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2012年5月 1日 (火)

【戦略ノート285】プロジェクトの主体者は誰か

Collab1◆プロジェクトの主体者は誰か

PMBOK(R)はステークホルダーという考え方に特徴がある。一言でいえば、プロジェクト活動に対して、利害関係者はすべてステークホルダーという考え方である。プロジェクトスポンサーや、プロジェクトマネジャーやチームメンバーもすべてステークホルダーである。

ここで、利害関係とはそのプロジェクトを実施すること、あるいは、そのプロジェクトを実施した結果として生じる状態が特定の人にどのような影響を与えるかである。影響は業績に関わるものもあれば、個人のキャリアに関わるものもある。そのほかにもいろいろとあるだろう。

企業のステークホルダーという場合、経営活動の主体者たる経営陣はステークホルダーだとは考えない。あくまでも経営活動に対する利害関係者として、株主、消費者(顧客)、従業員、得意先、地域社会などが挙げられる。

両者を比較すると、一つ、疑問が浮かんでくる。それは、

プロジェクト活動の主体者は誰か

という疑問である。プロジェクトスポンサーなのか、プロジェクトマネジャーなのか、プロジェクトチームなのか。活動を中心に考えると、活動の主体者(活動の意思決定者)がステークホルダになることは本来の意味と反するので、少なくともステークホルダに名を連ねる人たちではないはずだ。


◆プロジェクトに主体者はいない

PMBOKに最初に触れたときに、どうもこの点が腑に落ちなかった。よく考えてみると、これがプロジェクト活動の本質だと言える。

プロジェクトに主体者はいない。

プロジェクトスポンサーやプロジェクトマネジャー、あるいは、メンバーも主体者ではない。プロジェクトスポンサーであれば、(プロジェクトを起こし、)プロジェクト憲章を作成し、プロジェクトの目的を決めるという役割がある。プロジェクトマネジャーには、目的を達成するための計画を作成し、計画通りにプロジェクトを進めていくという役割がある。メンバーには計画を実行し、成果物を作り出すという役割がある。


◆なぜ、プロジェクトに指揮命令系統はないのか

重要なことは、「プロジェクトとしては」、指揮命令系統はないということだ。プロジェクトとしてはと断っているのは、ライン組織としてプロジェクトを行う場合には、ライン組織の指揮命令系統が併用されることがあるからだ。

プロジェクトに指揮命令系統がないのは、明確な理由がある。これまでにやったことのない活動をやる、作ったことのないものを作るといった活動では、成果の評価はできても、やり方はわからず、本質的に指揮命令できないからだ。たとえば、品質問題を考えてみてほしい。工場のラインのように定型的な製品をつくるのであれば、品質はシックスシグマというレベルで担保できる。しかし、非定型な製品であれば、品質レビューにも限界がある。現に、どのような分野でもプロジェクトの品質問題は多い。このときに、品質の差を生むのは、メンバーの品質における自律性である。

プロジェクトマネジャー(あるいはプロジェクトスポンサー)をトップとする指揮命令系統によってプロジェクトを進めていくというのは正しくない認識である。メンバーの分担範囲への取り組み方を指示する人はいない。極論すれば、メンバーが新入社員であっても、メンバーが決めなくてはならない。これがプロジェクトの原則である。

プロジェクトの主体者は指揮命令系統のトップの人たちである。したがって、プロジェクトにはそういう存在はない。では、そもそも、どういう活動なのか。


◆プロジェクトはステークホルダのコラボレーション活動である

プロジェクトを中心に(あるいは、プロジェクト活動の中で)、目的を達成するためにコラボレーションをする活動がプロジェクトである。

言い換えると、プロジェクトという活動は、プロジェクトを承認した経営者から、メンバーまで、すべてが当事者になるという前提の活動である。もちろん、コミットする時間は違うが、当事者でなくてはならない。それだけではなく、顧客やユーザ、あるいはベンダーも当事者であることが求められる。

プロジェクトマネジメントの方法を見ていると、この前提を無視した方向に進んでいるなと感じるケースが多い。顧客やベンダーといった外部を除いたとしても、この前提を実現していくことは難しいからだ。

しかし、そろそろ、この前提に立ち返り、プロジェクトマネジメントをどうすべきかという議論を超えて、プロジェクトをどのように運営すべきかという議論を尽し、プロジェクトの運用に適した風土の構築が必要になってきているのではないだろうか。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。