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2011年4月11日 (月)

PMサプリ231:目的を最大化する

報酬によって人のやる気を短時間起こさせることは可能だが、報酬の効果は次第に弱まりプロジェクトを続けるために必要な長期的モチベーションは失われることもある(ダニエル・ピンク)

【成分】

◆モチベーション3.0
◆金銭的な報酬が活動への興味を削ぐ
◆プロジェクトにインセンティブ給は有効か?
◆目標生産性を上回ったプロマネのやり方
◆長期のプロジェクトではどのようなインセンティブが有効か
◆収益性の最大化と同時に、目的の最大化が必要


 【解説】
神戸大学のMBAコースはMBAコースであるにもかかわらず、修士論文があります。
大学院に行っているときに修士論文を書くために、顧問をしていた企業に頼み込んで、商品開発のプロジェクトのエスノグラフィー(参加観察)をやらせていただいたこと
があります。

コンサルティングではありませんので、メンバーとしてOBSに入れて貰い、仕事をしました。それまで顧問として「先生」と呼ばれ、偉そうに接していた社員の人と対
等な立場で仕事をするわけで、リーダーや他のメンバーがやりにくいのでリーダーをやってくれという話があったのですが、エスノグラフィーの趣旨を理解いただき、3
ヶ月間メンバーとして働かせていただきました。

諸般の事情でエスノグラフィーとしては使いませんでしたが、この経験はその後、プロジェクトマネジメントの仕事をする際にずいぶん、役に立ちました。このときのテ
ーマが動機でした。

リーダーの行動によって、自分の動機がどう変わっていくか、あるいは、任された仕事に対してどうすればやる気が高まるか、さらには、メンバーの動機がどうなってい
るか、あるいはプロジェクトリーダー自身の動機がどうかということを仕事をしながら、観察していきました。通常のコンサルティングでヒヤリングをしたり、多少の現
場の観察をするよりは、はるかにいろいろなことがわかり、動機のような見えにくいテーマにおけるエスノグラフィーの威力も分かりました。

僕は当時37歳で、参加していた第三セクターの研究所では研究室長でしたし、それまでに2~3人のプロジェクトから500人以上が参加するプロジェクトまで、いろ
いろなプロジェクトの管理の経験がありました。プレイングマネジャーからプロジェクトマネジャーまでさまざまなスタイルも経験しています。

参加観察したプロジェクトリーダーは29歳、参加者は8名ですので、ちょっと傲慢な言い方をしますが子供の中に大人が混ざっているようなもので、みんなが気づいて
いなくても気づくことが多くあります。コンサルティングと違い、それをリーダーにすべきだと進言するのではなく、自発的にどんどん実行していきました。すると、そ
れでチーム全体が動くということに気づきました。

例えば、進捗報告のやり方を工夫して変えると、メンバーもそれを倣うわけです。自発的にやりますので、報告の質が高く、コミュニケーションの質が上がります。こう
いう活動をしていることがもっともやる気が高くなることに気づきました。なかなか、おもしろい経験でした。

また、他のメンバーを見ていると、コミュニケーションがよい人はやる気が継続し、そうでない人はやる気にムラがあることも分かりました。これも、興味深い現象でし
た。さらに、プロジェクトマネジャーのやる気はメンバーのやる気に強く依存していることも分かりました。エスノグラフィーを終えた後で聞いてみると、メンバーがイ
キイキしていると自分も元気になるということをいっていました。今風にいうと「メンバーから元気を貰ってます」ってことです。

これらにもまして、大きな発見だったのが、あとで振り返って気づいたことなのですが、エスノグラフィーとしてプロジェクトに参加しているのはボランティアで作業を
やっているのに近いわけです。顧問料は貰っていましたが、それまでその会社でプロジェクトのリーダーをした際には別途追加費用を貰っていましたので、そう考えると
まさにボランティアです。少なくとも、フィー分は仕事をしないといけないなとどは思わなかったわけです。それによってかえってよい仕事ができたのではないかという
仮説を持っていました。

残念ながらその後この仮説を検証する機会はなく、仮説のままです。ただ、リタイヤーした人を一緒に仕事をする機会があると、この仮説の正しさを感じることが多いで
す。

ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」を読んでいて、この経験を思い出し、今回のサプリを書きました。

【効用】
・PM体質改善
  PM体質の全般に対して効果があります
・PM力向上
  PM力向上の全般に対して効果があります
・トラブル緩和
  モチベーション向上

このサプリの購入はこちら

 

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。