大河ドラマプロジェクト
7月7日に名古屋工業大学の公開講座「プロジェクトマネジメント:構想から実現へのロードマップ」でNHKのプロデューサの方の講義「プロジェクト大河ドラマ」でプロジェクトマネジメントの原点を再認識するような話を聞くことができた。ちなみに、来年の大河ドラマは「篤姫」だそうだ。
ドラマ制作のプロジェクトでは、
セット>照明>かつら、メイク、衣装>出演者スケジュール
という優先順位があるそうだ。今まで、なんとなくだが、ドラマは人(出演者)の都合を中心に作られるのだろうというイメージを持っていた。ところが全然違った。
この順位に従うということは、話の流れの通りにシーン撮影を行うわけではない。セットを組んでしまうと、話の流れや回に関係なく、そのシーンで撮れるものをすべてとるという。
役者のメンタリティというのはよくわからないが、こんなやり方でよく演技ができるなと疑問に思い、講座の後の懇親会で聞いたところ、「記録」という役がいるらしい。そして、各シーンで演技の状況だとか、ニュアンスだとかをきちんと記録して、関連シーンを撮る際に役者に伝えるのだという。
さらに、監督(ディレクター)は一人ではなく、1回1監督というわけでもないらしい。複数の監督が存在しており、シーンごとに監督が変わってもかまわないようなシステムになているらしい。恐ろしく合理化されている。過去の血がにじむようなスケジュール短縮&コストダウンの賜物だそうだ。
このように管理はプロジェクトというより、どちらかというとラインのイメージに近い。ところが作業そのものはこの上なく創造的なのだ。マネジメントを人の都合に合わせれば合わせるほど、合理性は小さくなる。なぜ、人の都合に合わせなくてはならないかというと、作業者がプロフェッショナルではないからだ。
なんとなく、テーラーの科学的管理の話を連想させる部分があるのだが、テーラーの話は管理される人間はノンプロフェッショナルである。プロフェッショナルとノンプロフェッショナルの違いは、内発的動機付けができるかどうかだと思う。ドラマようなマネジメントの中で仕事をするには、相当な内発的動機が必要だろう。
役者だけではなく、ディレクターも同じではないかと思える。
このシステムには、このプロフェッショナリズム以外に、もうひとつポイントがある。記録係の存在だ。ここが機能しないとこのシステムは成り立たない。これはプロジェクトでいえばPMOである。この両方が揃って初めて合理的なプロジェクトの運営ができる。
実は、このシステムにはもうひとつのポイントがある。マネジメントのツールである。この世界では、このマネジメントを1枚の紙でやるツールがある。「香盤」と呼ばれるシステムである。これについてはまた、別の機会にご紹介する。
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