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2011年4月11日 (月)

PMサプリ255:要らないと言い続けることで、開発を進める

これは要らないと言い続けることで、製品開発を進めてきた(スティーブ・ジョブス、アップルCEO)

【成分】
◆消費者の多様化
◆顧客の声
◆コミュ力万能時代は正しいのか
◆コミュニケーションを越えて
◆計画に十分な時間をかけ、開発時間を短くする


 【解説】

「イノベーションのジレンマ」という言葉を聞かれたことがあると思います。ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が発見し、著者がベストセラーになったため、世界中に知れ渡ることになりました。

イノベーションのジレンマとは、優れた特色を持つ商品を売る巨大企業が、その特色を改良する事のみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かず、その商品より劣るが、新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業の前に力を失う理由を説明したマーケティングの理論です。

代表的な例として、クリステンセン教授はハードディスクの例を取り上げています。
大型コンピュータ用の14インチ・ディスクのトップ・メーカーは、ミニ・コンピュータ用の8インチ・ディスクの開発に遅れをとってすべて姿を消し、8インチの主要メーカーのうちパソコン用の5インチで生き残ったのは一社だけで、ディスクの世代が変わるごとに主要メーカーがすっかり入れ替わってしまいます。

これは経営の怠慢ではなく、たとえば、5インチのハードディスクとパソコンが登場したとき、それは8インチのディスクを使うミニコンとは性能面では比較にならず、用途もはっきりせず、利益も小さいものでした。そこで8インチメーカは5インチには目をくれることもありませんでした。

これに拍車をかけるのが、顧客の要求です。ミニコンの顧客は、容量の少ない5インチのディスクよりも、8インチ・ディスクの大容量化を望みました。

その中でベンチャー企業は5インチのハードディスクに取り組みます。PCの普及とともに、5インチの市場は大きくなり、投資も盛んに行われるようになります。やがて、5インチは8インチよりも高い性能と小型という利便性を実現し、8インチの市場であったミニコンにも採用されるようになります。すると、8インチしか取り組んで来なかったメーカは対応のしようがなく、事業中止に追い込まれたり、倒産をしていきます。

イノベーションのジレンマの一面として見逃せないのが、顧客の要求に対応して失敗するという一面です。とくに、ハードディスクのような生産財の顧客はドライです。
経済合理性だけで動くためです。8インチの技術向上を要求しておきながら、5インチの方が効用が高くなればすぐに5インチに移るわけです。これが、顧客の声です。昔、福田赳夫元総理は「民の声は天の声というが、天の声にも変な声もたまにはある」と言いました。顧客の声は天の声だが、天の声にも変な声はあるわけです。

では、イノベーションのジレンマを避けるためには、どうすればよいか。戦略的な観点からはクリステンセン教授も含めて、いろいろなことが言われていますが、決定的な説はありません。むしろ、この問題の本質である、顧客の要求を鵜呑みにする、機能を下げる「イノベーション」はしたくないといった問題が、現場にあるからではないかと思われます。現場での解決方法は、「考え抜く」ことです。

考え抜くとは、増やすことではなく、減らすことです。そのような思いで書いたサプリです。

【効用】
・PM体質改善
  リーダーシップ発揮、顧客感度アップ、問題解決能力向上
・PM力向上
  ピープルマネジメント力向上、チームをまとめる力の向上、リスク対応力向上
・トラブル緩和
  モチベーション向上、チームの士気向上

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。