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2009年7月 7日 (火)

【補助線】プロジェクトを「作業」から「仕事」に

◆仕事と作業の違いは?

いきなりで恐縮だが、PMP(R)の方に質問。work、task、activity の違いが説明できますか?

山﨑裕司さんという方が書かれた本に「日本語で書いた経営の教科書」という本がある。経営者やマネジャーにとっては示唆に富むたいへんよい本だ。

この本の中に、「仕事」と「作業」はどのように違うのかが明確に書いてある。それによると、

作業:定められたことをすること
仕事:目的に対して、効率的に貢献をするように作業を定め、割り当てること

だという。

◆仕事と管理と経営

さらに仕事とは

・課題探索
・課題設定
・目標化
・大きな工程表
・行動計画
・実施
・成果の評価
・報告

の流れで行われるとしている。

さらに、山崎さんはこの仕事の定義を背景に、管理と経営についても、定義をしている。単純明快で、管理とは、社員に仕事をさせること、経営とは幹部(管理者)に管理をさせ、社員に仕事をさせることだという。仕事の流れは、管理でも、経営でも変わらない。

そして、機能不全に陥っている企業は、社員も幹部も作業に没頭している企業だと指摘する。

日本企業は全員が社員だった。つまり、仕事をすべきだと考えられてきた。これが日本企業の強みだったのではないだろうか。

◆プロジェクトスポンサーやプロジェクトマネジャーの仕事とは

そこで、あなたのプロジェクトスポンサーや、プロジェクトマネジャーとしての「仕事ぶり」を振り返ってみよう。仕事をしているか?それとも作業をしているか?

まず、プロジェクトマネジャーの仕事を山崎さんのプロセスに当てはめてみる。

・課題探索:プロジェクト目的を実現するための課題を探す
・課題設定:課題設定をする
・目標化:課題解決の目安を目標として表現する
・大きな工程表:大工程を決める
・行動計画:WBS、スケジュールなどの計画を作る
・実施:作業を割り当てる
・成果の評価:進捗管理を行う
・報告:成果物の検収を受ける

といった感じになる。

これから分かるように、PMBOKを念頭においてプロジェクトを運営していくと、山崎さんがいう仕事のプロセスはほぼクリアできる。つまり、プロジェクトマネジャーとしての仕事をしていることになる。サボっている人の典型的なパターンは、大行程を行動計画を決めて、課題探索や課題設定、目標化はメンバーに任せてしまうというパターンだ。

また、プロジェクトマネジャーは仕事と管理を求められているが、仕事をちゃんとしている人も含めて、管理はあまりしていない人が多い。

では、プロジェクトスポンサー(プロジェクトマネジャーの上司)はどうか?プロジェクトスポンサーこそ、プロジェクトマネジャーにプロジェクトという仕事をさせる「管理者」であるが、ちゃんと管理をしているのか?プロジェクトスポンサーのすべき「管理」は

・課題探索:プロジェクト目的(課題)を探す
・課題設定:プロジェクトを定義する
・目標化:プロジェクト実施に当たって、SQCDなどの目標を決める
・大きな工程表:マイルストーンを設定する
・行動計画:プロジェクト憲章を作成する
・実施:プロジェクトを立ち上げて、プロジェクトマネジャーに渡す
・成果の評価:プロジェクトレビューを行う
・報告:プロジェクトの結果を報告する

といった感じになる。

多くのプロジェクトが、「仕事」ではなく、「作業」になっている原因が分かるのではないだろうか?

◆認識のズレ

この話をした上で、実際にプロジェクトマネジャーに聞いてみると、10人中8人は仕事をしているという。では、プロジェクトスポンサーについてどう思うかというと、仕事をしていると思っている人はよくて3割くらいだ。

そこで、プロジェクトスポンサーに聞いてみると、自分が仕事をしていると思っている人はほぼ10割に近い。しかし、プロジェクトマネジャーで仕事をしていると言えるのは10人中1~2人しかいないいうのが相場だ。実際に聞いたことはないが、経営者に同じことを聞くと、きっと仕事をしているプロジェクトスポンサーは1~2割という答えが返ってきそうな気がする。

この認識の違いはなんだろうか?現実的にいえば、多くのプロジェクトは仕事ではなく、「作業」になっている。

キーワードは「仕事」で有るための要件

「目的に対して、効率的に貢献をする」

にある。

◆プロジェクトが仕事になるには、目的の共有が重要

目的が組織で共有されていないのだ。たとえば、プロジェクトは商品を開発することが目的だと思っている。上位組織は商品で利益を上げることが目的だと思っている。するとプロジェクトスポンサーが考えるプロジェクトマネジャーの仕事、プロジェクトマネジャーが考えるプロジェクトスポンサーの仕事の定義がずれてくるのだ。

このすりあわせをせずに、調査をしているので、当然、上のような結果になる。もちろん、これは意識だけの話にとどまらない。自分がすべきだと思っていることと、期待されていることが違うということだから、実務上の齟齬になって表面化する。結果、プロジェクトはこけることもある。

これから、言えることは、プロジェクトスポンサーもプロジェクトマネジャーも、目的のすりあわせをきちんとすべきだということ。

目的が明確になっていない中で、作業を効率的に割り当てることなどできっこないのだ。そのためには、計画の前にプロジェクト憲章を作る。そして、目的の共有を図る。それで、初めてプロジェクトが仕事になる。

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2.プロジェクト憲章を作るための準備1~目的を明確にし、ビジョンを描く
・プロジェクトの目的を明確にするための5つの質問
・プロジェクトビジョンを描く
(演習)5つの質問に答え、プロジェクトビジョンを描く

3.プロジェクト憲章を作るための準備2~プロジェクトの前提を整理する
・プロジェクトは前提で決まる
・大失敗の陰にあいまいな前提あり
・プロジェクトの前提の分析と設定
(演習)前提を整理する

4.プロジェクト憲章を作るための準備3~プロジェクトシナリオを作る
・シナリオとは何か
・シナリオがリスクに強いプロジェクトを作る
・シナリオ作成の手順
(演習)プロジェクトをシナリオの作成

5.プロジェクト憲章を作成する
・プロジェクトマネジメントの方針を決める
・ビジョン、前提、シナリオをプロジェクト憲章として統合する
・プロジェクト憲章作成演習

6.プロジェクト憲章を浸透させる~物語による浸透
・物語の作り方
・プロジェクト憲章を物語にする

7.まとめ~プロジェクト憲章とリーダーシップ

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。