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2008年6月23日 (月)

【補助線】ステークホルダ4つのタイプ

極論かもしれないが、プロジェクト(マネジメント)への権限委譲は、プロジェクトマネジャーの職位(職制)を基準にして議論される現実がある以上、びっくりするようなプロジェクトへの権限委譲が行われることは極めて珍しい。プロジェクトマネジャーが係長級であれば係長の権限+α、部長であれば、部長の権限+αしか権限は与えられないことが圧倒的に多い。

というよりも、組織側もバカではないので、そのプロジェクトを実施するには、だいたいどういう組織上の権限が必要かを見極め、プロジェクトマネジャーを決めているのが現実だろう。したがって、仮に課長級のプロジェクトマネジャーを想定したルールがあったとしても、部長級のひとがプロジェクトマネジャーになった場合には、部長としての権限も巧みに使いながらプロジェクトを動かしていくのが普通である。

そのように考えてみると、特に職位の低いプロジェクトマネジャーの場合には、ステークホルダへの対応がプロジェクトの成否の分かれ目になることが多い。平たくいえば、職位の高いステークホルダを如何にうまく使うか、これがステークホルダマネジメントの本質だといえよう。

さて、そのステークホルダへの対処だが、タイプによってよく考えていく必要がある。ステークホルダの分類は、プロジェクトへの影響で分類することが多いが、ここでは少し、違った視点からの分類を試みてみたい。

プロジェクトへの関心とプロジェクトへの支援行動に注目して、ステークホルダの分類をする。すると、ステークホルダは4つのタイプに分けることができる。

最初は関心が高くて支援も十分に行ってくれるステークホルダ。これは「ステークホルダの鏡」である。このタイプに対しては、「味方になる」という前提で付き合うのがよい。

そのためには正攻法で行くのに限る。必要に応じてコミュニケーションをとり、できるだけ正直に状況を報告し、相談をする。また、プロジェクトマネジメント活動の中で、スポンサーとしての活動は任せてしまうのがよい。

上司がこのタイプであれば理想なのだが、現実にはそううまくいかないので、このようなステークホルダを探し出す努力も必要だろう。

二番目は関心は高いが、支援行動が少ないステークホルダ。いわゆる、「口だけ出す」というタイプである。このタイプのステークホルダは2つの意味で要注意である。ひとつは評論家的にいろいろなことを言う。職位が上であれば全く無視するのは難しい。二つ目は調子のいいことを言ってもやらない。このタイプはヒューマンスキルに自身のないプロジェクトマネジャーは避けて通った方がよいだろう。ヒューマンスキルに覚えのあるプロジェクトマネジャーであれば毒を食らわば皿までといった使い方もある。組織の中で口だけだすタイプの人間の共通的な特徴はプライドが高いことだ。というより、プライドが高いので失敗したくないので、やらないといった方がよいだろう。この点を徹底的についていくとよい。

ただし、言っていることの10%でも実際にやってくれれば儲けものというくらいの感覚でないとプロジェクトにとっては大きなリスク源になってしまうので、注意!

三番目は関心は高くないが、支援行動をするタイプ。このタイプはあまり見かけないが、たとえば、事業部の重点プロジェクトなどではこのタイプのステークホルダが現れることがままある。要するに、プロジェクトはどうでもいいのだが、自身の上司への体面を保つために支援をしているのだ。このタイプのステークホルダはプロジェクトが支援を必要としているかどうかよりは、自分のできることをやるタイプが多い。「ヒラメ」タイプである。

このタイプのステークホルダをどう使えるかが、ステークホルダマネジメントのポイントになるのではないかと思う。悪く言えば、自分のことしか考えないし、上だけを見ているのだが、逆にいえば、プロジェクトを支援することが自分のためだと思えば労を惜しまないひとが多いし、組織上層部に対する覚えもめでたいし、ある意味組織を動かす方法も知っている。このタイプを使わない手はない。彼にとって、このプロジェクトの成功がいかにメリットのあることかを常にインプットしていこう。

最後は関心も持たず、また、目立った支援行動もしないタイプ。頼まれて仕方ないときにだけ、支援をする。いわゆる「丸投げ」タイプである。このタイプとつきあうときに重要なことは期待しないことだ。受動的な性格のひとが多いので、持っていき方を間違えなければ、戦力になる。このタイプも意外とプライドの高いひとが多いので、プライドをくすぐるような持って行き方をするのがよいだろう。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。