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2011年5月27日 (金)

【戦略ノート254】プロジェクトの上位管理者考(1)~混乱を極めるその役割

◆混沌を極めるプロジェクト上位管理者の役割

プロジェクトマネジメントはなんとか形になってきた組織が多いが、プロジェクトの上位管理者の役割や機能については、まだまだ、混沌としている企業が圧倒的に多い。大きな理由は2つあるように思う。

一つは、責任分担が不明確なことである。もう一つは、上位管理者がプロジェクトマネジメント(ロール)をあまり理解していないことである。このスレッドでは、プロジェクトの上位管理者の役割や機能を整理してみたい。戦略ノートでは、2008年に176回から8回かけて、一度、この議論をした。しかし、消化不良の部分もあり、また、当時とは考え方も変わっているので、異なる枠組みで改めて、議論をしてみたいと思っている。

第174回(2008.01.29)
組織が行うべきプロジェクトマネジメント(1)~責任のフレームワーク

◆ガバナンスとスポンサーシップ

さて、今回の基本的な枠組みは、2つの視点がある。一つは、プロジェクトを運営には、リーダーシップとマネジメント(管理)が必要であるという視点である。もう一つは、これに関連してくるが、上位管理者の機能は、スポンサーシップとガバナンスが必要だということである。

この4つの要素は、

上位管理者の管理=ガバナンス
上位管理者のリーダーシップ=スポンサーシップ

という関係にある。

まず、前者であるが、上位管理者の管理の仕事はマネジメントではなく、ガバナンス(統治)だということだ。ここでは、ガバナンスとスポンサーシップを以下のように定義しておく。

(1)ガバナンス
プロジェクトにおける意思決定のプロセス、および、意思決定を可能にするために構築されるフレームワーク、モデル、構造

(2)スポンサーシップ
プロジェクトスポンサーシップとはプロジェクトに資源を投資し、提供した資源に見合うベネフィットを得るために支援を行う活動

ガバナンスとは、プロジェクトマネジメントのもっともクリティカルな成功要因であり、スポンサーシップとは、プロジェクトのもっともクリティカルな成功要因だといえる。


◆プロジェクトの上位管理者の管理行動とロール

基本的に上位管理者の管理行動は、ガバナンスとスポンサーシップによって決定されると考えてよい。ところが、この2つの要素はマネジメントとリーダーシップと同じくらい異なっている。

ガバナンスは相当に理論化されている領域の話である。プロジェクトマネジメント同様に、正解があるといったことではないが、多くの理論が構築されているので、それらを使って展開していくことができる。これに対して、スポンサーシップは理論はない。10人の管理者がいれば、10人ともやり方が違うだろう。つまり、スポンサーシップには、理論はなくて、あるのは持論である。

ところが、現実にはガバナンスに持論を持ち込もうとする人が圧倒的に多い。上位管理者の役割や機能がすっきりしないのはこの点にあるのではないかと思う。要するに、ガバナンスを自己流でやるので、プロジェクトマネジメントがゆがめられるのだ。

もうひとつ、ロールの問題もある。プロジェクトスポンサーシップを提供するのは、PMBOKにも出てくるプロジェクトスポンサーというロールである。これに対して、ガバナンスを提供するのは、プログラムマネジャーというロールだ。スポンサーはともかく、プログラムマネジャーを適切にできる上位管理者はめったにいない。そこで、結局、プロジェクトスポンサーだけの役割や機能になってしまっている。これが、混乱の一因である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。