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2012年8月31日 (金)

【戦略ノート292】プロジェクトマネジメントに最低限必要な5つのドキュメント

◆プロジェクトガバナンス

Document1プロジェクトマネジメントは、ドキュメントが多くて、手間だと思っている人は多い。確かに、PMBOK(R)を見ると、プロセスの中に出てくるドキュメントは実に多種多様である。全部を作成しなくてはならないわけではないと言われても、じゃあ、何が必要で、何が不要なのかをどう判断するのかという話になる。

そのように考える前に、どもども、プロジェクトというのは、組織的にどういう業務プロセスかを考えてみるといい。

プロジェクトの成り立ちは、例外はあっても、

(1)経営層がプロジェクトを行うことを決める
(2)経営層が組織にプロジェクトの実施を指示する(以下、上位組織)
(3)上位組織がプロジェクトを構想し、経営層の了解を取る
(4)了解が取れたら、プロジェクトマネジャーにプロジェクト遂行の指示をする
(5)プロジェクトマネジャーは、プロジェクト遂行の計画を作り、上位組織の了解を取る
(6)了解が取れたら、その計画を展開し、プロジェクトを実施する

というガバナンスになっている(業務プロセスとしては、権限委譲が入っているので、もう少し、単純である)。


◆プロジェクトリクエストでプロジェクトの実施を指示する

プロジェクトマネジメントの目的は、組織ガバナンスの元でプロジェクトが行われ、経営層の考える成果を上げることである。従って、どのようなドキュメントが必要かということになると、ガバナンスを実現するためのドキュメントが必要であるという答えになる。

では、一般的にはどのようなドキュメントを作成するのだろうか?まず、経営層から、組織に対しては、経営層としてのプロジェクトに対する要求を取りまとめたドキュメントが必要になる。これは、「プロジェクトリクエスト」と呼ばれる。

商品開発のように社内で完結したプロジェクトでは、プロジェクトに対する要求はほぼ、経営層の要求であるが、SIのように受託型のプロジェクトでは、少し整理が必要である。基本的には、受託型のプロジェクトは、顧客からの要求(合意)を了解する形で会社として実施するわけで、経営層からの要求の中は顧客要求を包括するものになる。したがって、顧客の要求も含めて、プロジェクトリクエストに記載され、上位組織に指示が行く。


◆プロジェクト憲章でプロジェクトの承認を得る

プロジェクトリクエストを受けた組織は、そのプロジェクトを担当する管理者であるプロジェクトスポンサーを決め、プロジェクトスポンサーが中心になり、プロジェクトの構想をまとめる。そして、構想の一環として、プロジェクトマネジャーが決まる。その際に、作成するドキュメントが、「プロジェクト憲章」である。

実務的には、経営層によるプロジェクト実施の決定から、プロジェクト実施の指示までをプロジェクトイニシエーターと呼ばれる人がやることがあるが、ガバナンスとしては、イニシエータは経営層からプロジェクトの実施決定に関する権限委譲を受けていることになる。

プロジェクト憲章が承認されれば、プロジェクトの実施が経営層に承認されたことになる。そこで、上位組織は、プロジェクト憲章をプロジェクトマネジャーに示し、プロジェクトに取り掛かる。そして、プロジェクトマネジャーはプロジェクト憲章にあるプロジェクトの目標についてプロジェクトスポンサーと協議し、合意したら、プロジェクトを開始する。

◆プロジェクトプロポーザルでベースラインの承認を得る

その際にまず行うことは、プロジェクト目標をクリアするための手段として、ベースライン計画を作る。一般的にはベースライン計画は、スコープ、時間、コスト、品質、リソースなどについて作成される。そして、ベースライン計画を、プロジェクトポロポーザルというドキュメントに組織の承認を得る。ここで、ベースライン計画が承認され、本当の意味でのベースライン計画になると同時に、ベースライン計画の実施がプロジェクトマネジャーに権限委譲がされる。

実務的には、この場面で、プロジェクトマネジメント計画を作って、組織承認を得ているケースが多いが、本来、リスク計画だとか、人的資源計画だとかは、ベースライン計画の実現手段を計画するものであり、組織の承認を取るべき筋合いのものではない。

ベースライン計画が承認された時点で、ベースラインをどのように達成していくかをプロジェクトマネジメント計画としてまとめるべきものだ。


◆マネジメントに最低限必要なのはRAMとコミュニケーション計画

プロジェクトマネジメント計画の中で、必ず必要になってくるのは

・RAM
・コミュニケーション計画

の2つである。基本的にプロジェクトは、ベースラインが明確になり、責任体制と、コミュニケーションプランがあれば、回していける。言い換えると、プロジェクトマネジメントとは、上位組織と協議して決めたプロジェクト目標の達成を、ベースライン計画として時間の入った計画にし、さらに、その計画の遂行体制と、関係者の間のコミュニケーションを推進していくことだということができる。

まとめると、以上で述べた

・プロジェクトリクエスト
・プロジェクト憲章
・プロジェクトプロポーザル
・RAM
・コミュニケーション計画

の5つがプロジェクトマネジメントで必要な最小限のドキュメントである。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。