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2011年7月24日 (日)

【補助線】アナログ放送の終了日にプロジェクトXについて考えた

◆テレビの紆余曲折

今日でアナログ放送は終了。歴史的な日だ。

テレビで、いろいろと回顧特集をやっていた。その中で、たかじんの「そこまで言って委員会」で、田原総一郎さんや、池田信夫さんがでてきて、レギュラーメンバーと面白い議論をしていた。口火を切ったのは、田原氏。田原氏が社会に出た時代のテレビというのは、新聞社を落ち、出版社を落ち、でもマスコミにという人がテレビに行った。格も低く、テレビだから(仕方ない)という理由で何でも許された。イロモノだ。そういう時代だったそうだ。

池田信夫さんの時代は、テレビは根付き、よい人材が入ってくるようになってきた。そして、テレビは全盛期を迎える。特に、NHKはアカデミックな人たちも含めて、出演がステータスになったそうだ。


◆プロジェクトX

そのNHKで、NHKでしかできないなと思う番組の一つがプロジェクトXである。テレビ番組として極めて秀逸だと思う。池田信夫さんの話と照らし合わせると、テレビに人材が入っていった時代の番組だということになる、。

プロジェクトマネジメントの基本」のオープニングは、プロジェクトXのカップヌードルの話を紹介し、プロジェクトやプロジェクトマネジメントのあり方の議論に展開している。

プロジェクトマネジメントの立場からは、プロジェクトXの多くのストーリーはプロジェクトマネジメントをちゃんとしていたら、もう少し違っただろうという話しになる。この意見には多少違和感がある。

たとえば、カップヌードルが開発されたのは1970年。プロジェクトマネジメントをやっている人が大好きな「アポロ11号」が月面着陸したのが1969年。ついでに、いえば、PMIの設立されたのもこの年。

国内市場が飽和の兆しの見られたチキンラーメンを海外展開したいという戦略は妥当なものだと思われる。そして、失敗を通じて得た、丼の要らないラーメン(カップヌードル)の開発という戦略ゴールも妥当だ。


◆もし、プロジェクトXにマネジメントを適用していたら、、、

違和感があるのは、(プロジェクト)マネジメントを適用していたら、本当にこの戦略ゴールの設定をしていたのかという点だ。この状況で、おそらくリスクが少ない選択は、丼の代わりの器を見つけ、それに併せたラーメンの開発をすることだ。たとえば、スープカップで作れるサイズのラーメン。これは実際に、チキンラーメンの50周年の商品で作っている。まあ、これもタラレバの話だ。

ただ、マネジメントというのは、当面の問題を解決に全力を尽くす。逆説的にいえば、マネジメントがなく、リーダーシップに依存していたためにカップヌードルができたともいえる。まだまだ、経済も成長期にあったので、それでよかった。


◆イノベーションとマネジメントの両輪

その後、経済の成熟とともに、70年代後半から80年代にかけては、リーダーシップからマネジメントに主流が移っていく。プロジェクトマネジメントの普及もその一つである。90年代はまた、リーダーシップが復権してきたので、リーダーシップとマネジメントは揺れ動いているように思う。

そして、21世紀になってから、イノベーションが重視されるようになり、マネジメントだけでも、リーダーシップだけでもダメだという認識が強まってきた。イノベーションにおいては、リーダーがゴールを決め、マネジャーがそれを何とか実現する。ここで、リーダーとかマネジャーと言っているのはロールで、規模の大きいプロジェクトではリーダーとマネジャーは別であることが多いが、一般的なビジネスプロジェクトでは一人二役の方が一般的である。これがマネジメント2.0である。

プロジェクトXに適用するとすれば、大半はマネジメント2.0だろう。

さらに、この5年くらいは、「デザイン」が注目されている。デザインはリーダーシップとデザインの統合である。しかし、そこで求められるリーダーシップやマネジメントはオープンなものだ。これをマネジメント3.0と呼ぶ人がいる。プロジェクトXには、富士山のレーダーのようにこのタイプのマネジメントが必要なプロジェクトも少なくない。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。