【補助線】シンクロニシティ
◆カーズナーの「次世代プロジェクトマネジャー育成」セミナー
4月23日の金曜日にMIRの浦正樹ダイレクターとプロジェクト経営に関する情報交換ミーティングを行った。その中で、前日に行われたハロルド・カーズナー博士のセミナーの内容が話題になった。
プロジェクトマネジメントの将来
~次世代プロジェクトマネジャーを育成する~
主催は、ハロルド・カーズナー博士がSenior Executive Directorを務めるInternational Institute for Learning, Inc.(IIL)の日本のブランチ。
僕がプロジェクトマネジメントに関してもっとも大きな影響を受けた人を一人上げるとすればハロルド・カーズナー博士であり、22日のセミナーにも参加したかったくらいなので、浦さんからいろいろとセミナーの内容を聞いた。
◆シンクロニシティ
実は、この話になったのには僕がカーズナー博士のファンである以外の理由がある。22日のこのセミナーに参加できなかった理由でもあるのだが、この日、僕は僕で、「経営とプロジェクト」というセミナーをやっていた。正確にいうと、「第1期戦略実行リーダー養成講座」の説明会の中で、このタイトルのお話をしていた。
その資料を浦さんに見せたところ、一枚の図をめぐってガーズナー博士のセミナーの話になった。僕の作った図を見て、カーズナー博士が言っていたことがピンときたというのだ。その図とは、プロジェクトの成果の捉え方、プロジェクトの企画の方法を描いた図である。
簡単にいうと、プロジェクトの成果は「成果物(デリバブルズ)」と「価値」から構成される。開発すべきデリバブルズを決定するのは、顧客や組織の要求である。プロジェクトで創出すべき価値を決定するのは、戦略計画や創発としての戦略である。この両者において、成果物を開発することは価値創出の手段になる。そして、価値の創出は成果物の品質を高める。
プロジェクトの成功は成果物と価値の2つのバランスで決まるものであり、成果物のQCDだけで決まるものではない。
ということを意味している。
5年くらい前にカーズナー博士の話を聞いたときに、博士は、プロジェクトマネジャーのスキルとして、テクニカルスキル(PMBOKに代表されるオペレーションマネジメント)のスキルはせいぜい半分でよく、残り半分は戦略スキルである必要があるといっていた。5年前はこの言葉は非常に印象に残っており、活動の方向性になっている。
今回のセミナーでは、この比率がさらに上がり、90%のスキルは戦略スキルであると主張されていたとのこと。まさに、わが意を得る思いである。なんとうれしいシンクロニシティだろうか!
話が前後するが、では、戦略スキルをもって何をするかといったときに上の図になる。単に顧客や組織の要求を拾って成果物を開発し、対価を得るだけではなく、自らが組織の戦略を読み解き、あるいは、「意図せざる行動と学習の過程から生まれるパターン形成」を行う創発を実現し、新しい価値を加えていくことを実現するのが戦略スキルである。
◆プロジェクトマネジャーに必要なスキルの変化の背景
カーズナー博士の話は非常によくわかる。プロジェクトマネジャーのスタートは、オペレーションとしてのプロジェクトの管理である。ところが、90年代後半から、オペレーションにおいて戦略の重要性が増してきた。その主要原因になったのが、SCMである。SCMは単に現場のオペレーションマネジメントの問題ではなく、ライフサイクルを戦略的にマネジメントする手法である。当然、プロジェクトにも戦略的マネジメントが求められる。カーズナー博士は10年以上前からこのような指摘をしていた。この時代はプロジェクトマネジャーは、上位戦略を「意識して」与えられたプロジェクト課題(実行戦略)を実行するという仕事だった。実行戦略では、プロジェクトの目標とアプローチが与えられ、それに従って、オペレーションを管理することが求められた。
次に、ライフサイクルが短くなるにつれて、オペレーションに求められる戦略性が高まってきた。これが50%説のあたりだと思う。この時代では、戦略を読み解き、与えられた課題に対して、戦略に整合するような課題解決をすることを求められるようになっていた。つまり、プロジェクトの目標は与えられるが、その目標に対するアプローチは自分で戦略的な視点から考え、実行していく必要が生じてきた。日本では、今、このレベルにいると思われる。
さらに近年は経営環境の不確実性が高まってきた。これが90%説の背後にあると思う。経営環境の不確実性により、戦略実行もアジャイルな対応が求められるようになってきた。つまり、環境変化に合わせて、プロジェクトの課題そのものを決めることが求められるようになってきた。これが、カーズナー博士のいう「次世代のプロジェクトマネジャー」のイメージだと思われる。
これは、プロジェクトマネジャーのスキルアップが求められていることはもちろんだが、組織的にみれば、プロジェクトマネジメントを行う階層の変化も意味している。特に、日本ではなんだかんだといいながら、まだ年次管理の色合いが濃いので、特に考えておくべきポイントである。
◆次世代プロジェクトリーダーとしての戦略実行リーダー
PMstyleでは、このような戦略スキルを持つリーダーを「戦略実行リーダー」と呼び、カーズナー博士の示唆する次世代プロジェクトマネジャーのマネジャー像としていくことを提案している。あえてプロジェクトマネジャーという言葉を使っていないのは、プロジェクトマネジャーにはオペレーションマネジャーという色合いが濃くついているためだ。戦略実行マネジャーは、現行の役割でいえば、プロジェクトマネジャーであるケースもあれば、プログラムマネジャーであるケースもあるし、また、場合によってはプロジェクトスポンサーであるケースもありうる。
そして、「戦略実行リーダー」を育成するための講座を開講することになった。戦略実行マネジャーという次世代のプロジェクトマネジャーとして、今後活動していきたい人は、ぜひ参加を検討してほしい!半日×5回で戦略実行リーダーのスキルが学べる講座です。
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「第1期戦略リーダー養成講座」(全5回)
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第1回 戦略実行のマネジメント(2010年06月09日(水))
第2回 戦略実行リーダーの意思決定(2010年06月23日(水) )
第3回 プログラム/プロジェクトによる戦略実行(2010年07月07日(水) )
第4回 戦略実行を支える人材マネジメント(2010年07月21日(水) )
第5回 戦略実行を支えるコミュニケーション(2010年08月04日(火))
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→ http://www.pmstyle.biz/smn/strategy/managementlist.htm
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