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2008年4月 7日 (月)

【補助線】「顧客が満足する」のか、「顧客を満足させる」のか

◆プロジェクトマネジメントはディライトを目指す

プロジェクトマネジメントを競争力強化のために導入したのだとすれば、目指すものは極めて明確だ。顧客満足ではなく、カスタマーディライトである。追って説明していくが、プロジェクトマネジメントの目的から展開していくマネジメントの考え方はディライトを実現するために最適であるといってもよい。

この議論をする前に、前回定義した顧客満足について、もう少し、深堀しておきたい。

◆「顧客が満足する」のか、「顧客を満足させる」のか

品質マネジメントにおける顧客満足活動というのは「顧客を満足させる」ことである。顧客を満足させるというのはどこまでいってもサービスや商品の「提供者の視点」での活動である。品質マネジメントにおける顧客満足は基本的に提供者の視点からの品質の一要素であるので、これはある意味、当然のことだ。

極論すれば、どれだけ満足するかについては顧客の「勝手」であり、提供者側はできるだけよいものを提供するように努力する。「結果」として顧客が満足するということだ。ここで「よいもの」の指標の一つに顧客がどれだけ満足しているかがあるが、それは、約束した機能が提供されているとか、約束した性能が実現されているといった品質指標の一つでしかない。

つまり、「顧客が満足する」ものを提供することを目的とする活動ではない。

一方で、顧客満足というのは、顧客を満足させることではない。「顧客が満足する」ことである。まず、ここの意識を変える必要がある。そのためには、「顧客の立場」で考えることが重要だ。たとえ品質であっても、顧客の立場に立った品質を作りこんでいかなくてはならない。

◆品質絶対は思考停止

以前、

品質絶対は思考停止

という記事を書いたが、この話はまさにそうだ。

ベンダー側からみた最高の品質は欠陥ゼロ(ゼロディフェクト)である。しかし、顧客が本当にそれを求めているかどうかは別である。これは納期とのトレードオフとか、製品原価とのトレードオフといったプロジェクト品質の問題を言っているわけではない。顧客はベンダーの考える品質に関心のないと言った方が正確だろう。顧客の立場からの品質は調達している製品により顧客自身の提供するサービスや商品の品質が高くなることである。調達する製品の品質がよかろうと悪かろうと関心がない。

ここを掛け違えて、顧客に提供する製品の品質レベルを決めてもらっているようなベンダーが少なくないが、そのようなベンダーは永遠に顧客の要求を正しく把握して、提供することなどできないだろう。それを行う唯一の方法は顧客の立場で考えることだけだからだ。

プロジェクト品質の議論では、ここにさらに、サービス要求が絡んでくる。つまり、納期だとか、原価、あるいは、コミュニケーション、ライフサイクルマネジメントなどである。そうすると、ますます、顧客が満足するのは何が満たされたときかを考えることが重要さを持ってくる。

◆何のためのプロジェクトマネジメントか?

多くの組織は「顧客を満足させる」ためにプロジェクトマネジメントを行っているが、これではディライトを目指すプロジェクトマネジメントとしては不十分である。ディライトを目指すためには「顧客が満足する」ことを目的としたプロジェクトマネジメントを行う必要がある。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。