのはコンセプチュアルなスキルなのである。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。