PMO2.0のためのパフォーマンスコンサルティング入門(5)~パフォーマンスコンサルティングの問題解決プロセス(前)
◆これまでの振り返り
第3回にパフォーマンスコンサルティングにおける問題解決(改善)の視点として、
(1)ビジネスニーズ
(2)パフォーマンスニーズ
(3)能力ニーズ
(4)環境ニーズ
の4つがあるという話をした。また、第4回では、問題解決の視座として、
・プロセスレベル
・戦術レベル
・戦略レベル
の3つがありうるという話をした。
◆問題解決プロセス
パフォーマンスコンサルティングが有効な理由は、これらの問題解決の視点や視座を広く持っていることであるが、問題解決プロセスそのものが特に変わっているわけではない。
問題解決のプロセスは
STEP1:あるべき姿(ありたい姿)を明確にする
STEP2:現状とのギャップを分析する
STEP3:ギャップの原因を突き止める
STEP4:ギャップの原因を解消する適切なソリューションを選択する
という4ステップからなる戦略的な問題解決プロセスである。PMOにしろ、人材部門にしろ、スキルやリーダーシップ開発という呪縛から離れなれないのは、戦略的な人材育成は意識しても、問題解決まで視界が広がらないためである。
このステップと先に説明した視座・視点を組み合わせると、おおよそ、パフォーマンスコンサルティングにおける問題解決手順は次のようになる。
STEP1:あるべき姿
・ビジネス成果のあるべき姿
・パフォーマンスのあるべき姿
STEP2:ギャップ
・ビジネス成果のギャップ
・パフォーマンスのギャップ
STEP3:ギャップの原因
・能力に関する原因
・環境に関する原因
STEP4:
・能力に関するソリューション
・環境に関するソリューション
◆STEP1について
ビジネスの成果に対するあるべき姿は、基本的には戦略ゴールとして示される。さらに、個別のプログラムやプロジェクトのレベルでのあるべき姿は、プログラム憲章、プロジェクト憲章において規定される。これらがビジネスニーズになる。
また、パフォーマンスのあるべき姿は、ビジネス成果のあるべき姿から生まれる。これをどう描くかがパフォーマンスコンサルタントの腕である。
従来はこの役割はラインマネジャーが果たしていた。果たすことができていたのは、ある意味で単純だったからである。一つの例として、プロダクトアウトのビジネスを考えてみよう。戦略によってどのような商品展開をするかが決まり、それに応じてどのようなテクニカルスキルを持つ人材をどのくらい作ればよいかが決まる。そして、それを人材開発部に研修として依頼する。加えて大きな組織であれば、リーダーシップとか、コミュニケーションといったコアスキルのトレーニングは階層別研修として全員に行う。これで済んでいた。
ところが、複雑化・高度化するビジネスに対応するには、これでは済まなくなってきた。たとえば、
顧客(流通)とのコミュニケーションがうまく行かず、顧客満足度が低い
という問題を抱える事業部があったとしよう。コミュニケーションがうまく行かないというのは、原因なのか、結果なのかわからない。結果であれば、カスタマーボイスのトレーニングを一生懸命やっても、思うような成果は出ないだろう。
そこで、顧客との関係をどのようにしたいかというビジネス成果のあり方から考えて、それぞれの立場の人が、どのようなパフォーマンスができればよいかと考えていく必要があるのだ。これが、パフォーマンスのあるべき姿になる。
この分析は相当難しい。たとえば、IT企業のSI事業部が上のような問題を抱えていたとし、プロジェクトマネジメントのあるべき姿を想像してみてほしい。コミュニケーションを適切にするだけでは不十分だということはわかると思うが、では、何が必要かと考えると頭を悩ませることになる。たとえば
・確かな技術力
・迅速な行動力
・誠実さ
・・・
などいくらでも出てくる。その中から特に重要なものは何かと考えていくと、結局、戦略ゴールに戻らざるを得なくなる。顧客満足を高めるという戦略ゴールがあった場合に、それは持続的な取引が目的なのか、短期的な収益の増大が目的なのかによって、求められるパフォーマンスがかわり変わってくる。
にも関わらず、多くの人材育成プログラムでは、パフォーマンスに基づく人材像が全くと言ってよいくらいできていない。プロジェクトでいえば、百歩譲ってプロジェクトワークに従事する人たちはスキルでパフォーマンスのあるべき姿を表現できるかもしれない。しかし、チームリーダー(プレイングマネジャー)や、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネジャーになると、スキルだけでは表現できない。必ず、パフォーマンスのデザインが必要である。
少し、長くなってきたので、STEP2以降は次回にする。
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