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2011年11月11日 (金)

【PM養成マガジン:1000号】<特別編集>リーダーとしてのプロジェクトマネジャー

1000-oiwai

PM養成マガジン編集長の好川哲人です。

いよいよ、1000号です。創刊は2002年4月ですので、足掛け、9年と7ヶ月ということになります。創刊号の記事は戦略ノートでした。第1話のタイトルは「プロジェクトマネジメントなくして企業の成長なし」。

プロジェクトマネジメントなくして企業の成長なし

こんな文で始まります。

===
プロジェクトマネジメントはエンジニアリングなどの場面で,作業をスムーズに進めるための手段として発達.普及してきた.しかし,ここにきて,経営との関係が注目されるようになってきている.
===

今、読んでみますと、メルマガらしくなく、それまでずっと継続していた技術雑誌記事の書き方で読みにくく感じますが、内容は今、言っていることとそんなに大きく変わっていませんね。

本号は1000号記念ということで、この10年間のプロジェクトマネジメントの変化を振り返り、これから変わっていくだろうことを考え、どのように対処していくべきかを考察してみたいと思います。


◆10年前と変わったこと

10年前と比べるとプロジェクトマネジメントには大きく変わった点が2点あるように思います。

一つは、プロジェクトマネジメントの体制です。当時は、(日本では)権限がなく責任だけ持たされたプロジェクトマネジャーが、孤軍奮闘しているイメージでした。逆にいえば、過酷なプロジェクトをマネジメントできるヒーロー型のプロジェクトマネジャーが求められていたわけです。

このような考えは時代遅れになりつつあります。プロジェクトマネジメント活動は(実質的な意味で)組織で体制を作って取り組むものであり、かつ、プロジェクトマネジメントワークもプロジェクトマネジャーを中心にし、プロジェクトスポンサーやPMOがチームを組んで実施するものであるという認識が一般的になってきました。

そして、プロジェクトマネジャーの役割は、プロジェクトの進め方に関する意思決定をすること、そして、決定したことを、組織やプロジェクトマネジメントチームをうまく活用して、実行していくことにあります。

二つ目は、フレームワークの変化です。プロジェクトマネジメントはプロジェクトの目標を達成するためのオペレーションのマネジメントとして位置付けられます。その意味で、与えられた目標を実現できるようなフレームワークが準備されてきました。それが、PMIのPMBOK(R)であり、IPMAのICB(R)だったりしたわけです。

これらのツールの中では、経営的な成果を上げることはプロジェクトマネジメントの責任ではなく、上位マネジメントの責任となっていました。


◆世界中で革新性を評価されたP2M

当時、日本では、(財)エンジニアリング振興協会が中心になってP2Mという新しいプロジェクトマネジメントの標準を作っていました。2001年に発表され、2002年には、PMAJが引き継ぎ、現在も発展させています。

P2Mが革新的だったところは、プロジェクトを経営活動だと捉え、マネジメントのフレームワークを準備したところにあります。この考え方は、当時、特に欧米でたいへん評価されたそうです。

そして、今、PMIには、PMBOKに加えて、プログラムマネジメント標準、ポートフォリオマネジメント標準という、経営の意思決定をプログラムやプロジェクトに落とし、実行していく仕組みが整ってきました。また、ICBにもプログラムマネジメントが取り入れられました。

このように、P2Mが作った、「プロジェクトマネジメントは経営活動のための手段」というコンセプトがグローバルに認知され、実践するためのフレームワークがいろいろとできてきたわけです。

この動きと、一番目に述べたプロジェクトマネジメントの体制の変化が密接に関連していることはいうまでもありません。

先日、「管理者のためのプロジェクト管理入門」というセミナーに参加された方が、PMの勉強のために戦略ノートをすべて読んでくださったそうです。そして、1回目と今を比べるとだいぶ変わっていますねという感想をくださいました。

「プロジェクトをビジネスのエンジンにする」

というコンセプトは全く変わっていませんが、コンセプト実現のための方法は、何度か大きく確かに変わっているようです。


◆マネジメントとリーダーシップ

このコンセプトを実現するためには、今後変わらなくてはならない大きな問題があります。これまであまり明確に議論してこなかったのですが、プロジェクトマネジャーは、マネジャーであるべきなのか、ビジネスリーダーであるべきなのかという問題で
す。

実は、この問題は、メルマガ創刊の翌年に、初めて行った読者向けのセミナーに参加されたある方から提起された問題で、10年間、抱え続けてきた問題ということになります。この問題はかなり厄介な問題で、そもそも、マネジメントとリーダーシップはどう違うのかというところから、諸説があり、その解釈によっても答えは変わってきます。

マネジメントとリーダーシップの関係については、ハーバードビジネススクールのジョン・コッター教授の説を取り入れています。ジョン・コッター教授の話を最初に書いたのは、2002年8月25日の戦略ノートの18話です。おそらく、この時期にこの議論を正面からしていたのは、コッター教授だけだったというのがその理由です。

