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2010年1月27日 (水)

【補助線】プロジェクトマネジメントとプロジェクト管理

◆マネジャーとリーダーの違い

PM養成マガジンを始めたころに、「プロジェクト管理とプロジェクトマネジメントは違う」、「プロジェクトマネジャーがすべきことはプロジェクトマネジメントであってプロジェクト管理ではない」と言い続けてきた。それは言葉の遊びだと指摘されることも少なくなかったが、僕の中では明確な区別があった。そろそろ、区別を明確にしたいと思う。

これに関連する議論で、マネジャーとリーダーはどう違うかという議論がある。この議論は、古くから行われている。この議論のベースラインができたのは、ハーバード・ビジネススクールの名誉教授アブラハム・ザレズニック氏の論文
「マネジャーとリーダー:その似て非なる役割」
という論文だ。この論文はハーバードビジネスレビューに1977年に掲載され、当年のマッキンゼー賞を受賞し、大変有名な論文である。ザレズニック氏はマネジャーとリーダーはまったく別の人種であるとして、以下のような指摘をしている。

(1)目標の違い
【マネジャー】人間の欲求よりは仕事上の必要性から生じるため受動的に見える
【リーダー】能動的であり、個人の意志の下、積極的な態度で臨む。人々のイメージや期待を喚起し、何らかの欲求を明らかにし、目的に向かって決断することで、組織が進むべき進路を決定する

(2)仕事観の違い
【マネジャー】戦略を立案し、意志決定を下すため、人々とアイデアを結びつけ、問題解決を図る。問題解決においては矛盾する価値の間で妥協案が受け入れられるように、バランスを図る。
【リーダー】積年の問題に新しい方法を導入し、どのような選択があるのか議論する。

(3)人のつきあい方の違い
【マネジャー】進行中の案件のや意志決定プロセスにおける役割を果たすために他人と交わる
【リーダー】何らかのアイデアに興味を抱いているとき、本能的に、しかも深く感情移入して人間関係を築く

(4)人格特性の違い
【マネジャー】自らを秩序の維持者あるいは調整者と考える
【リーダー】自分が何者かについてどのような組織に帰属しているのか、どのような仕事の従事しているのかを全く意に介さない

マネジャーとリーダーは、マネジメントとリーダーシップと置き換えて読んでもいい。このあと、この議論は進展しているが、大きくは変わっていないように思う。おそらく、1980年には、マネジャーはマネジメントを行い、リーダーはリーダーシップを発揮することが期待されていた。


◆リーダーシップが求められるようになってきたマネジャー

今の時代は、リーダーに期待されるものは変わらないように思うが、マネジャーに求められるものは大きく変わっている。マネジメントに加えて、リーダーシップの発揮が求められるようになってきたのだ。それは、イノベーションであったり、あるいは、スピーディーに決めることであったりする。「プレイングマネジャー」という言葉があるが、プレイングマネジャーとは、「リーダーシップを発揮するマネジャー」のことである。プレイングマネジャーが主役になっていることがマネジャーの役割が変わってきていることを示す証拠だといえよう。その意味で、マネジメントという言葉も、単にPDCAを回す「マネジメント」ではなく、「決める」、「変える」を含んだ言葉として定着してきている。


◆プロジェクトのマネジメント

さて、このような背景があることを理解していただいた上で、プロジェクトにはどのようなマネジメントが必要かを考えてみよう。

まず、一つは、プロジェクトの実行戦略を立案し、プロジェクトの意志決定を下すため、メンバー・ステークホルダやアイデアを結びつけ、問題解決を図ることである。要するに、計画を作って、その計画に基づいてプロジェクトをコントロールしていく役割である。

ただし、これだけではなくリーダーシップも求められることが多い。問題に合理的な解決策がない場合には、リーダーとして自分の考えで、どのようにするかを決めなくてはプロジェクトは進まない。たとえば、これまでの経験に照らし合わせるとどう考えても納期が間に合わない。このときに、納期を延ばすのか、仕事の仕方を変えるのか、といったことは決めた上で、プロジェクトが一丸となってその決定を支えていくように導いて行かなくてはならない。

つまり、プロジェクトマネジメントは、単に、計画を作って進捗を管理するだけの役割ではなく、プロジェクトの進め方に関する意志決定をしたり、あるいはプロジェクトの中での仕事のやり方を変えるといったリーダーシップも必要である。このようなプロジェクトマネジメントを支えるリーダーシップは「プロジェクトリーダーシップ」と呼ばれる。


◆組織の立場からのプロジェクトのマネジメント

これに対して、事業管理、経営管理の立場からのプロジェクトの管理という仕事も、広義の「プロジェクトマネジメント」である。たとえば、「組織のプロジェクト実施目的とプロジェクトの実行状況が整合していることを管理する」、「プロジェクトの効果に見合った資源投入をする」、「プロジェクトの状況を把握し、状況に応じたリソースのマネジメントを行う」といったことである。

PMstyleでは、前者のプロジェクトマネジメントを「プロジェクトマネジメント」とよび、後者を「プロジェクト管理」と呼んでいる。そして、前者の実施者を「プロジェクトリーダー」、もしくは、「プロジェクトマネジャー」とよび、後者を「プロジェクト管理者」と呼んでいる。また、プロジェクトマネジメントとプロジェクト管理を併せたものを戦略的プロジェクトマネジメントと呼んでいる。

プロジェクトマネジャーとプロジェクトリーダーの違いは、マネジメントが中心か、リーダーシップが中心かによって分けている。組織の中でマネジャーとリーダーは上下関係として使われているケースがあるが、PMstyleでは対等で、プロジェクトのタイプによって適性があると考えている。上下関係があるのは、プロジェクト管理者とプロジェクトマネジャー、あるいはプロジェクトリーダーである。


◆戦略的プロジェクトマネジメントとは

最後に、プロジェクトマネジメントに(プロジェクト)リーダーシップが必要なように、管理にも「シップ」は必要である。それがプロジェクトスポンサーシップである。

以上をまとめると、

戦略的プロジェクトマネジメント
=プロジェクト管理(スポンサーシップ)+プロジェクトマネジメント(リーダーシップ)
という図式になる。

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好川哲人

技術士&MBA 技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。