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2011年7月25日 (月)

PMO2.0のためのパフォーマンスコンサルティング入門(6)~パフォーマンスコンサルティングの問題解決プロセス(後)

◆はじめに

前回は、パフォーマンスコンサルティングの問題解決プロセスのSTEP1として

・ビジネス成果のあるべき姿
・パフォーマンスのあるべき姿

について述べた。次のステップは、現状を分析し、ビジネス成果とパフォーマンスのギャップを明確にすることである。



◆成果のギャップ、パフォーマンスのギャップ(STEP2)

ビジネス成果に対するギャップの分析は大抵は、事業計画として使っている指標によって足りる。というよりも、これはパフォーマンスコンサルティングの依頼者(クライアント)のアカウンタビリティであるので、だいたい、把握されているし、ギャップを把握した上で、パフォーマンスコンサルティングの依頼に至っているケースが多い。

重要なのはパフォーマンスのギャップである。前回述べたようにクライアントの多くは事業に求められているものはよく分かっているが、そのために事業部のメンバーがそのような行動をしなくてはならないかはわかっていないことが多い。

特に成果が上がっていない状況では、現状に対する不満はあるが、その不満がどのようなものかは明確にわかっていない。そこで、多くの人は、自分の経験や持論に基づき、不満を表現する。すると、

「部長の時代はそうだったかもしれませんが、いまは、そのやり方で目標を達成できるとは思えません」

となる。実際にそうだろう。ここで、ちょっと触れておきたいことがある。それは、

ありたい姿

という議論だ。あるべき姿は成果の達成目標を達成するためにあるべき姿である。ありたい姿は、本人がありたい姿である。が、それは、アカウンタビリティを前提にしたものである。その意味では、あるべき姿に加えて、自分の想いが入っているという意味で、より高度なあるべき姿である。

話を元に戻すが、重要なことは、現状の把握は、あくまでもあるべき姿に対してのものであって、普遍的なものではないということだ。詳しい議論は別途行うが、パフォーマンスのあるべき姿を描く一般的な方法はコンピテンシーである。

コンピテンシーモデルを作るときには、ハイパフォーマーの分析を行い、その行動特性をモデル化する。前回述べたパフォーマンスのあるべき姿は基本的には、ハイパフォーマーの行動特性であり、現状分析は、コンサルティングの対象者、あるいは組織のメンバー全員から抽出されたコンピテンシーがどのようになっているかを計測し、分析すればよい。


◆ギャップの原因を分析する(STEP3)

次に、メンバーのパフォーマンスの発揮や事業目標の達成を妨げている原因を知る。パフォーマンスコンサルティングでは、

・能力に関する原因
・環境に関する原因

の2つの視点から分析する。能力に関する原因は、人の内的要因であり、コンピテンシーを指標とするなら、コンピテンシーの低いところが相当する。

環境に関する原因には組織内部のものと、組織外部のものがある。外部要因はほとんどコントロールできないが、特にビジネスの成果に影響を与えるので、ソリューションを設計する際に必要な情報として把握しておくことが重要である。たとえば、顧客の動向などが外部要因の例になる。

組織内部要因には、コントロールできるものとできないものがある。コントロールできるものが、ソリューションの候補になる。たとえば、コミュニケーションの問題や、権限移譲の問題などがある。一方でコントロールできない内部要因には、リソース配置などがある。リソース予測ができないからだ。

◆ソリューション(STEP4)

ソリューションは原因に対応して、

・能力に関するソリューション
・環境に関するソリューション

がある。能力に関するソリューションは、基本的には学習ソリューションである。たとえば、著者たちは、プロジェクトマネジャーの問題に対して、コンピテンシーを高める学習という観点からのソリューションを提供している。ソリューションは原因を直接解消するような形で行うべきであるが、能力は個別要素の関連性が高いので、どのように手を打っていくかは、注意を要する。

環境に関するソリューションは、ケースバイケースで、考えていく必要がある。一般的な解はないと考えた方がよい。この場合も、能力と同じで、原因を直接解消するようなソリューションを提供することが望まれる。

ここで注意する必要があるのは、個人能力の変化と、環境の変化の関係である。個人が学習し、個人の能力が変わると、環境に変化が生じることがあることだ。たとえば、プロジェクトコミュニケーションの仕組みに問題があったとしよう。その場合、個人のコミュニケーション能力が向上すれば、その問題の一部は解消(軽減)される可能性がある。逆に、プロジェクトコミュニケーションの仕組みが改善されれば、個人のコミュニケーション能力が向上する可能性がある。

このような関係を認識し、能力と環境の間にシナジーのあるようなソリューションの設計が求められる。

以上が、PCコンサルティングの問題解決プロセスの全体像だ。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。