その後も整理しながら何度も書いていますが、かいつまんでいえば、以下のような違いがあるというのがコッター教授の指摘です。

=====
リーダーシップや変革マネジメントの大家であるジョン・コッター教授によると、マネジメントとリーダーシップには以下のような違いがあるそうです。

マネジメント:現在のシステムを機能させ続けるために、複雑さに対処すること
リーダーシップ:現在のシステムをよりよくするために、変革を推し進めること

そしてこの活動の目的の違いは、手段の違いに現れます。

両方とも課題を設定して、課題を解決させることは同じです。

その手段として、マネジメントは計画と予算を目標として定め、その達成に向けて詳細なステップを決め、計画を完遂するために経営資源を割り当てます。これに対して、リーダーシップでは、針路を設定し、ビジョンを示すことにより、メンバーの心を統合していきます。このような(計画の)流儀の違いがあるわけです。

また、マネジメントが計画を確実に行うための手法はコントロールと問題解決であるのに対して、リーダーシップは動機づけと啓発によって計画を確実に行おうとします。

=====


◆プロジェクトの目的と目標の扱い方

プロジェクトを実施する場合には、QCDS(品質、コスト、納期、スコープ)の目標を設定し、プロジェクトという完結した世界を作ってしまう傾向があります。目標設定をして、その目標が達成できれば、そのプロジェクトは成功したと「見做す」わけです。

言い換えると、目標設定をしてプロジェクトマネジャーを任命し、プロジェクトマネジャーは与えられた仕組みの中で、その目標を達成することを期待されます。目標達成のためのマネジメントがプロジェクトマネジメントです。

ここで考えなくてはならないのは、QCDSの目標は、組織がプロジェクトでしたいこと(目的)のための仮説だということです。

たとえば、何か商品を開発することを考えてみましょう。組織は販売目標(目的)と投資額(予算)を決めて商品を開発します。

そして、予算の範囲内で、販売目標を達成できるような仕様(品質)、製造原価、発売時期を決めます。これで、開発プロジェクトの目標とすべきQCDSが決まってきますが、あくまでも仮説です。決められたCQDS通りに開発しても、販売目標が達成できる保証はありません。また、商品を発売するまでの間にビジネスの環境が変わってしまう可能性もあります。このように上位組織が描いているシナリオ通りに目的が達成できるかどうかは分からないのが普通です。

そこで、プロジェクトマネジメントは設定された目標(QCDS)の達成だけでいいのか、あるいは、その先にある目標の達成によって期待される変化(売り上げ)まで考えるべきなのかという問題があります。

プロジェクトマネジャーはこの問題にどのように対処すべきなのでしょうか?


◆米国流はプロジェクトガバナンス

米国的な考え方は、ガバナンスを重視する考え方です。ガバナンスが健全な限りにおいて、プロジェクトは上位組織に承認されたQCDSさえ達成できればよく、あとは上位組織の問題だと考えます。裏返せば、目的の実現のために、突然QCDSの目標を変えるということもあり得るわけです。

そのかわり、QCDSが達成できたのに、商品が売れなければ、プロジェクトスポンサーは責任を問われます。その意味で、この考え方は権限と責任が完結しています。下手に現場が仕様に口出しをするとガバナンスの問題として別の問題に発展する可能性もあります。

日本でもこのような仕組みづくりをしようとしていますが、なかなか、うまく行っていません。いろいろな理由がありますが、QCDSが達成できたのに商品が売れない場合、連帯責任だと考える風土があることが一番の原因だと思われます。

日本型経営の一つの特徴に、ブルーカラーのホワイトカラー化というのがありますが、極端にいえば、現場の担当者も事業部長もプロジェクトの結果に対して対等な責任を持つという風土があります。実際に、失敗プロジェクトの責任をすべてプロジェクトマネジャーに押し付けて終わっているようなケースをよく見かけます。承認行為すら意味が明確になっていない組織は多く、仕方ないことなのかもしれません。このような風土の中では、プロジェクトマネジメントをQCDSの目標達成で完結することは必ずしも合理的とはいえません。

ある意味で、組織の目的を実現するのも、プロジェクトだからです。目標設定が組織の目的実現のために不適切だと思うのであれば、プロジェクトと組織が責任を持って対話をし、お互いに納得できるところに持ち込むべきなのです。これが日本企業の現場力といわれるものです。

そのためには、現実をもっともよく知っているプロジェクトメンバーの一人一人が、組織の目的を実現できるように「考えて動く」ことが必要です。そして、プロジェクトマネジャーには、そのようなチームを作ることが求められます。

つまり、リーダーシップが求められるわけです。


◆ビジネスリーダーとしてのプロジェクトマネジャー

このように考えてみると、プロジェクトマネジャーは単なる目標達成のマネジメントをするだけの人ではなく、ビジネスリーダーであることが不可欠です。

ちょっと脱線しますが、欧米の企業にはプロジェクトマネジメント部門を設置している会社がよくあります。プロジェクトマネジメントにオーナーシップを持たせるにはもっとも合理的な方法で、日本企業でもこのような体制を取っているところがあります。ところが、日本ではあまり、評判がよくありません。日本では、プロジェクトマネジャーがビジネスリーダーであることを求めているためだと思われます。

