【補助線】マネジャーの成果は人を使って成果を出すこと
◆マネジャーの成果は人を使って、仕事に対して期待された成果を出すこと
昨日、PMstyleの会員を対象にした第5回のプライベートセミナーを行った。そのときに、参加された方と講師の間で議論になったことの一つが「プロジェクトマネジャーの成果は何か」という議論。とてもよい議論だった。
講師の國貞克則さん(ボナ・ヴィータ コーポレーション)はドラッカースクールの出身だけあって、ドラッカー先生の意見を引っ張ってこられ、
マネジャーの成果は人を使って、仕事に対して期待された成果を出すこと
だと断言された。われわれは、この言葉をもっと真剣に考えるべきであろう。
ドラッカー博士の伝説的な講演場面にこういうのがある。講演の聴講をしているマネジャーに「あなたの仕事は何か」と聞いて、いろいろ答えさせる。圧倒的に「成果を挙げること」という答えが多いところで、おもむろに、「そうではないでしょう。そのような成果を挙げる人を育てたり、成果が出るように動機付けをすることが仕事なのではないですか」と指摘するというのだ。今、聞けば当たり前だと思う人も少なくないと思うが、数十年前の話だ。今、主流になりつつあるマネジメントの考え方を作った一場面として語り継がれている。
◆プロジェクトマネジャーはこの現実を受け入れられない。
プロジェクトマネジャーには、この考えを素直に受け入れることができない人が結構多い。もちろん、プロジェクトマネジャーが率先して、成果を生み出すための直接的な作業に参加しているケースは格段に少なくなっている。ジョブスの信仰者くらいかもしれない(笑)。
問題は作業ではなく、計画である。計画を作るときに、プロジェクトマネジャーは、本当に人を使って成果を出すことを前提に作っているかという話だ。この議論をするに当たって、一つ、横道を潰しておく。日本独自の任せ方として、丸投げというやり方があるが、これは認めないことにする。
例えば、スケジュールをひくときに、メンバーの一人一人の顔や、外注先の企業の能力などを頭に思い浮かべてスケジュールを作っている人は少なくない。もちろん、納期や中間成果を求められる時期の制約があるので、そんなこともやる意味はないというご意見もあると思うが、それはドラッカー博士のいうように、人を使って成果を出すという観点からは乱暴過ぎるような気がする。
それから、もう一つこの指摘をしたい背景には、ここにプロジェクトマネジャーとして乗り越えないといけない壁があるということだ。その壁は「自分の成果を形にしないと気がすまない」という壁である。
プロジェクトマネジャーのスキルを議論する際に、レベルが高くなればなるほど、ヒューマンスキルのようなソフトマネジメントスキルの重要性が高くなるというのは一般的な認識になってきた。ということは、プロジェクトマネジメントのレベルが高くなればなるほど、成果が形に見えにくくなるということなのだ。
◆メンバーのときからの意識改革
特に、このときに、妨げになるのは、エンジニア時代からの「マネジメントは成果にコミットしていない」という発想だ。後輩を育てる意味では、少し長い目で見て、メンバーのときからマネジメントは成果にコミットしていることを指導していくことが必要であるが、自画自賛という日本人は品がよくないと感じるパターンになるので腰が引けている人が多い。勇気を持ってそのような育成をすべきだ。
その際にポイントになるのは、製造業やITのようなモノ作り系の会社に入り、「直接作業」と「間接作業」という会計上の区分をすり込まれてくると、どうしても間接作業に対する評価が低くなる。しかし、組織が間接作業なしでは動かないように、業務もマネジメントという間接業務なしでも動かないのだ。
このことを明確に認識させると同時に、あまり、直接作業と間接作業の区別を強調せず、みんなで仕事をしているという発想を持たせることが重要だろう。
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