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2012年6月18日 (月)

【補助線】顧客から学ぶ

◆思い込みを捨てて、顧客から学べ

Kokyakuエリック・リース氏が、「リーン・スタートアップ」の中で、「思い込みを捨てて、顧客から学べ」と言っている。

「顧客の声を聞く」ことと、「顧客から学ぶ」ことはどう違うのか?

顧客から学ぶことの重要性を最初に指摘したのは、おそらく、ドラッカーである。ドラッカーは、仕事の目的や目標を決定するために

・顧客にとっての価値は何か

を明確にし、その上で、

・顧客から学ぶことは何か

を明確にするように指摘している。



◆顧客の価値を理解しているか

顧客の声を聞くこととの、顧客から学ぶことの違いは、ドラッカーのいうように顧客の価値を理解しているかどうかにある。顧客の価値を理解しないままに、顧客の声を聞くと、その声はミスリードになる可能性が高い。自分たちの思い込みで、自分たちの都合のいいように、顧客の声を理解することになるからだ。すべった商品、動かないシステムなどなど、その例は、枚挙に暇がない。

エリック・リース氏は面白いことを言っている。早い段階でユーザからいろいろな意見を聞くが、それをそのままシステムに反映させることはない。それが成功の秘訣だそうだ。これは、彼らが顧客の価値感を知った上で、顧客の声を理解して、顧客から学んでいるからに他ならない。思い込みを捨てるというのは、自分たちの価値感を捨てることを言っているのだ。


◆欲求とニーズ

顧客の声と顧客から学ぶことの違いを考えるヒントになるのは、欲求とニーズである。

欲求とニーズの区別がつかない人は少なくない。

顧客の声というのは、基本的に欲求である。こうしてほしい、ああしてほしい。これに対して、顧客から学ぶべきものはニーズであり、ニーズの実現方法である。

欲求とニーズは何が違うのか。欲求はしてほしいこと、あるいは欲しいものだ。ニーズは必要なこと、あるいは必要なものである。気をつけなくてはならないのは、欲求はニーズとは限らないことだ。これはある意味で人間の本性である。顧客の欲求を満たそうとすると、ガラパゴス商品ができてしまう。もっと正確にいえば、ガラパゴスは、顧客の欲求と、作り手のこだわりが化学反応したものである。

ビジネスはロジカルに行うものだから、生産財(ビジネスに使う道具)ではそんなことはありえないと思うかもしれないが、実際にはよくある。その典型が情報システムである。使われない機能がたくさんある。「こんなことをしたいから、こんな機能が欲しい」というロジックで作られたものが実に多い。こんな機能の部分はきちんと検討するのだが、「こんなことをしたい」の部分がジャストアイデアで欲求レベルであれば、機能そのものが欲求レベルになってしまうわけだ。


◆なぜ、顧客の要求が変わるのか

ITベンダーの人たちは、顧客の要求はよく変わる、顧客の要求をいちいち聞いていたら商売にならないという。この場合の要求というのは、欲求などか、ニーズなのか。欲求であれば、気分がかわれば、変わる。競合が持っているのをみれば、自分たちも「欲しく」なる。人間の欲などそんなものだ。しかし、ニーズはそんなに変わるものではない。欲求が人間の欲を背景にしているのと同じように、ニーズも背景にしているものがある。それは、戦略であり、ビジネスモデルである。

つまり、ニーズが変わるのは、、ビジネスの戦略が変わるといった大きな変化である。ITのプロジェクトで要求がよく変わるのは、顧客のヒヤリングから、顧客のニーズを発見できておらず、欲求を要求にしているからに他ならない。


◆顧客を理解するとは、ニーズを把握すること

ビジネス上で顧客を理解するというのは、ニーズを把握することである。それは、顧客の声からはできず、顧客の声(インタビュー)に基づく洞察が必要なのだ。つまり、顧客がどのような価値感を持ち、その価値感の元にどのような戦略を作り、さらには何を欲しがっているのか。これをすべて統合したところに、ニーズがある。

顧客から学ぶとは、顧客の声から、顧客のニーズを洞察することである。ドラッカーが顧客から学ぶものは何かといっているのは、洞察をするのに必要なものは何かということである。



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コメント

要求とニーズを区別することで、こんなにもすっきりとするものなのですね..

「ITのプロジェクトで要求がよく変わるのは、顧客のヒヤリングから、顧客のニーズを発見できておらず、欲求を要求にしているからに他ならない。」は耳が痛いなぁ(^^;)

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。