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2012年6月11日 (月)

【インターパーソナルスキル・エンジン】第5回(その1) コミュニケーション(1)~5つのコミュニケーションスキル

Communication1◆はじめに

PMBOK(R)によるとコミュニケーションのディメンションには以下のようなものがある。

・内部(プロジェクト内)と外部(顧客や他のプロジェクト、など)
・形式的(報告書、議事録など)と非形式的(メール、話し合いなど)
・タテ(組織の上下)とヨコ(他部門、同僚)
・公式(記録する)と非公式(記録しない)
・書面と口頭
・言語と非言語

コミュニケーションの議論は、これらのいずれの軸に対しても、対応できるようなものでなくてはならない。

まず、最初はそのためのコミュニケーションスキルについて考える。



◆必要なコミュニケーションスキル

PMBOK(R)では、限定しないとし、例として以下のようなものを挙げている。

・積極的、かつ、効果的な傾聴
・確実に理解するためにアイデアや状況を質問し、正しく調べる
・チームがさらに効果的に活動できるように、チームの知識を増やす教育をする
・情報を特定し、確認するために実態を調査する
・期待を設定し、マネジメントする
・行動を起こすように、個人または組織を説得する
・当事者が相互に受け入れできる合意に達するように交渉する
・深刻な影響が生じないようにコンフリクトを解決する
・要点をまとめ、整理しなおし、次の手順を特定すること


これらの例は、対人関係スキル全般にまたがるもののように見える。そこで、ここでは、これらも参考にしながら、プロジェクトマネジメントに必要な対人的なコミュニケーションスキルを5つに整理する。

(1)「私」を主語にしたメッセージを送る
(2)話を良く聞く
(3)オープンエンドの問いかけをする
(4)メッセージを追跡する
(5)話のポイントをリフレーミングする


◆「私」を主語にしたメッセージを送る

プロジェクトでは、レスポンシビリティを定義し、責任を明確にして進めていく。その中で、必ず必要なのが、自分を主語にしてメッセージすることである。

英語であれば、「We」ではなく、「I」、日本語であれば、「無主語」や「私たち」はだめで、必ず、「私」を主語にして語ることだ。


◆話を良く聞く

次に必要なスキルは、よく話を聞くことである。プロジェクトにおいて、聞き方の問題でトラブルが起こることは珍しくない。たとえば、

・メンバーがプロジェクトにおける自分の役割をきちんと認識していない
・顧客の要求をきちんと理解していないにも関わらず、理解していると思い込んでいる
・ミーティングなどで、自分の仕事をきちんと把握しないままになっている

といったケースはよくみられる。

では、どうすればいいのか?いくつか、挙げてみよう。

・他人の視点で確認をする
・メンバーに彼らの視座から重要なポイントを示す
・彼らの関心事をきちんと聞き取っていることを、うなずくなどの振る舞いで示す
・聞いたことについて、別の人に裏を取る
・ステークホルダにどのように感じたかを聞く

などが考えられる。

重要なことは、コミュニケーションには、情報伝達、ロジカルなコミュニケーション以外に、価値に関わるコミュニケーションがある。価値に関するコミュニケーションには感情が入ってくるので、必ず、何らかの方法で確認をした方がよい。


◆オープンエンドの問いかけをする

オープンエンドクエスチョンとは、

・そのとき、何があった?
・そのとき、どう感じた?
・あなたならどう考える?

など相手に自由に答えさせる質問である。これに対して、イエスかノーかの質問はクローズエンドクエスションという。

オープンエンドの質問をすることによって、相手に十分にしゃべらせ、いろいろなことを聞き出すことができるし、また、そのようなコミュニケーションが信頼関係の構築につながっていく。

ただし、質問をうまくしないと、話が発散してしまうことがあるので注意する必要がある。

◆メッセージを追跡する

コミュニケーションをしている際に、さまざまな事情により、話が分断されてしまうことがある。このような場合に、その対話をそのままにしておくことは、信頼関係の崩壊につながる恐れがある。

話が分断されたときには、もう一度、必ず、前の話に戻して、対話を続けていくことを忘れてはならない。


◆リフレーミング

チームで議論しているような場合に、話が堂々巡りになってしまうようなことが珍しくない。たとえば、

スケジュールが遅れている
→残業時間を増やそう
→疲れるので同じこと
→人を入れよう
→慣れるまでは却って大変

こんなときに、なぜ、スケジュールを取り戻したい理由を考える。顧客に迷惑をかけないことだとすれば、議論を

現在の状況で顧客に迷惑をかけないためにはどうすればよいか

という視点に変えてみる。すると、たとえば、顧客側の進行を考えて、それに合せてリリースするという方法が見つかるかもしれない。

この5つのスキルがあれば、プロジェクトにおける対人的なコミュニケーションはなんとか乗り越えることができる。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。