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2007年12月 5日 (水)

【補助線】プロジェクトマネジャーの現場力

◆昔の日本企業の現場は本当に強かったのか?

「現場力」という言葉がある。正確な定義があるわけではないと思うが、「現場が強い」、「現場で会社が成り立っている」などの言霊のある言葉だ。

戦後の高度成長の中で、日本企業は一般的に現場力により成長してきたと認識されている。おそらくこれは、明確な戦略がない中で、現場が方向性を決め、それを次々に実行していくことにより、成長してきたことを指していると思われる。

この背景になるのが、「よいものを作れば売れる」という神話である。ここで、考えておかなくてはならないのは、高度成長期は本当に現場が強かったのかということだ。少なくともこの時代の日本人は勤勉だったし、工夫をする心にも富んでいた。これは間違いないと思う。その意味で現場が強いというのであれば、それは正しいだろう。この点については後でもう一度、触れたい。

◆戦略経営における現場力

その日本にも、戦略に基づく経営という考え方が取り入れられるようになってきたのは、おそらく90年代の前半である。この時期は、バブルの崩壊とともも、右肩上がりの成長も停滞し、それまでのようにみんなが同じことをやっていたのでは、全員が立ち行かなくなるという危機感がでてきた時期だ。まず、立ち上がったのは製造業だ。現在、エクセレントカンパニーの地位を確立している企業は間違いなくこの時代に戦略的な経営に移行している。そして、やはり、「強い現場」、「現場力」が成功のキーワードになっている企業が多い。今のエクセレントカンパニーの戦略の3大成功要因は、情報技術、金融技術と現場力だろう。そして、日本の企業は現場力を競争優位源泉とする企業が多い。

では、戦略経営の中での現場力とはなんだろうか?戦略経営の中では、高度成長期のような現場の自由度はない。その中で、現場力が強いとはどういうことか。

現場力は、「あるべき姿」=ビジョンに対して、策定された戦略を微調整しながら業務を進めていく能力である。あるいはこのために、現場で起こる問題(あるべき姿と現状のギャップ)を能動的に発見し、解決する力である。

◆リアルタイム経営のためにはプロジェクトの現場力が不可欠

戦略経営においては、戦略の精度を上げるためにだんだんモニタリングのスパンが短くなってくる。今は最低でも四半期で戦略を見直し、軌道修正をしている企業が多い。ただし、現実問題として考えると四半期というスパンが限界だろう。

そこで注目されているのが、プロジェクト経営とプロジェクトマネジメントなのだ。四半期より短いサイクルで戦略の修正をするためには、開発や販売などの業務をプロジェクト化し、現場としてのプロジェクトにその軌道修正の役割をゆだねるしかない。プロジェクトマネジメントの要素にはアカウンタビリティの確保があり、修正行動への介入は難しいとしてもモニタリングは可能であることも経営としては好都合である。現場の状況を見ながら、次のクオーターの戦略計画の微調整を行うことが可能になるからだ。

このように考えてみると、プロジェクトに要求されるのは、立ち上げ時の計画通りに行うことではない。自ら、プロジェクト環境を察知し、それに合わせてプロジェクトの計画を変えていくことである。この適応能力こそがプロジェクトマネジャーに求められる現場力である。

◆プロジェクトマネジャーに求められる現場力

では、現場力を持つためにプロジェクトマネジャーに求められるものは何か?以下の5つである。

(1)経営ビジョンの共有
(2)戦略の理解と把握
(3)戦略の計画への落とし込み
(4)ビジョンに照らし合わせた計画の問題点の発見
(5)計画調整による戦略の微調整

特にプロジェクトマネジャーの方にはよく考えてみてほしいのだが、これはある程度の経営的意思決定を行う仕事なのだ。

つまり、プロジェクトにおいてはプロジェクトのメンバーまで戦略実行の一端を担っているという意識が必要であり、メンバーにそれを指導していくのはいうまでもなくプロジェクトマネジャーの仕事である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。