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2007年5月28日 (月)

【補助線】「正しいプロジェクト」とは何か

重要なことは、正しいプロジェクトを正しく行うことだ。

このような認識が日々、強くなってきている。正しく行うというのはプロジェクトマネジメントをきちんとすることとイコールだと考えてよいだろう。では、正しいプロジェクトとは何か。

例えば、どう考えても無理なスケジュール目標(納期)を決めてしまえば、いくらプロジェクトマネジメントをきちんと実施してもプロジェクトは成功しないし、それはプロジェクトマネジメントの問題ではない。どう考えても赤字になるような金額で受注してくる場合も同じ話しだ。

つまり、プロジェクトの目的に対して、その目的を達成できる範囲で、実行可能な目標を設定したプロジェクトが正しいプロジェクトというわけである。

ちなみに、今までは、プロジェクトマネジメントがあまりきちんと行われておらず、プロジェクトの「正しくなさ」の責任もすべて現場(プロジェクトマネジメント)に転嫁されていたが、プロジェクトマネジメントの普及により、ここにきて、この転嫁ができなくなり、この問題を直視せざるを得なくなってきたという事情があることも忘れないでおきたい。

ところが、ちょっと考えてみると、この話は不可解な点があることがすぐに分かる。「なぜ、明らかに無理な納期を設定するのか」、「なぜ、最初からオーバーすると分かっているような予算を設定するのか」といった疑問が生じる。この理由はそんなに難しいものではない。

SIプロジェクトだと例えばこうなる。

「戦略計画達成のためにはこのお客さんからの受注を取ることは必須だ。他にも2社、引き合いをしている。うちとしては、多少、納期もお客さんの準備している予算も厳しいが、提案せざるを得ない。外注を駆使して乗り切ろう」

商品開発プロジェクトだと例えばこうなる。

「戦略計画達成のためには、この商品はこの時期までに上市をせざるを得ない。これより遅れると競合商品が出てきて、売上げ目標が変わってしまう。まだ、未解決の技術問題があるが、それはなんとかお金で解決しよう」

これから分かるように、「正しいプロジェクトを行う」ためには、戦略計画を達成するためのアプローチが大問題になってくる。例えば、上のSIの例であれば、「このプロジェクトは諦めよう。その分のリソースを他に転用して利益を作ろう」と考えることが必要である。

言い換えると、戦略計画達成のためには、どのプロジェクトをやるかが大きな問題になってくる。ただし、ここに、単に戦略計画達成の視点以外の要素が入ってくる。つまり、正しくないものを正しくする方法がある。それは組織としての生産性をあげることである。あるいは、技術力をあげることである。

プロジェクトレベルの生産性の向上はチームマネジメントなどで取り組んでいくが、組織レベルの生産性の向上は戦略課題である。戦略計画の実行に併せて、この戦略課題の解決によって、「正しいプロジェクトを行うこと」と、「正しく行うこと」のバランスが取れてくる。

これをわれわれは、「正しいプロジェクトを正しく行う」に加えて、「正しい組み合わせをする」といっている。

正しい「組み合わせ」ができてはじめて、「正しいプロジェクト」を立ち上げていくことが可能なのだ。このためのマネジメントが必要である。これがポートフォリオで取り組んで行きたい部分である。これを積み上げだけでやっていると、プロジェクトの優先順位が考慮することができない。

結果として戦略計画が達成できればいいじゃないかと考える人もいるかもしれない。これは間違い。リスクに対する配慮が足らない。

また、ここで、戦略そのものが上げ底である可能性もあるので、注意を要する。例えば、引き合いのある仕事をすべてとっても達成できないような戦略計画を作るケースだ。まあ、これはそもそも戦略計画とはいえないが、売上げ絶対時代の名残で今でもこのような経営計画を作っている組織は少なくない。これは論外。収益率を高めて、人を育てることという視点からもう一度、戦略の見直しをすべきである。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。