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2012年7月 1日 (日)

【補助線】オーナーシップの本質

◆オーナーシップとは

Ownerオーナーシップという概念がある。辞書を引くと、所有権、持ち主といった説明がされている。オーナーシップはさまざまなレベルに適用される概念だ。会社、プロ野球球団などのオーナーシップもあれば、会社の業務レベルのオーナーシップもある。あるいは、作業レベルのオーナーシップもあるし、少し、視点を変えれば、問題のオーナーシップという考え方もある。

会社や組織のオーナーシップというのはイメージがあると思うので、それ以外について少し、触れておく。まず、業務のレベルのオーナーシップであるが、その業務の進め方に関する決定権を持つ人である。たとえば、人事や、ファイナンス、マーケティングなどのオーナーシップはどこの会社にいっても明確だ。最近では情報システムや技術についてもオーナーシップを明確にしている会社も増えてきた。オーナーシップを持つ人は、チーフオフィサーと呼ばれ、CHO(人事)、CFO(財務)、CMO(マーケティング)、CIO(情報)、CTO(技術)などのロールが決められている。

プロジェクトマネジメントについても、チーフオフィサーを定めている組織が増えており、CPOと呼ばれている。

【PMスタイル考】第13話:プロジェクトマネジメントのオーナーシップ
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/2010/09/style13.html



◆プロジェクトにおけるオーナーシップ

もう少し、小さなレベルで、プロジェクトにおけるオーナーシップもある。

たとえば、作業や(要素)成果物のオーナーシップというと、その作業や成果物の実行や実現に責任を持つ人のことを言う。

リスクマネジメントでいえば、リスクオーナーという概念がある。これはリスク対応に責任を持つ人のことで、文字通り、そのリスクを所有している人になる。

問題のオーナーシップというのもある。問題の所有者で、発生している問題をどのような問題としてとらえるかは、問題のオーナーシップに帰着する問題である。


◆オーナーシップの構成

このようにオーナーシップというのはよく知られている概念であるが、では実態が何かという話になると意外と知られていない。

オーナーシップの構成要素には、

(1)権限
(2)説明責任(アカウンタビリティ)
(3)実行責任(レスポンシビリティ)

の3つの要素があり、これらを相乗的に統合するのがオーナーシップである。

(1)の権限とは

「命令」、「規則を強いる」、「強制」、「服従の強要」、「決定」、「判断」などの行動の権利とパワー

を意味する。一般的にオーナーシップとして、権限をイメージしている人が多いが、これだけではオーナーシップにならない。オーナーシップには責任が付随し、一つは、行動や作業実施へのコミットメント、つまり実行責任である。もう一つは、タイムリーに報告をする責任、つまり説明責任である。前者をレスポンシビリティ、後者をアカウンタビリティと呼ぶ。

なお、コミットメントがあるという状態については、注意すべきことがあるので、こちらの記事を参考にしてほしい。

【戦略ノート第130回】コミットメントのプロセスはあるか?
http://www.pmstyle.jp/honpo/note/note130.htm


◆プロジェクトマネジメントにおけるオーナーシップの活用

プロジェクトマネジメントでオーナーシップはいろいろと使うことができる。たとえば、リソースマネジメントとして、プロジェクトに人を配置するのではなく、オーナーシップを配置する。つまり、タスクと権限、レスポンシビリティとアカウンタビリティをプロジェクトに渡す。これは一人とは限らない。あくまでも配置するのはオーナーシップである。

すると、プロジェクト側はRAMのような仕組みで体制に組み入れ、人の管理をしなくても、成果管理ができる。これによって、リソースの効率が格段に上がるだろう。

問題管理にオーナーシップを導入することも効果的である。問題というのはそもそも、「オーナーシップを持つものが解決が必要だと考える事項」である。つまり、目標と現状のギャップがあってもオーナーシップが問題だと考えなければ問題にならない。これによって、ずいぶん無駄な対応が減るプロジェクトは少なくないだろう。

目標に対してもオーナーシップを導入することが考えられる。よくチームで目標を共有するとか言う。この意味がぶれていることが多い。目標を共有するとは、本来、オーナーシップを共有することである。つまり、実行責任と説明責任を共有するとともに、目標達成に必要な権限を共有するということだ。ここを明確にしていくことは、チームを機能させるために非常に効果的である。

このようにオーナーシップという概念を導入することによるメリットは、当事者意識を持たせることである。経営者がオーナーシップにより、経営の当事者意識を持つように、現場の作業者にもオーナーシップにより当事者意識を持たせる。

ここにオーナーシップの本質がある。

【戦略ノート209】オーナーシップとは当事者意識である
https://mat.lekumo.biz/ppf/2010/04/note209.html


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いろんなオーナーシップがあるんですね。
参考になりました。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。