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2009年11月 9日 (月)

【PMスタイル考】第2話:経営からのプロジェクトの眺め

◆基本知識

まず、言葉の定義から。各期の事業の計画を作るには、まず、経営ビジョンを作る。これは企業としてのあるべき姿、つまり、経営理念、事業領域、経営目標、事業構成、組織風土などから創り出される企業の将来の姿を示すことが目的である。

次に、経営戦略を創る。経営戦略とは、経営ビジョンに示すあるべき姿に企業を近づけるための方策(シナリオ)である。経営ビジョンを示し、経営戦略を策定するまでに一連の流れを経営計画と呼ぶことがある。

戦略が策定されると、戦略実行の段取りをする。ここで、戦略策定までは、ある程度長期、あるいは中期の話であることに注意をしておいてほしい。戦略実行の段取りも、まずは中期で行う。例えば、

・中期の経営目標
・事業展開の方向、重点、課題
・機能別革新方向、課題

を明確にし、経営の方向性を明確にする。これらを中期計画ガイドラインと呼ぶことがある。計画ガイドラインに基づき、

・販売計画
・研究開発計画
・設備計画
・人員計画
・利益計画
・資金計画
・全社中長期計画書

などの中期計画を作る。

その上で、やっと、単年度の事業計画(予算)を行うことになる。単年度の事業計画は中長期事業計画を単年度に置き直し、具体的な目標化をする。さらに部門別、製品別、期間別に落とし込んで、具体的な目標を定めたものである。

事業計画の方法はさまざまである。現場に影響のある損益予算でみれば、例えば、

○損益予算
 +販売予算
   -売上高予算
   -売上原価予算
   -販売費予算
 +製造予算
   -製造高予算
   -製造費予算
   -購買予算
 +本部管理予算
 +研究開発予算

といったメトリクスを使うことが多い。

このようにして、経営ビジョンからブレークダウンされた目標を達成するために業務(オペレーション)を行う。

目標達成の方法は、目標達成のための業務の性格に依存する。代表的には、反復性が高い業務である場合には定常業務として機能組織(ライン組織)で行い、反復性が低い場合にはプロジェクト業務としてプロジェクトチームを組織して行うことが多い。

◆プロジェクト業務と予算制度

前置きが長くなったが、まず、認識しなくてならないのは、プロジェクトというのは、オペレーションレベルの活動であるということだ。その上で、特殊性を考える必要がある。

定常業務は、予算として設定された目標をトータルでクリアできればよいと考えるのが一般的である。プロジェクト業務も基本的には同じであるが、個別の業務と戦略との結びつきが定常業務より強い。

プロジェクトにもいろいろあるが、不確実性や新規性の高いプロジェクトの場合、事業計画(予算)だけではうまくできないことが多い。もちろん、そのプロジェクトに見込む予算はあるのだが、それだけで統制をしようとするとおかしくなる。例えば、商品開発プロジェクトで、研究開発予算だけでスコープを決めて良いかという話だ。あるいは、SIのプロジェクトで販売予算だけを見て、進めていってよいかということだ。

答えはノーだ。それは、上で説明した単年度事業計画の策定プロセスを見ればよく分かる。経営戦略あるは、中期計画ガイドラインがきれいにオペレーションまで落ちるといえるのは、業務の定常性があるものに限定される。

定常性の小さいプロジェクトは、事業計画(予算)だけを見ると、戦略的なポジションを確保できない、顧客の満足を実現できないといった戦略レベルの不整合を生み出す可能性が大きい。

◆業務の質を上げるだけではプロジェクトガバナンスは強化できない

それは、マーケティングや要求マネジメントの問題だろうと考える人もいると思う。そうかもしれないが、現実を考えるとあまりうまくいっていない。例えば、SIの企業では要件を精緻に分析した結果、限られた予算の中では入らず、戦略性のない交渉をして、顧客の顰蹙を買うどころか、訴訟沙汰になっているプロジェクトもある。あるいは、限られた予算の中で開発した商品が、結果的に販売できないままで終わったというプロジェクトもある。

このような例は極論だが、プロジェクトは事業計画(予算)だけではなく、中期の計画ガイドライン、あるいは、戦略にまで立ち返らなくては成果が出ないというケースも少ないない。

このような方法を採ることによって、戦略との整合性、いわゆる「プロジェクトガバナンス」を強化していくことが求められる。

そのためには、

・(ミドル・シニア)マネジャーによる「適切な」戦略アラインメント
・(ミドル・シニア)マネジャーによる「適切な」プロジェクト管理
・プロジェクトマネジャーの経営や組織マネジメントに対するリテラシー

が不可欠である。


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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。