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2011年5月23日 (月)

PMO2.0のためのパフォーマンスコンサルティング入門(2)~パフォーマンスコンサルティングと研修の違い

◆パフォーマンスコンサルティングの背景

前回は、パフォーマンスコンサルティングのさわりと、PMOがパフォーマンスコンサルティングを展開せよという主張をした。さっそく、いくつかのクライアント企業、特に研修をやらせていただいている企業でも話題になった。facebookでも何人からかコメントをもらった。大枠では共感するところが多かったようである。

ただ、この議論で研修との比較にどうしてこだわるかという意見もあった。確かに日本の現場の優秀さは研修による育成の成果とは言い難い部分がある。いわゆる「人創り」と呼ばれる現場密着型の活動で優秀な人材を育ててきたという過去がある。

これは的を得た指摘であるし、欧米でパフォーマンスコンサルティングという発想が出てきた背景の一つはそこにあると著者も考えている。しかし、そういう時代ではなくなったということだ。

一言でいえばそういう時代ではなくなった。最大の原因は成果主義だろう。二番目はリストラ。成果主義では仕事の中で人を育てるのは難しい。ただでさえ難しいのに、加えて人を減らしており、人を育てる余裕もない。

そのような経営環境では、人を育てるのはトレーニングに頼るしかない。しかし、前回も述べたように単純にトレーニングをしても人は育たない。ここが「パフォーマンスコンサルティング必要論」のスタート地点である。そして、パフォーマンスコンサルティングは人を育てることによりパフォーマンス上の問題を解決する方法である。

したがって、「いや、違う。まだ、うちの会社では、仕事の中で人を育てながら、かつ、競争力を持つ(=成果を出す)ことができている」という組織であれば、パフォーマンスコンサルティングなど必要はないし、本音を言えばそれが望ましい姿であるとも思う。


◆研修vsパフォーマンスコンサルティング

さて、前置きはそのくらいにし、今回の本題に入ろう。今回は研修と、パフォーマンスコンサルティングの差についてである。

前回の導入でお分かり頂けたと思うが、研修とパフォーマンスコンサルティングの根本的な違いは、ニーズの違いである。研修はいうまでもなく、従業員の学習ニーズを明確にしてニーズに対応する活動であるが、パフォーマンスコンサルティングはパフォーマンスニーズに応える活動である。

次にアウトプットだが、研修は学習プログラムがアウトプットになる。したがって、トレーニングそのものが目的になり、受講者がトレーニングを終えれば目的は達成されたことになる。これに対して、パフォーマンスコンサルティングはトレーニングは手段に過ぎない。目的は、パフォーマンスの変革、改善である。また、パフォーマンスモデルの作成やパフォーマンス改善の阻害要因を取り除くアドバイスもアウトプットになる。パフォーマンスモデルについては、次回、説明する。

三番目は実施者の責任。研修トレーナーの責任はあくまでも研修そのものである。多くの場合、多ければ多いほどよいという原理がある。これに対して、パフォーマンスコンサルタントは組織のマネジャー、あるいは他のステークホルダとのパートナーシップを築き、維持する責任がある。

四番目は評価。研修の評価はトレーニングに対する満足度と、トレーニング目標達成指標の達成度で行われるのが一般的である。これに対して、パフォーマンスコンサルティングでは、トレーニングであろうと、それ以外の施策であろうと、パフォーマンスの改善の費用対効果が評価指標になる。

最後が実は違いの中でもっとも重要な違いである。それは、組織目標との関連である。研修はあくまでもコストである。組織目標の達成と関連がないとはいわないが、現実にはほとんどないし、また、あってもきわめて限定的である。これに対して、パフォーマンスコンサルティングは、コストではあるが、それはたとえば品質管理のように組織活動に測定可能な成果をもたらし、組織目標と極めて関連の強い活動である。したがって、ベネフィットを生み出す活動である。


◆パフォーマンスコンサルタントに必要なスキル

このようなパフォーマンスコンサルティングを実践していくためには、パフォーマンスコンサルタントはどのようなスキルを持てばよいのだろうか?パフォーマンスコンサルタントの提唱者であるティナ・ロビンソンは以下の4つを上げている。

(1)ビジネスに関する知識
(2)人のパフォーマンスマネジメントに関する知識
(3)パートナーシップを築くスキル
(4)コンサルティングスキル

次回は、それぞれのついて詳しく説明する。

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PMO2.0のためのパフォーマンスコンサルティング入門
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第1回 PMO2.0はパフォーマンスコンサルティング部門を目指せ!
第2回 パフォーマンスコンサルティングと研修の違い
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。