PM養成マガジンで3~4年前に、「一つ上のプロマネ。」というコンセプト提案をしたことがあります。残念ながら、あまり影響を与えることはできませんでしたが、1000号アンケートのアンケートで、印象に残った記事の中にこれを挙げてくださった方が3名いらっしゃいました。「一つ上のプロマネ。」の一つ上とは、ビジネスリーダーであることです。つまり、基本にビジネスリーダーとしての立ち位置があり、プロジェクトマネジャーというロールでプロジェクトマネジメントをしていくことです。

意外と気が付いていない人が多いと思うのですが、ビジネスリーダーに立ち位置をおくことで、プロジェクトマネジメントそのものが変わってきます。重視するものが、QCDSからプロジェクトの目的に変わるからです。

たとえば、プロジェクトマネジメントの基本中の基本に、プロジェクトではワークパッケージまでを管理し、ワークパッケージの実行についてはメンバーに権限委譲するという考え方があります。しかし、実際にはプロジェクトのスケジュールが厳しいといった理由でワークパッケージの実行も管理しているケースがよく見受けられます。一種のマイクロマネジメントですが、こんなマネジメントをしていたら、プロジェクトマネジャーは本来の任務を果たすことはできなくなります。

この問題の本質は権限委譲とか、メンバーのスキル不足にあるのではなく、方針が浸透していないこと、あるいは、プロジェクトの背景をメンバーが理解できていないことにあります。この問題で、ビジネスリーダーとしての視座を持つということは、たとえば、

・プロジェクトの意義をメンバーに理解させ、動機づけする
・自分の方針を浸透させた上で、ワークパッケージの実行方法をメンバーに任せる
・QCDの問題が起これば、目的実現の視点からプロジェクト全体の調整を行う

といった活動をすることを意味しています。

このように、ビジネスリーダーの自覚を持ち、リーダーシップを発揮することで、メンバーをエンパワーメントし、自らのマネジメントを本来の姿にすることができるわけです。

このようなロール(役割)を

「プロジェクトリーダー」

と呼びたいと思います。プロジェクトリーダーが意味するのは、技術リーダーかもしれませんし、プロジェクトマネジャーかもしれません。場合によってはプロジェクトスポンサーだというプロジェクトもあるでしょう。プロジェクトの規模や性格によって異なってきますが、共通しているのは、上に述べましたように、ビジネスリーダーとして発想し、プロジェクトマネジメントを駆使することによって、現実(リソース)との折り合いを付けながらアイデアを実現していくことです。

PM養成マガジンでは今後、プロジェクトリーダーのあり方を追求していきます。コンセプトは「マネジメントとリーダーシップの調和(ハーモニー)」です。


◆セミナーをやります

PMstyleを始めてから、メルマガのセミナーは控えてきましたが、来年は「1年間限定」でメルマガセミナーを復活する計画です。1年で6回やろうと思っています。

その前に、プレイベントとして、1000号記念のセミナーをやります。

10周年記念は、アンケートでもテーマ募集しましたし、何度も話題にしていましたが、こちらは今まで1回も話題にしていません。何人もから、1000回記念セミナーはやらないのかという突っ込みに耐え、本号で初告知です!

【PM養成マガジン1000号記念セミナー:プレ10周年イベント】

PM養成マガジン1000号記念セミナーでは、ビジネスリーダーという視座からプロジェクトマネジメントを見直し、あり方について読者の方と対話ができればと思っています。

詳細の確認、申し込みはこちらのページからお願いします。
リーダーとしてのプロジェクトマネジャー~プロジェクトマネジメント再入門

なお、終了後、実費で懇親会をやりたいと思いますので、こちらもぜひ、ご参加ください。


【PM養成マガジン10周年記念セミナー】

さて、来年予定している10周年ですが、また、完全に固まっていませんが、一応、以下のようなテーマで固まりつつあります。

[1]ゲームストーミングとプロジェクトマネジメント
[2]オープンリーダーシップとプロジェクトマネジメント
[3]システム思考とプロジェクトマネジメント
[4]リフレクションとプロジェクトマネジメント
[5]デザイン思考とプロジェクトマネジメント
あるいはダイバーシティマネジメント(テーマ不確定)
[6]ユーザ主体開発とプロジェクトマネジメント

の6テーマです。このうち、4テーマはスピーカーも決まりました。日程と内容は全体として調整しますので、しばらくお待ちください。

[1]が初回で

■セミナーテーマ: ゲームストーミングによるプロジェクト活性手法
■日時:2012年2月11日 13:30-16:30
■場所:品川(予定)

です。以下、4月、6月、8月、10月、12月の予定です。

現在、鋭意準備中で、12月から、他の5講座と一緒に申し込みができるようにする予定です。お楽しみに!

(好川哲人)

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。