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2011年8月 2日 (火)

【戦略ノート261】組織的コミュニケーションでやらされ感を払拭する

◆3つのプロジェクトコミュニケーション

Strategy2 プロジェクトマネジャーのもっとも重要な役割を一つだけあげるとすれば、コミュニケーションマネジメントである。この持論はもう5年くらい変わらない。

プロジェクトのコミュニケーションには3のタイプある。

一つは、作業上必要なコミュニケーションである。これを手段的コミュニケーションという。要求や仕様に関するコミュニケーション、作業進捗に関するコミュニケーション、問題やリスクに関するコミュニケーションなどがこれに該当する。この種のコミュニケーションは一般にはホウレンソウと呼ばれ、プロジェクトコミュニケーションというと、これを思い浮かべる人が多い。

二つ目は、動機づけやチームビルディングを目的にしたコミュニケーションである。これは充足的コミュニケーションという。ホウレンソウがコミュニケーションが手段であるのに対して、このタイプのコミュニケーションはコミュニケーション自体が目的であるところに特徴がある。

三つ目は、組織的なコミュニケーションである。たとえば、プロジェクトの背景、戦略、戦略ゴール、あるいは、プロジェクトの目的、顧客の想いなど、メンバーが意識しなくてはならないプロジェクト目標の背景にあるものに関するコミュニケーションである。

このタイプのコミュニケーションは行われているといえば、行われている。たとえば、キックオフミーティングで、これらのことは一式まとめて話をするプロジェクトは少なくない。しかし、戦略ゴールやプロジェクト目的などは、そもそも、形式的に表現されたものを聞いてもそれで理解したということにはならない。それらがプロジェクトのメンバーの活動と結びつき、腹に落ちてはじめて理解できたといえる。


◆組織的コミュニケーションがメンバーの動機を高める

その意味で、組織的コミュニケーションをするとは、戦略的意味や、プロジェクトの目的、目標との関連をプロジェクト期間中、ずっと話し合ってはじめてコミュニケーションしていると言えるものでもある。

メンバーの動機を高めたり、あるいは、自発的な行動を引き出したりすることは、二番目のタイプのコミュニケーションがある程度必要であるが、本質的には組織的コミュニケーションを適切に行わないと達成できない。この点をよく理解しておく必要がある。

もう一つ、組織的コミュニケーションに関しては、プロジェクトマネジメントの範囲で完結するものではないという点に注意しておく必要がある。たとえば、戦略は日頃から常にコミュニケーションされており、プロジェクトはその前提で関係する戦略を読み取り、戦略上の位置づけを理解していく。このような日常的な戦略に関するコミュニケーションが、プロジェクトの戦略実行のパフォーマンスを決定的に変えるということも併せて理解しておく必要がある。


◆「コミュニケーションがよくない」

弊社で「コミュニケーション監査」というサービスを行っている。コミュニケーション監査は、コミュニケーションのニーズに即したコミュニケーション計画を策定するためのサービスである。実際には、プロジェクトにおけるコミュニケーションを30程度に類型化し、それぞれのコミュニケーションに対して、プロジェクト活動に参加している人が、

・どの程度必要だと思っているか(ニーズ)
・実際に行われているか(実績)

を調査する。そして、ニーズが高くて、実績が低いコミュニケーションを中心に、コミュニケーション計画とコミュニケーションの是正を行う。

このサービスを提供していて気付いたことは、「コミュニケーションがよくない」という問題意識を持っているプロジェクトは、手段的コミュニケーションや、充足的コミュニケーションよりは、圧倒的に組織的コミュニケーションに問題がある。


◆組織的コミュニケーションがやらされ感を吹き飛ばす

組織的コミュニケーションが不十分だとやらされ感が出てくる。やらされ感は手段的コミュニケーションを受動的にする。そして、それがやらされ感を増幅するという問題がある。結果として、手段的コミュニケーションがどんどん悪くなる。

実際に現場では、「信じられない」ようなコミュニケーションの悪さを目撃することが少なくない。その背景には、必ずと言ってよいくらい、やらされ感がある。

やらされ感を無くすためには、徹底的に組織的コミュニケーションを行い、プロジェクトマネジャーだけではなく、プロジェクトチームの全員が、リーダーとして行動するように働きかけていく必要がある。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。