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2012年11月16日 (金)

【戦略ノート299】現場に不協和音を生じさせることはできるか

Kakusu◆ある遅延プロジェクト

現場で力を発揮しているリーダーは、現場に不協和音を生じさせるような意思決定ができないという指摘がある。今回はこの問題について考えてみたい。

あるコンサルの現場で、こんなことがあった。その会社では、エースと言われるプロジェクトマネジャーがプロジェクトが納期遅れを起こした。実はかなり早い段階でスケジュールを遅れがあったようで、プロジェクトマネジャーはそれを隠していた。しかし、プロジェクトマネジャーの上司に当たる担当部長に、顧客からプロジェクトの対応がおかしいという指摘があり、調査したところ、遅れが判明した。まあ、ここまではまれにある話だ。


◆プロジェクトマネジャーの言い分

そのプロジェクトが終了した後で部長はプロジェクトマネジャーに改めて不正な報告をした理由をヒヤリングをした。プロジェクトの失敗はプライドが許さないというような答えを予想していた部長だが、返ってきたのは、驚愕の言い訳だった。

「自分はスケジュールが遅れていたことには気づいていた。しかし、納期に間に合わないことが分かると、現場の士気が下がるので、プロジェクトには周知していない。リーダーにも教えていないし、上位組織にも伝えたくなかった。」

呆れた部長は、なぜ、現場の士気が下がるのか。逆に発奮するのではないかと尋ねたところ、またしても驚愕の回答。

「パフォーマンスの悪いメンバーの仕事を別のメンバーに回せばいいのだが、それは他のメンバーが良く思わないのでできなかった。自分がやろうと思ったのだが、顧客が遅れに気づきだして、その対応に追われて出来なかった」

部長はまたまた、顧客は知っていたのに、自分は知らされていなかったことにびっくりしたという。

さらに、部長は最終的にどうするつもりだったのかと問いただしたところ、こともあろうに、「テスト結果を偽装し、リリース後のトラブル対応で対応するつもりだった」というあり得ない返事が返ってきた。


◆このエピソードの論点~進捗を誤魔化す

みなさんはこのエピソードを聞いてどう思っただろうか。このエピソードは、いくつかの論点を含んでいる。

最初は進捗を隠すことの是非だ。これは、多かれ少なかれ、やっているプロジェクトは多い。特に、スケジュール遅延のアロアンスを設定している場合、そこまでは隠してもいいと考えてしまう傾向がある。また、10%までいいのなら、11%なら許される範囲だろうと考えがちである。

最終的には顧客に対して責任を取るのは部長であるので、アロアンスの範囲内であろうとなかろうろ、部長に隠すことは論外であるというのは当然であるが、実はこの話には後日談がある。結果的にこのプロジェクトは年度をまたがった遅延となり、部の業績が悪化した。

このプロジェクトマネジャーは、現場の士気がといった訳の分からない理由で隠したといっているが、隠したらどういう影響が出てくるかよく分かっていない。子供が怒られたくないので、悪いことをしたのを隠すというレベルだ。事業計画に影響があることを理解していない。

現場が権力を持つと会社がつぶれるといってはばからない人がいるが、残念ながらこういう話を聞くとそうだなと思わないでもない。


◆メンバーへの責任転嫁と品質の粉飾

次に、責任をメンバーに押し付けている。自分がメンバーにいい顔して叱れないことを、メンバーの士気の問題とすり替えるというのリーダー失格である。さらに、ここで、自分で対応すれば何とかなると思っている。プレイングマネジャー的な役割を果たしているプロジェクトマネジャーだとしても、このような考え方はいかがなものだろうか。

そして、こともあろうに、隠した後始末を、品質の検査を粉飾してつけるつもりだったという。これは下手をすれば、訴訟ものである。


◆部下を叱れない上司

これだけのことを、現場で自分のできるという評価を崩したくないだけのためにしでかしたわけだ。

叱れば済む話だ。最近、昔のように上司が部下を叱れなくなっている。別の某外資系IT企業のプロジェクトで、進捗が遅れているメンバーに徹夜してでも間に合せろと指示したプロジェクトマネジャーが、社内のパワーハラスメントの委員会に訴えられて、懲罰を受けたという話を聞いた。こういう事例は極端だとしても、叱る場合には、叱ることによって自発的な行動を促さなくてはならない。よほど、叱り方に自信がないと、叱れないようになっており、部下の話をよく聞き、部下のペースで仕事をさせ、調整をすることが上司の仕事だという話は、どこの企業でもよく聞く。

結局、冒頭の指摘はそういう指摘なのだ。

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。