【補助線】プロジェクトマネジメントのオーナーシップ
◆活動のオーナーシップという概念
前回まで、PMOマーケティングの話をしてきたが、この問題を議論するために不可欠な要素がプロジェクトマネジメントのオーナーシップである。財務、マーケティング、営業、エンジニアリング、製造など、会社の中で組織管理や製品プロセスで行われているさまざまな活動には、オーナーシップがある。財務であれば財務部門がオーナーシップであり、そのトップ(例えばCFO)がオーナーになる。マーケティングであれば、マーケティング部門がオーナーであり、そのトップ(例えば、マーケティング部長)がオーナーになっている。
オーナーシップは基本的にその分野の活動に対して、すべての権限を持つと同時に、すべての責任を負うことになる。その意味合いは、財務や、マーケティングなどのビジネスシステムやビジネスプロセスを構築し、そのシステムの運用やプロセスの実行に対して責任を持つということである。当然ながら、誤った運用や実行がされた場合には指導する義務が生じる。
◆日本でもこれからはオーナーシップの確立が不可欠になる
さて、米国の動向を見ていると、日本でもこれから、プロジェクトマネジメントも財務やマーケティングと同じようにオーナーシップが生じることが予想される。。つまり、オーナーシップが存在し、そのオーナーシップのもとに、権限と責任を持ってプロジェクトマネジメントの展開が行われるようになるだろう。オーナーシップを持つ部門はいうまでもなくプロジェクトマネジメントオフィスであるPMOである。
今、多くの企業でプロジェクトマネジメントの定着化・普及に苦労している理由のひとつはこのオーナーシップの欠如にあると思われる。PMOマーケティング以前の問題として、プロジェクトマネジメントの実施についてPMOが責任も権限も持たない。単なるプロジェクトの支援部門やプロセス標準部門として位置づけられ、プロジェクトマネジメントに関する社内における権限はプロジェクトマネジャーや組織マネジャーより小さいというのが一般的な姿である。
◆オーナーシップのないという現実
例えば、プロジェクトマネジメント標準の実施を求めたところで、例えば
・顧客が異なるやり方を求めている
・標準どおりのやり方をするには、スケジュール的にも厳しいし、納期的にも厳し
い
といった理屈がまかり通っている。こういう書き方をするとそんなことはないと思われるPMOの方も多いと思う。例えば、プロジェクト計画書は組織レビューの対象になっており、そこでは標準に則ったものが求められるという反論がありそうだ。
しかし、そのような組織でも、最終的な「プロジェクトマネジメント成果物」としての体裁は整えられるが、それが厳しく運用されている企業は決して多くない。たとえば、レビューはする。仮に、計画書の内容に問題があれば差し戻しがある(これもそんなに多くない)。ところが、計画書の記載方法に問題があっても指摘だけで、対応してくれで終わる。このような仕組みを持っているある企業の話だが、作業着手時に計画書の監査を実施したところ、作業着手前に計画書が組織レビューされており、指摘事項があったものの中のなんと95%が未対応で作業に着手していた。こんなものだ。これは本来許されるものではないが、上に述べた(実質的な)権限の問題で、プロジェクトマネジメントを実行することに対するオーナーシップがない状況になっているわけだ。
さて、では、このような現状を踏まえてどのようにオーナーシップを確立していけばよいのだろうか?この点については次回議論してみたい。
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